架空の国家フェニキアで30年間かけて練り上げてきた事業計画の危機を打開しようと奔走する大富豪が、疎遠となっていた娘を後継者として呼び出し、再会。父娘のぎこちない資金集めの旅路を、監督ウェス・アンダーソンが独特のユーモアで描く最新作『ザ・ザ・コルダのフェニキア計画』(9月19日公開)。主演のベニチオ・デル・トロが演じるのは、不正行為の噂がまとわりつき、常に命を狙われている大富豪ザ・ザ・コルダ。ケイト・ウィンスレットの娘、ミア・スレアプレトン演じる修道女見習いの娘、リーズルと共に、数々の騒動に巻き込まれていく姿を描くブラックコメディだ。去る5月に行われたニューヨークでのプレミア上映会に合わせ、記者会見に登壇したベニチオ・デル・トロとウェス・アンダーソンが作品誕生の背景を語る。
💭INTERVIEW
ウェス・アンダーソンとベニチオ・デル・トロが再タッグ!『ザ・ザ・コルダのフェニキア計画』
「大規模な計画をするより、小さなことに意識を向けた方がいい人もいる」

──『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』(21)をカンヌに出品された際、出演されていたベニチオ・デル・トロさんと話をしたことが本作の出発点のひとつだったそうですね。スーツ姿で立つ彼のイメージが頭にあったと。さらに、義理のお父さまの生き方、どこかミステリアスで、国際色のある人物像が大きく影響しているとも。これら2つがどう結びつき、今回の物語になっていったのでしょう?
ウェス・アンダーソン(以下、ウェス) まず、義父である妻の父は、「国際的な謎の男」というわけではありません(笑)。誤解のないよう補足すると、『フレンチ・ディスパッチ』をカンヌで上映したときに、出演していたベニチオに「温めている企画がある」と話しました。それは、アントニオーニの映画に出てきそうな、ヨーロッパの大富豪のイメージです。おそらく彼は傷ついていて、肉体的にも不調である。なのに、どういうわけか簡単には殺せない存在だと。そしていつもかなり高価な腕時計をしている、そんな男性の姿が頭にありました。時間がたつにつれ、そのイメージが私の義父と混ざっていきました。彼はエンジニアであり実業家で、各地で様々なプロジェクトを抱えていました。
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Text&Edit_Tomoko Ogawa


