自分自身の今の“想い”を気取らず、ストレートに綴った最新作『Lotus』をリリースし、FUJI ROCK FESTIVAL ’25でも圧巻のライヴを披露した、Little Simzが語る、“やり遂げること”の大切さ、それを経て得たもの。
Little Simzが語る、“やり遂げること”の大切さ、それを経て得たもの。

より深く、音楽を感じてほしいという想い
──フジロックフェスティバル ’25でのライヴ、お疲れ様でした。ものすごい盛り上がりでしたね。昨日は渋谷のクラブでDJもされていたそうですが……お疲れではないですか?ソファにかなり深く沈み込んでいらっしゃいますけど(笑)。
「さすがに疲れてる(笑)。でも、日本のオーディエンスって本当にエネルギッシュで、毎回パワーをもらえるんだよね。こっちも、受け取った分だけちゃんと返したくなるから……今回は特に、全力を出し切ったって感じがあった。観客の力って本当に大事なんだなって、グリーンステージに立ってあらためて実感しました」
──ステージでは、Y-3の日本代表のサッカージャージーを着てましたよね?
「あれはフェス会場に着いてすぐ、プレゼントしてもらったの!現地で渡されて、『あ、これ着よう』って直感で思った。いつも“3”の背番号がついたアーセナルのジャージーを着てるんだけど、“3”って数字がすごく好きなんです。自分の運命数でもあるし、“Three(3)”と“Free(自由)”と韻が踏めるのも気に入ってて。今回で日本に来るのが3回目だったし、なんだか運命的だなって思って」
──ハーフパンツとの組み合わせもすごく似合ってましたが、いつもステージ衣装はどうやって決めているんですか?
「一番大事なのは快適さ。ライヴを観に来てくれる人たちには、音楽そのものを楽しんでほしい。私が何を着てるかなんて、正直、どうでもいい。ステージは私にとって“家”みたいな場所で、自分を完全に出せるセーフスペースだから、その感じが表れていればいいなって。ただまあ、さすがにパジャマで出ようとは思わないけど(笑)」
──数多くのラグジュアリーブランドのキャンペーンにも出演していますが、ご自身が普段スタイリングのキーワードにしているのは?
「そうですね……やっぱり機能性を重視しちゃうかな。使えるものを自然と選んでる。とはいえ、その辺に転がってる服を手に取ってそのままパッと着て出かけちゃうことも多いから、『私って適当すぎかも?』って思うときもある(笑)。でも、ロンドン出身っていう意味では、“いい感じのトラックスーツ”みたいなスタイルが好きな自分もいて。フーディにスウェットパンツ、スニーカーっていう組み合わせもすごく好き。冬になったら、ボンバージャケットとかパーカを羽織って。ラフだけど、ちゃんとキマってる感じ」
──デザイナーやブランドでお気に入りは?
「トル・コーカーは本当にすごい。あとは〈フェラガモ〉のクリエイティブ・ディレクターを務めているマクシミリアン・デイヴィスもクール。今日かぶってるキャップもそうだけど、〈テムズ M
MXX.〉もお気に入り。ビアンカ・サンダースとか〈ラブラム〉も最高。ロンドンからはたくさんの才能が生まれてると思う」

──今回のフジロックでのライヴはバンド編成でしたね。ニューアルバム『Lotus』の世界観をダイレクトに体感している感覚がありました。生演奏にこだわる理由は?
「私の音楽は生楽器を多く使ってるし、本物の音楽体験を味わってほしいっていう気持ちが強くて。“リアル”なものを届けたい。もちろん、DJと二人だけのライヴにもそれはそれで良さがあるけど、今の私のフェーズには、このバンドスタイルがしっくりきてる。生演奏でサウンドを再現することで、より深くオーディエンスに洞察を与えられると思うんだよね。感覚的に、もっと音楽の中に入り込んでもらえるような……より深く、私の音楽を感じてもらえる気がします」
──録音音源を流すのとは、サウンドの“強度”が違う、と。
「まさにそれ。アルバム制作中に込めた想いが、ステージ上でそのまま立ち上がってくる。私自身がこのアルバムを作る過程で感じていた感情が、生々しく伝わる。ライヴは、私にとってスタジオに遊びに来てもらうような感覚で。スタジオでミュージシャンたちと呼応しながら一緒にジャムセッションしている、その親密な空気をステージにそのまま持ってきてる感じ」
Photo_Taro Mizutani Text_Jin Otabe
