身体と心で感じることが必ずしも一致しない。複雑で予測不能だからこそ人生は面白い。そんなふうに思わせてくれる三部作がノルウェーから届いた。ダーグ・ヨハン・ハウゲルードがトリロジーとして発表した『SEX』は昨年の第74回ベルリン国際映画祭にてエキュメニカル賞を含む3部門を受賞。『LOVE』では第81回ヴェネチア国際映画祭コンペティション部門に出品。そして『DREAMS』(特集上映「オスロ、3つの愛の風景」として9月5日(金)より公開)では今年の第75回ベルリン国際映画祭にて金熊賞を受賞。小説家や図書館の司書といった異例の経歴を持つハウゲルード。女性教師に恋をした17歳の少女ヨハンネの手記をめぐる最新作『DREAMS』について、また三部作を通じて描かれる、現代社会におけるクィアなまなざしについて聞いた。
『DREAMS』ダーグ・ヨハン・ハウゲルード監督にインタビュー
クィアなまなざしで描く、新たな性と夢と愛の風景


──『DREAMS』は、あなたの会話の描写もとても独特で、まるでどこかで交わされている本物の会話のように感じました。こうした繊細で、少しドキュメンタリーのようにも感じさせる会話は、脚本の段階で全て構築されているのでしょうか?
脚本の段階で作っています。最初に全部書き、第一稿を俳優に読んでもらって、それを一緒に話し合います。彼女たちが通して読むなかで、「ここが足りない」とか「こうした方がいい」というフィードバックをくれることもあります。それを受けてまた書き直し、さらに議論することを繰り返す。書き直しはありますが、撮影に入るときにはすべて脚本が完成しています。即興は一切ありません。
──そうなんですね。文化の違いで表現の仕方は変わるかもしれませんが、自分の周りの人たちがしている会話そのもののようでした。
私は人の会話を聞いているのが本当に好きなんです。どう話すのか、どんな言葉を選ぶのか。とても刺激的で、子どものころからの関心事でした。みんなも同じように面白がっていると思っていたんですが、どうやらそうでもなかったみたいです(笑)。
──あなたは本を読むのもお好きだったとか。読書もインスピレーションに影響しているのでしょうか。
本や小説を読むことも、映画と同じくらいインスピレーションになります。読書から得られるアイデアは、映画とは違ってもっと内省的なんですよね。脚本には、どこかで読んだ本の要素が必ず入り込んでいると思います。
──『DREAMS』には、誰かの現実を物語にすることで「消費してしまう」危うさも描かれていた気がしますが、脚本家として、現実に存在する人や出来事をどう守り、そのリスクをどう避けていますか?
私は友人や身近な人から直接「借りる」ことはしません。むしろ自分自身の記憶から多くを引き出しています。特に『DREAMS』は、若い俳優のために書いたものなので、自分の10代の頃の感覚をできるだけ主観的に思い出そうとしました。年上の監督が若い女の子を外から眺めるようにはしたくなくて。だから、自分が10代で初めて恋に落ちたときの気持ちを思い出しました。恋に落ちる気持ちは、男女でそれほど大きな違いはないと思います。だから自分の初恋の記憶を作品に取り入れました。
Text&Edit_Tomoko Ogawa


