イケメンというよりも「男前」「ハンサム」の言葉が似合うボケの山口コンボイ(右)。クールな眼差しを眼鏡からのぞかせる、すらりとした長身のツッコミ、仁木恭平(左)。それぞれ幾度かのコンビ解散を経て2021年にケビンスを結成した二人。決して順風満帆とは言い難い芸人生活を送ってきた彼らは、ケビンスになった途端、駆け上がりはじめました。コンボイさんのフィジカルと仁木さんのワードセンスが光る漫才で、結成した年に『M-1グランプリ』準々決勝に進出。昨年は準決勝まで勝ち進み、ファンもぐっと増えています。今後の活躍を予感させるケビンスの、コンビを組むまでの軌跡を、多数の芸人インタビューを手掛けるライター・釣木文恵が聞きました。
結成2年で『M-1』準決勝へ!人気急上昇ケビンスの魅力 前編
「全部間違えていた」コンボイを「自分のままでいて」と修正した仁木
ケビンスインタビュー前編
僕なんて誘われるような
人間じゃないです
──ケビンスは、2020年3月に二人が出会い、2021年1月に結成したまだ新しいコンビですが、仁木さんがコンボイさんと組んでみたいと思った瞬間は?
仁木恭平(以下、仁木) 2020年の夏頃、芸人みんなでよく草野球をやってたんですよ。経験者が少ないこともあって、基本みんなおふざけで。外野にフライが飛んだら誰も捕れないから必ずヒットになる、くらいの感じ。そこに参加した山口コンボイが、一人だけボールを全力で追いかけて、ダイビングキャッチまでして。
山口コンボイ(以下、コンボイ) はい(笑)。
仁木 みんなが「うおーっ!」と沸いたんですよ。それをウケてるのと勘違いしちゃったのかな、いま思えば。
コンボイ おい、いいんだよ! そこはまっすぐ「ウケてるな」と受け取ったままで。
仁木 まあそこでちょっと「組んでみたいな」と。その後、二人で頻繁に遊ぶようになって、ある日の銭湯帰りに誘いました。
──出会ってからコンビを組むまでの間に、友達として遊ぶ期間があった。
仁木 出会ったばかりで山口という人間のことを何も知らなかったから、まずはどんな人なのかを知りたくて。もし相方としては違うなという感じだったらそれはそれでいいし。どんなお笑いが好きかとか、何がきっかけでこの世界に入ったかとか、この時期にけっこう話しましたね。
──コンボイさんは、誘われてどう思いましたか?
コンボイ 誘われるなんて思ってもみなかったです。当時は芸人になって3つめのコンビを解散した頃で、もうコンビは諦めてピン芸人をやろうと思っていたんですよ。そこに仁木くんが現れた。最初は「いや、僕なんてほんと仁木さんに誘われるような大層な人間じゃないです。もっと素敵な人と組んでください」って言いました。
──そんなにも仁木さんとの格差を感じていたんですか?
コンボイ 仁木くんは2つ上の先輩で、面白い人だってことはTwitterとかで一方的に知ってましたし、前のコンビで地上波のレギュラー番組も持ってましたし……。まず「恐れ多い」と。
──仁木さんは、一度は断られたにも関わらず、改めて誘ったわけですね。最終的にコンボイさんに「うん」と言わせる戦略があった?
仁木 うーん、戦略というか……。その頃僕の目に映った山口コンボイは「全部間違えてるヤツ」という印象だったんですよ。
──間違えてる?
仁木 自分のよさとか需要とかがまったく見えていない。こういうことをやったらお客さんはこう受け取っちゃうよ、というのもわかってなくて、自分に似合わない芸をやってた。組む前から「お前間違ってるよ」と伝えたら落ち込んじゃうと思ったので、最初は黙っていたんですけど。ただそこを少しずつ理解させて、修正させていく自信はありました。「『うん』と言わせる」というより、その先の、山口コンボイのよさが出るようにする自信ですね。なので、ゴリ押しで組んだんですけど。
コンボイ 僕はその頃、自信をなくしかけてたんですよね。自分がネタを書けるツッコミだと思って活動してきて、なのにボケよりも目立とうとしちゃって、相方とぶつかって解散して……。だから仁木くんに「またきっとぶつかって、だめになっちゃうと思います」と断ったんです。でも仁木くんは「いや、いけると思う、ぜんぜん心配しなくていい」って。「山口はスターになれると思う」って言ってくれたんですよ。それで僕はすごく胸が熱くなって「お願いします」と言いました。
Photo: Hiromi Kurokawa Text: Fumie Tsuruki Edit: Yukiko Arai