中国と北朝鮮の国境沿いの街で偶然に出会った3人の若者。ヌーヴェル・ヴァーグを代表する、トリュフォーやゴダール映画を彷彿とさせる1人の女と2人の男は、深入りすることなく気ままに数日間を共に過ごしながら、凍りついていた孤独を溶かしていく。『イロイロ ぬくもりの記憶』(13)のアンソニー・チェンの最新作『国境ナイトクルージング』(10月18日公開)で主人公のひとり、ナナを演じるのは、チョウ・ドンユイ。デビュー作『サンザシの樹の下で』(11)で、“13億人の妹”として注目され、近年では『少年の君』(19)での説得力のある演技で国内外で絶賛された彼女は、現代の若者たちが抱えるやり場のなさとどう寄り添ったのだろうか。
『国境ナイトクルージング』チョウ・ドンユイにインタビュー
「どの女性もいろんなポテンシャルを秘めている。とにかく前向きに生きて」
──今回、監督のアンソニー・チェンさんが脚本を書かれる前に出演を承諾されたそうですが、何が決め手となったのでしょう?アンソロジー『The Year Of The Everlasting Storm』の一部である短編映画「The Break Away」でご一緒された経験からですか?
そうですね。初めて仕事したのは短編映画でしたが、ちょうどパンデミックの最中だったので、監督はオンラインを通じて遠隔で私たちに演技指導をするというかたちで、映画を撮ったんです。そのときから、監督との仕事が対面で実現できたらいいなとは思っていました。なぜかというと、監督の過去作がとても好きで、彼の自由な表現のスタイルはまさに今回の映画の原題になっている「The Breaking Ice」みたいだなと感じていたんですね。だから、監督から出演の話をいただいたときに、脚本はまだ完成していませんでしたが、現場で私たちがその余白を埋めていけばいいんじゃないかと考えました。また、私にとっては、大きなチャレンジになるだろうとも思いました。
Text&Edit_Tomoko Ogawa