9歳から役者としてのキャリアをスタートし、その芸歴は13年。活躍の場は多岐に渡り、朝ドラ、大河、映画、民放ドラマ…etc。誰もが一度は目にしたことのある実力派俳優が、TBS系ドラマ『義母と娘のブルース』の黒田大樹役で一躍注目を集める存在となった。清涼感ある凜とした佇まいと、インタビューにひとつひとつ丁寧に回答する姿勢は、まさに好青年。今、新たな輝きを放つ俳優・井之脇海へ10の質問を投げかけた。
飛躍する新たな才能。井之脇海を知るための10のこと
ーーQ1. 子役からとキャリアは長いですが、演技をはじめたきっかけは?
花ちゃんっていう犬を飼ってたんですよ。僕が生まれた時から一緒で、花ちゃんがお姉ちゃんみたいな存在だったんですけど、僕が9歳の時に病気になっちゃって。同時期に母親にも病気が見つかって。一人っ子で、今まで親の愛を存分に受けて育ってきた分、その時、家族が自分を見てくれなくなった気がして、すごく寂しくなって、普段怒ったりしないんですけど、はじめて親に暴言を吐いてしまったんです。そしたら親が「今、あなたは何がしたいの?」って、向き合い直してくれて。それで、どうやったら親に注目してもらえるかを考えて、「テレビに出ればいいんだ」と思ったのがきっかけです。やるならちゃんと自分の身になるように勉強して欲しい、ということで、9歳の時に劇団のオーディションを受けさせてもらいました。
ーーQ2. 人生でいろんな選択肢がある中で、俳優でやっていこうと思ったきかっけは?
12歳の時に『トウキョウソナタ』という映画に出演させていただいて、その時に香川照之さん、小泉今日子さんのお芝居を生で体感して、さらに黒沢清さんの演出を受けて、それまではどこか習い事感覚だったんですけど、はじめて職業として自分は俳優の仕事をしてるんだ、と感じてから、すごい楽しくなって。まだ子供でしたけど、映画や映像の世界だとチームの一員として扱ってくれて、嬉しかったのを覚えてます。『トウキョウソナタ』の撮影が小学6年生の12月だったんですけど、急遽、中学を芸能の学校に進路変更しました。
ーーQ3. 影響を受けた俳優さんや監督さんは?
黒沢さんと香川さんの存在は大きいですけど、その時はすべてが初めてだったんで、影響を受けるのは当たり前ですよね。その後だと、染谷将太くんですかね。僕が16、7歳ぐらいの時に染谷君と出会って、「こんなに映像のことをわかって演じてる人が同世代にいるんだ」って知って、すごい刺激を受けました。そこから通学電車の往復とかでも、1日最高7本くらい映画を観るようになって。まぁ、染谷君は多分僕がこういう風に思ってること知らないですけど(笑)。
ーーQ4. 一番印象に残っている映画はなんですか?
映画好きになったきっかけが、レオス・カラックス監督なので『ポンヌフの恋人』は外せないですし、あと『ポーラX』とか『ボーイ・ミーツ・ガール』も大好きです。人が進めていく物語より、空気が進めていくような物語が好きで、なにかひとつの出来事が起きて、ちょっとでもピースがおかしくなったら崩れちゃう、そんな緻密で精巧に組み立てられている映画に惹かれます。
ーーQ5. 現在出演中のドラマ『義母と娘のブルース』は、井之脇さんにとってどんな作品になりましたか?
原作を知らなかったので、タイトルを聞いた時はどういう話かあんまりピンとこなくて。ブルースって僕の中のイメージでちょっと悲しい歌だったんですけど、作品を観て、弱い人間達が不器用ながらにお互いと向き合っていくことで、強くなっていったり、愛が生まれたり、いろんなことが起こる、そういうドラマだなって思いました。僕自身は出演後、単純に声をかけていただくことが増えました。嬉しいことですけど、コンビニで週刊誌の立ち読みとかできなくなっちゃいますね(笑)。
ーーQ6. 普段はどんな音楽を聴きますか?
