自身の音楽を象徴するようなファッションアイテムを4人のアーティストに持ってきてもらった。大切にしている背景からは、深い思いが伝わってくる。短期連載 #捨てられない衣装ものがたり
SHISHAMO 宮崎朝子の「捨てられない衣装ものがたり」
宮崎朝子
アディダスのトラックジャケット
CDデビュー10周年イヤーの2023年
日本武道館のライヴをともにしたジャージー
SHISHAMOの宮崎朝子さんといえば、トラックジャケットのイメージがある。実際、「ギターを持ったときの自分の姿がいちばんしっくり来る服」だという。家のワードローブに畳んだ状態で4段ほどずらりと積み上げられているコレクションの中でも、いまもっとも大切な1枚が、日の丸を胸にしたオリンピック日本代表モデルのこちら。背中には「JAPAN」の刺繡もある。
「昨年はバンドの10周年記念で、いっぱい曲を作りライヴも行ったのですが、日本武道館でのワンマンのときに着用したジャージーです。これまでにも記憶に残るステージはたくさんあるけれど、長く続けてこられたことへの感謝でいっぱいになるような特別な公演でした」
ライヴの衣装は、まず宮崎さんが提案するスタイルが多い。
「このときは、メルカリで日の丸ジャージーを見つけて、会場の天井に掲げられている国旗とリンクするし、バンドのカラーが赤ということもあって、私たちにぴったりだと思い。3人とも赤をメインにした衣装にしようと決めました」
こうしてメモリアルな場で身につけたアイテムは、別のライヴに流用しないという独自の不文律がある。
「毎回コンセプトに合わせて選んでいますし、写真を見れば『あの年のだ!』とすぐにわかるのもいいなと思っています。もちろん、ひとつひとつ思い出と結びついているので、捨てられず、増え続けています」
〈アディダス〉が多くなる理由も、そのあたりにありそうだ。
「昔の〈アディダス〉のジャージーは、意外な色合わせのものが多くて、人とあまりかぶらない。見たことないなと思うとつい買ってしまいます。以前は古着店で探していたけれど、コロナ禍をきっかけにネットを利用することが増えました」
SHISHAMOの曲を歌うときは、その〝主人公〟の気持ちを考えながら歌うという宮崎さん。
「私の衣装が主人公のイメージとかけ離れてると、観に来てくださる皆さんに歌が届きづらいかなと思っていて。身近なことを題材にしているので、きらびやかなドレスではなく、日常に近いカジュアルな服を選びたいと心がけています」
ただし、プライベートとは異なる意識がある。
「普段のおしゃれは自分の着たいのというエゴがあります。でも衣装は『SHISHAMOでいること』『みんなが見ているSHISHAMO』を意識していて……いままで築きあげてきた変わらないところをずっと大事にしたいと思っているんです」
Photo_Shiori Ikeno Text_GINZA