新国立劇場小劇場で、ルネサンス音楽劇『ハムレット』が開幕中だ。本公演は、シェイクスピアの名作劇『ハムレット』を声楽家の彌勒忠史が演出するもの。“ルネサンス音楽劇”を掲げ、主演のハムレットを歌舞伎役者の片岡千之助が、オフィーリアを元宝塚歌劇団花組でトップ娘役を務めた花乃まりあが演じる。東京での公演後、9月13日からは京都の先斗町歌舞練場でも上演される話題作について、千之助さんに話を聞いた。
片岡千之助が演じる、2025年のハムレット。

──歌舞伎とはまた違うあのお芝居に出られるわけですが、最初このお話をもらったときはどんなお気持ちだったんですか?
約40年前に祖父(15代目片岡仁左衛門)が演じた役なので、小さい時から『ハムレット』と聞くと、祖父のイメージが真っ先に浮かぶんですよね。祖父が演じた写真を見るたびに、僕にこの役ができるのかなという気持ちはどこかしらにずっとあって、遠い世界のようで近い世界というか、曖昧な距離感だったんですよ。でも20歳を過ぎて歌舞伎以外の舞台も色々やらせていただくうちに、その感覚も少し薄れかけていたんですけど、今回お声がけ頂いて、その感覚が蘇ったというか。そこがスタートでした。
──片岡仁左衛門さんの演技は意識する部分もあったんでしょうか。
そもそも祖父以外にも色んな方が演じてきた役ですから、演じられる俳優さんによって違って見えると思うんですよね。どれがいいとか悪いとかはなく、どれも正解。ですから、ある部分では祖父が演じた役を受け継いだように見えると思うんですけど、実際は全く違うものになるというか。稽古が始まったあとで久しぶりに祖父の昔の映像を見たのですが、まあ全然違うんですよ。だからこれでいいんだなと思いました。僕のハムレットは他のキャストの方々と一緒に手探りで見つけていったもので、その感覚を信じています。
──ハムレットを演じるにあたり、自分なりに準備された部分はあるんでしょうか。
僕の中のハムレットという存在は繊細な人間なんですが、でも武人?としても優れていたという話なので、華奢に見えるけれどもしっかり芯が通っている男性像を見せたかった。なのでジムに行って、少し身体のラインを作りました。華奢さの部分は髪型で表したりして。
──こういった舞台のお芝居と歌舞伎とでは、どんな違いがあるのでしょうか。
歌舞伎の場合、型が決まっているので先輩の演技を真似していれば失敗は少ないのです。もちろん十分な技術が必要ですけれど、芝居が委ねられるわけではない。その点、西洋のお芝居は自由で、独特の楽しさがあります。殺陣の稽古でも、普段ハリウッドで教えている方が「基本的に決まっていることはほぼないんです」と仰っていて。舞台となる国ごとに作法はありますけど、演じる上ではその役者さんにハマっている形がベストという考え方なんだそうです。あくまで役者ファーストで、本人が正解だと思ったら、それがハムレットになる。自由である分、責任も大きいし、ちゃんとハムレットとして見てもらえるかな、という不安はありましたけど、最終的に心が役と繋がっていれば大丈夫なんですよね。

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Photo_Takao Iwasawa Styling_Kazuro Sanbon Hair & Make-up_Yoshikazu Miyamoto Text_ Neo Iida