もともと音楽はあまり聴かなかったんですよ。電車に乗ったら映画を観ちゃうし、散歩好きなんですけど、歩いてる時は何も聞かないので。でも最近、アップルミュージックが便利だと気づいて、家でちょっとかけてみるようになりました。andymoriさん、小山田壮平さん、長澤知之さん辺りをここ1カ月は聴いてます。
ーーQ7. プライベードではどんなファッションが好きですか?
日中、役でいることが多いので、プライベートで着る服はなるべくシンプルなものがよくて。トイレとか行った時とかに鏡があるじゃないですか。疲れてる時に柄物とか派手な服を着てる自分が映ると、「はぁ~」ってなっちゃう(笑)。なので、なるべく無地のシンプルな物で。服もそんなに多く持たなくてよくて、その代わりちょっと素材がよくて長く使えるものを大事に着るタイプです。Tシャツも7枚しか持ってないんで、この夏は、月曜日はこれ、火曜日はこれって曜日で着るものを決めていました。今『義母ムス』の現場に1ヶ月くらい通ってるんですけど、「いつも同じ服着てるな」って思われてるんだろうなー(笑)。
ーーQ8. ファッションシュートでモデルとしての起用も多いですが、撮られ方のコツみたいなものはありますか?
僕にファッション撮影の仕事を最初にくれたのが、カメラマンの鈴木親さんで、撮られ方とかは全部親さんに教えてもらったというか、「何も考えないでいいよ」って言われました。逆にポーズとか全然わからないですし、役者なので、あんまりモデルっぽくならない方が自分がやる意味なんだろうなと思うので、染まらないように、自然体でぼーっとしてます。
ーーQ9. 周りからどんな人と言われることが多い?
真面目だねって言われますね。でも気心知れた仲になると、くだらない話もいっぱいしますし、声のトーンもこんな落としてないですし(笑)、普通の22歳の男の子です。役者の寛一郎と仲がいいんですけど、ふたりの間で若者言葉を使うっていうのが最近流行ってて、「それ卍(まんじ)」とか、「チルってる」とか使ってます(笑)。
ーーQ10. 仕事、プライベートで今後挑戦したいことは?
今年大学を卒業して、新社会人になったので、今までやってきたものを土台に、気持ち新たにいろんなものに挑戦したいなって思ってます。役者としては幅のある、いろんな役をやってみたいですね。どれだけ自分が対応できるのかわかんないですけど、今は1個でも多くの現場に行って、いろんなことをやりたい気持ちでいっぱいです。プライベートでは、100キロマラソンやりたいです!みやぞんさんに感銘を受けまして。100キロマラソンじゃなくても、忍耐的に、心の面で一見無理だろうという挑戦をして、自分を試してみたいです。
ーー自主制作映画『言葉のいらいない愛』では監督・脚本も担当されてますが、今後そういう道も選択肢にありますか?
監督や脚本家を職業にするには、もっと勉強しないといけないですし、それで食っていける自信もないです。ただ、あまり趣味もないので、空いてる時間に物語を考えたりしていて、考えたら撮りたくなるっていう感じですね。あと、映像作品に点ではなく線で関わりたいという気持ちもあって、「自主制作してみよう」ということで撮りました。仕事というよりは趣味として、今後また撮れる機会があったらいいなと思っています。
チェックシャツ¥33,000、パンツ¥32,000(ともにオーラリー/オーラリー TEL 03-6427-7141) 靴 スタイリスト私物
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井之脇海
1995年生まれ。神奈川県出身。9歳で劇団に入団し、映画『トウキョウソナタ』でキネマ旬報ベスト・テン新人男優賞を受賞。現在、TBS系ドラマ『義母と娘のブルース』に出演中。
Photo: Takuroh Toyama Stylist: Kentaro Higaki(little friends) Hair&makeup: Kanako Hoshino Text: Akiko Tomita Edit: Kaori Nakamura