平凡な女子高生が、遺伝子技術による人体実験で無双の殺人兵器と化し、暴れまくる。『梨泰院クラス』のキム・ダミが主演し、世界的な旋風を巻き起こしたパク・フンジョン監督『THE WITCH/魔女』。続編の『THE WITCH/魔女 -増殖-』オーディションで、1408人の中から主人公役を勝ち抜いた新人俳優シン・シアが来日。最新作で謎の少女を演じた彼女にインタビュー。
『THE WITCH/魔女-増殖-』のシン・シアにインタビュー。「真心、誠意を込めて演じられる俳優でありたい」
──2か月にわたって、3度に及ぶオーディションで選ばれ、クラインクインまで1か月弱しか時間がなかったそうですが、どのようにマインドセットしていったかをお伺いできますか?
何より、責任感を強く感じていました。みなさんが一生懸命準備している作品なので、迷惑をかけてはいけないと、できる限りの準備をしました。とはいえ、本当に時間がなかったので、アクション・スクールに通うことはできなくて。なので、台本をしっかりと読み込んで理解し、自分はどうやって演じたらいいのか、キャラクターを分析することに時間を費やしました。それと、撮影をするためには、やっぱり体力が必要じゃないですか。なので、体力をしっかり蓄える訓練をしました。
──謎の少女のように、人間にはコントロールできないほどのパワーを持ってしまったとしたら、シン・シアさんならどうすると思いますか?
たぶん、その力はずっと隠しておいて、それが必要な人が現れた時にだけ使うかなと。危険な状況に置かれている人を助けたいというようなときに。その能力を濫用されないためにも、たくさんは使わないようにすると思います。
──慎重派ですね。少女はパク・ウンビンさん演じるギョンヒにかくまわれ、家族となっていきますが、どうやって親密な関係性を作り上げていったのでしょうか。
少女が外に出たときから、ギョンヒお姉さんがずっと見守っていてくれましたし、 撮影が進むにつれ、自然に、だんだんと家族のようになっていったんです。私にとっては初めての現場だったので、本当に気を配ってくださって、面倒をみてくれたんですね。だから、自然に役に入り込めましたし、親しい雰囲気を作ることができたと思っています。
──現場はもちろん、アクションシーンも初めてだったわけですよね。どのような経験でした?
私の場合、アクションをするというよりは、超能力を使うことが主だったので、それを受けて倒れたり、飛んでいったりする大勢の役者さんたちの方が苦労されていたと思うんですね。相手役の方々にすごく感謝したことを覚えています。
──とっても残虐なシーンがある一方で、コメディエンヌとしての才能も発揮していて。
コメディシーンをやっているという意識は全くなくて、少女として本能に忠実に動いてみた、というだけなんですが、観客の皆さんがすごく楽しんで観てくださったようで、嬉しかったです(笑)。
──パク・フンジョン監督との撮影を振り返って、どんなことを学んだと思いますか?
学んだことは本当にたくさんあったのですが、自分が確信をもって演じれば、見ている人も、信頼してくれるんだということを教わりました。 パク監督にディレクションをされながら、映画に現れている以上の壮大な世界観が、無数の物語が、監督の頭の中にはあるのだということに気づかされて、すごいなと圧倒される日々でしたね。
──完成したものを観て、何か驚きや発見はありましたか?
自分が出演した作品を観ること自体初めてだったので、画面に自分が出ているだけでも、不思議な感じがありました。中でも、想像もしていなかった自分の表情が出ていたときに、観客のみなさんが、興味を持ってくれたり、喜んでくださっている姿が印象的でした。
──それまでは演技を学ぶ大学生として日常生活を送っていて、この映画をきっかけに、ある意味、非日常とも言える新たな人生が始まったと思うのですが、どうやってバランスを保っていますか?
撮影現場に初めて入ったときは、まさに非日常、というか非現実という感じで、なかなか実感がわいてこなかったんです。でもその頃から3年が経ったので、今は少しだけ、現実だなと思えるようになってきました。だからといって、完全な日常であるとも言えないんですけど。
──公開後、周囲のどういった変化を感じていますか?
仲のいい友人たちは、わーっと騒ぐ感じはなく、淡々と「あー、映画に出たんだね」くらいのテンションだったのですが(笑)、家族は本当に喜んでくれました。常に、私が作品に出ることを嬉しく思ってくれて、サポートしてくれていて。「責任感をもって、慎重に行動しなさい」という言葉をくれました。
──健やかさを保つために、日常生活で意識していることは?
最近、ヨガが好きでやっているのですが、自分の体を知ることにも、心の安定にもつながっていると感じています。
──俳優シン・シアさんとしての、今後の展望を聞かせてください。
この作品と出合えたことに感謝していると同時に、次の作品でどのような姿をみなさんに見せたらいいのか、未熟な部分も多いので、たくさん準備をしなくちゃいけない、などいろいろと悩むことも多いのですが、初心を忘れず、真心、誠意を込めて演じられる俳優でありたいですし、学びながら、日々成長していきたいですね。
『THE WITCH/魔女 -増殖-』
秘密研究所アークが何者かに襲撃され、殺戮の中でひとりの少女が生き残る。その少女は、遺伝子操作によって超人的なアサシンを養成する〈魔女プロジェクト〉の実験体だった。初めて研究所の外に出た少女は、ある姉弟と出会い、徐々に人間らしい感情に目覚めていくがー。
監督・脚本: パク・フンジョン
出演: シン・シア、パク・ウンビン、 ソ・ウンス、チン・グ、ソン・ユビン、チョ・ミンス、 イ・ジョンソク、キム・ダミ
提供: ツイン、Hulu
配給: ツイン
2022年/韓国/138分/5.1ch/シネスコ/R-15+
2023年5月26日(金) 新宿ピカデリーほか全国公開
(C)2022 NEXT ENTERTAINMENT WORLD & GOLDMOON FILM.All Rights Reserved.
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Shin Sia
1998年5月12日生まれ。本作が本格映画初めての出演作。3度にも及ぶオーディションと5回以上の監督のミーティングを行い、1,408人の中から魔女に抜擢された新鋭。子どものような純粋さと破壊的な力を併せ持つ、危険で繊細な精神を見事に表現した。
Photo:Eriko Nemoto Text:Tomoko Ogawa