2025年9月23日(火)まで、「アーバンリサーチKYOTO/URBAN RESEARCH KYOTO」で、画家・亀井雅文が個展『KOROMO』を開催。期間中は、店頭で展開されている〈デー/dDdDdDd〉や〈シーシー/SEE SEE〉のアイテムを描き下ろした新作に加え、約30点に及ぶ作品を店内各所に展示販売している。長年描き続ける“衣服”というモチーフや制作について話をうかがった。
京都で画家・亀井雅文が12年ぶりの個展を開催
「URBAN RESEARCH KYOTO」の店内に約30点の絵画が展示される

桑沢デザイン研究所ドレスデザイン科に在学中、スチャダラパーのオリジナルメンバーとして活動していた亀井雅文さん。DJなど音楽関連の仕事を経て、30代半ばまでは実家の家業を手伝っていたという。その後、35歳で武蔵野美術大学の通信課程に編入し、造形学部油絵学科を卒業。多様なバックグラウンドを持つ亀井さんが、画家として活動し始めたころから一貫して取り組んできたのは、“衣服”や“身につけるもの”をモチーフにした油絵だった。
12年ぶりに開かれた今回の個展のタイトルは『KOROMO』。描き続けてきた“衣服”という題材はそのままに、「アーバンリサーチKYOTO」とコラボレーションした新作を発表。京都での開催や個展への想いを伺った。
「京都は美術大学や美術館が充実していますよね。観光地でもあるため、景観についても厳格な基準が設けられている。“美意識が高い街”だと感じました。そういう場所での開催は、大都会で開くのとはちがう心構えがありましたね。展示タイトルの“衣(KOROMO)”は、パッと浮かんだキーワードなんです。会場がアパレルショップというのと、僕が描き続けている服というモチーフについて考えた時に、二つの要素をからめたいとは思っていました。現代ではあまり使わない、ちょっと古臭い響きかもしれませんが、歴史ある地にはどこかフィットした気がします。発してみると、案外耳障りのいい言葉なんです(笑)」

今回展示されている作品の多くは、キャンバスのなかにラインを引いたレイアウトが目を引く。繊細な筆致で描かれたモチーフをグラフィカルに見せるこの表現は、“下に鉢、上に枝葉”という盆栽から着想を得た構図だという。
「展示の話をいただく少し前から、自分のルーツに立ち返って日本人だから“和”のテイストを落とし込んだ表現ができないか考えていたんです。そこで思い浮かんだのが、“盆栽”でした。描いてみようと思い、モチーフとして取り入れ始めたちょうどその頃、『アーバンリサーチKYOTO』に伺う機会がありました。驚いたことに、エントランスに美しく飾られた盆栽があったんです。まるで頭の中で考えていたものが、形となって目の前に現れたような感覚。いわゆる“シンクロニシティ”というのでしょうか。この偶然のご縁はきっと大切にすべきだと思い、今回の展示のテーマは、まるで導かれるように自然と決まっていきました」
「アーバンリサーチKYOTO」で販売されている〈シーシー〉とハウスブランド〈デー〉のアイテムも本展のために描き下ろされた。写真ではないかと錯覚してしまうほど、細かく描かれた絵画はどのように制作されているのか。
「描いている間にシワの具合や角度が気になると、創作途中でモチベーションが下がってしまう。だから描く前にモチーフをセットする時間は結構かけていますね。一見無造作に置いているように思うかもしれませんが、どうしたら服のテクスチャーが伝わるのかシワの量や袖の跳ね具合など、配置にはこだわっていますね」
「いつもどの作品にも自分の中で実験要素を入れています。だから、納得のいく絵に仕上がるかどうか完成するまでわからない。普段使わないような色味に挑戦してみようと、試しに塗ってみたり。ラインや背景の色は、モチーフそのものから自分なりのインスピレーションを得て配しています」
亀井さんが洋服を写生し続けるのは、なぜなのか。
「ファッションも油絵も勉強してきたからこそ、両方の領域を繋ぎ合わせるような表現は自分の武器になると思い、“衣服”というモチーフに向き合ってきました。従来、絵画の中で“服”が取りあげられるときには、大抵人物が着用した状態で登場する。つまり、モデルの情報やキャラクターを表現する手段として取り入れられているんですよね。服が主役になっている絵画も存在しますが、そればかり専門的に描いている人は僕が知る限りはいないはず。もう一つ、理由をあげると、アンディ・ウォーホルの作品をTシャツにプリントしたり、アートをファッションに取り入れるケースは多いけれど、その逆ってあまり聞かないですよね。美術側にファッションの要素を落とし込むというのは、まだ誰も本格的に挑戦していない領域だと思っています」
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亀井雅文
かめい・まさふみ>>1968年 静岡県生まれ。1989年 桑沢デザイン研究所ドレスデザイン科卒業。2009年 武蔵野美術大学造形学部油絵学科卒業。衣服や身につけるものを主題に、絵画作品を中心とした制作を行う。アートとファッション、記憶と空間、個と社会の関係性を見つめながら、衣服を通して“描くこと”の意味を問い続けている。
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『KOROMO』
会期_開催中〜2025年9月23日(火・祝)
時間_平日 12:00〜20:00、土・日・祝 11:00〜20:00
場所_URBAN RESEARCH KYOTO
住所_京都府京都市中京区円福寺前町285
Tel_050-2017-9156
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亀井さんがメインヴィジュアルを手がける【YES GOOD MARKET】
ファッションや音楽、フードなどのカルチャーを「マーケット」という形を通して発信するイベント。
期間_2025年10月11日(土)11:00〜21:00、10月12日(日)10:00〜18:00
会場_グラングリーン大阪 うめきた公園 ロートハートスクエアうめきた
住所_大阪府大阪市北区大深町5番
Text_Nico Araki









