──三部作のアイデアは『X エックス』を制作しているときに生まれたそうですが、前作の制作中に次回作のアイデアを思いつくことはよくあることなんですか?それとも珍しいこと?
いや、普通ではなく、今回は特別でした。まず『X エックス』を書いて、A24に渡したら、「これでやろう」と言ってくれたのですが、COVIDが起きてしまって制作できなくなりました。でも、ニュージーランドで撮影できることになった。その当時、世界でも映画はほとんど撮影されていなかったんですね。だから、ただニュージーランドに行って、お金をかけてテキサスのセットを建てて、1作品だけ撮って帰るなんてことはできない。何かもっとやらないと!と思ったんです。でも、もともと他の映画をつくる予定はなかったし、新しいアイデアを出すつもりもありませんでした。そこで、この映画と関連性のあるアイデアを考えようとしたけれど、続編は無理だと思った。だって、ほとんどみんな死んでしまうんだから(笑)。
──確かにそうですね(笑)。
でもそのとき、ミア・ゴスが演じる老いたキャラクターがいるから、その前日譚ならできると思いついて、それが『Pearl パール』のアイデアの出発点になりました。それをA24に提案したら、興味を持ってくれて。無謀な挑戦でしたが、2週間の隔離期間中に脚本を書けたら、2本連続で撮れるかもしれないと考えたんです。けど、その時点ではまだ映画も完成してなかったから、実際にうまくいくかはわかりませんでした。それで、冗談半分で「COVIDが落ち着いたらLAに戻ってハリウッドで3作目を撮って、三部作にできるかもね」なんて話していたら、実際にそうなってしまった。すごく異様な展開でした。普段は映画をつくっているときに、次の映画のことなんて考えませんが、今回は、雪玉が転がり出して止まらなくなった感じでしたね。
──そこから5年も関わっていたわけですもんね。パンデミックというタイミングがなければ、この三部作は生まれていなかったかもしれないですね。
仮に可能性はあったとしても、あの状況がなければ強く動機づけられることはなかったと思います。先ほどもお話しした通り、『Pearl パール』のアイデアは、COVIDのない国にとどまりたいという気持ちから生まれたので。誰も映画をつくれない状況下で、自分は映画の制作を続けたいと思った。本当に今後、映画をつくれなくなるかもしれないとも感じていました。そういう切迫した気持ちが背中を押してくれたんです。「なんとかしなきゃ」という状況で生まれたアイデアが、結果的に自走して別の作品になっていった。なので、仮に状況が違っていたら、つくらなかったかもしれませんよね。一気に全部やった方が面白いと思ったし、実際5年間ノンストップでやり切ったので、今はとても満足しています。