再開発が進む東京・渋谷を舞台に、母の死と残された家族の関係を描いた『見はらし世代』(10月10日公開)。主人公の青年、蓮を演じたのは今作で映画初主演となる黒崎煌代だ。映画『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』の山根や、ドラマ『東京サラダボウル』の第5話に登場した早川進など、ナチュラルな演技で注目を集めている。そんな彼に、同世代の友人でもある団塚雅我監督の長編デビュー作の主演を務めた感想や、撮影のエピソードを教えてもらった。
映画『見はらし世代』主演・黒崎煌代にインタビュー
「いまの東京を嘘偽りなく記録した作品になったと思う」

──今作で映画初主演とのこと、おめでとうございます。監督の団塚雅我さんとは元々お知り合いだったんですよね?
2023年公開の映画『さよなら ほやマン』のメイキングで団塚さんも参加していたんです。撮影期間は石巻市の離島に2週間ほど滞在していたので自然と仲良くなり、気付けば友達のような関係になりました。『見はらし世代』の制作が始まる前も「今度、新作撮影するんだよね」と教えてもらっていたんですよ。なので「誰が主役を演じるんだろう」と楽しみにしていたのですが、ある日、渋谷のカフェに呼び出されて「主演をお願いしたい」と言われて。「僕なのか……」と驚きましたが、作品の内容を聞いて、納得できました。
──どんなところに納得したんですか?
僕と団塚さんは似ているとよく言われるんです。顔というよりは、性格が。二人でいると気兼ねなく何でも話してしまうのですが、本当に波長が合うんですよね。団塚さんはアーティストということもあり、常識にとらわれない視点があって、その部分も面白い。今作は団塚監督の個人的な経験や実感も反映されているので、そういった点で僕が主役の蓮を演じるのはいいんじゃないか、と。

──「見はらし世代」というタイトルは聞き馴染みのない言葉だと思うのですが、このタイトルについて団塚監督からの説明はありましたか?
「何が“見はらし世代”なんですか?」と聞いたら「いい感じじゃん」と(笑)。きっと色々考えてこのタイトルにしたと思うのですが、団塚監督は多くを語らないところがあるんです。世代関係なく“今”の景色を見ている人たちを表現した、と僕は解釈しました。
──黒崎さん演じる蓮のキャラクターはどうやって作り上げていきましたか?
お話をいただいたタイミングでは蓮のキャラクターはそこまで出来上がってなくて、かなり余白がある状態で役を渡されました。なので僕はシーンごとに解釈した内容をノートに書き起こして「こういうことですよね?」と団塚さんに見せてみたんですよ。そうしたら「いやあ、どうなんだろうね」と。そこで「もしかしたら団塚さんは撮影までキャラを固めたくないのかも」と気付いて、追求しすぎるのをやめました。そもそも僕のプライベートの姿を見てオファーをしてくれているし、作りすぎずに挑むのが今作における役作りになりましたね。ちなみにその後聞いた話によると、団塚さんは過去に監督を務めた『遠くへいきたいわ』ではセリフも芝居も設定もガチガチに固めて撮影をしたみたいで。今回はそのときと正反対の方法で進めてみたいと思っていたようですよ。
──先ほど団塚さんとご自身は似た部分があるとおっしゃっていましたが、実際に演じてみて蓮と自分が似ていると感じた部分はありましたか?
ネタバレになってしまうので詳しくは言えないのですが、父との会話の中で不意に出たリアクションは僕っぽいですね。同じ状況に置かれたら、僕も蓮のような反応をしてしまうと思います。
──冒頭は家族4人でいる少年時代が映し出されて、その直後のシーンで蓮はすでに胡蝶蘭の配達員として働く青年になっていましたよね。映画では描かれない数年間がありましたが、その期間、蓮はどうやって過ごしていたと思いますか?
母の死を悲しんでいるし、父の態度を許し切れていないとは思いますが、普通の男の子として過ごしてきたんじゃないかな。サッカー部に入って、ガールフレンドとデートもして、みたいな。お姉ちゃんとも仲がいいですからね。
──姉の恵美を演じる木竜麻生さんとの距離感、とても良かったです。
二人の距離感を探ることに結構苦労したんです。お姉ちゃん役の木竜麻生さんはもともと知り合いで、びっくりするくらい仲がいいんですよ。初めて本読みした日には「ちょっと仲良すぎです」「二人、一旦離れましょうか」みたいになって(笑)。かといって物語上でも仲良しではあるので、難しかったですね。
Photo_Suguru Tanaka Styling_Takumi Noshiro Hair&Make-up_TOMOE(artifata) Text_Nozomi Hasegawa