浮遊感あるメロディに英語と日本語とで歌詞を乗せるメイ・シモネス(Mei Semones)。フジロックフェスティバル’25出演直前に会いに行くと、その素顔はただただチャーミング。2026年には日本ツアーも控える彼女が語る、音楽とファッションとは?
メイ・シモネスの音楽をつくるもの
アメリカ生まれの新星アーティストにフジロックで邂逅

やわらかいギターと淡い歌声。メイ・シモネスが広げるドリーミーな世界観はとても心地よい。名門のバークレー音楽大学を卒業後、ボサノヴァやジャズからインディーロックまでを下敷きに曲を作る。2025年には1stフルアルバム『Animaru』とともに米国ツアーを経験。その後フジロックフェスティバル’25で日本での初ライブを果たした。着実にキャリアを歩み出す彼女の“スタート地点”は、4歳の頃だそう。
「母方の祖母が、私と双子の妹にピアノを贈ってくれたんです。それが音楽との出合い。そこからピアノを続けていたけど、11歳からはギターを主に練習していたかな。自分で『やりたい!』と思って始めました。きっかけは、映画の『バック・トゥ・ザ・フューチャー』。主人公マーティーが部屋の中でチャック・ベリーの曲を弾いている場面があって、それがすごくかっこよく見えたんですよね」

アメリカ人の父と日本人の母を持ち、「英語のほうが得意」と言いながらもインタビューには日本語で応えてくれたメイ。作詞もバイリンガルだ。
「最初は全部英語で書いていたんですが、大学2年生のときに日本語も入れるようになりました。英語で考えて日本語に変換するときもありますし、日本語で考えるときもあります。浮かんだフレーズが音にはまらなかったら、もう片方の言語で言い換えて置いてみる、ということも」
使い慣れた言語ではないからこそ、彼女が日本語で歌うとき、言葉の切り方や音程の載せ方が独特なリズムを帯びる。日本人の耳にはそれがいっそう詩的に響く。ニューヨークを拠点に活動するなかで、日本語歌詞はメイの音楽的アイデンティティの一つにもなった。アルバムタイトルの綴りも、そこから発想されている。
「『動物』と名付けようとしたときに、 《Animal》でなはくカタカナ日本語をローマ字にした 《Animaru》がいいなと思ったんです。そのほうが私のスタイルを表現できるから」
似た意図から、アメリカでは自身のジャンルをあえて《J-POP》と説明することもある。いわゆる《J-POP》とは違うかもしれないが、実際公式サイトにも「オルタナティブ・インディ・J-POP」の見出しをつけている。
「『どんな音楽をつくっているの?』と聞かれたときにわかりやすく答えるって、難しいですよね。一旦J-POPですと言うと納得してもらいやすいというか、日本語でも歌っていることがすぐに伝わる。実際には、私は日本の音楽に詳しいわけではないんです (苦笑)。でも好きなミュージシャンを挙げるなら、青葉市子さん!彼女はアメリカでも人気。今回のフジロックでの青葉さんのライブには間に合わず、残念でした…」
Photo_Taro Mizutani Text_Motoko KUROKI