「かっこいいってどんな人なのか」を知りたくて、フローリストの河村敏栄さんが今日はあの人に会いに行く。その日の花を携えて。
その日の花。vol.1 社会学者・上野千鶴子さんへ
上野千鶴子さん/満開の白いチューリップ
───あなたにお題、いただいたでしょう?どうやって答えようかって考えてたの。あのね、「損を承知で損をできる人」。それは男女ともにね。
心に焼きついたのは、花が映えるようにと選んでくれたブラックドレス。大きな窓のある仕事部屋。目を閉じてその姿を思い出す度、私は少し強くなる。損するのが嫌で、周りを気にしてばかりの私も変われる気がする。もしかすると彼女には、弱い人間にこそある強さの芽が見えているのかもしれない。会うまでは、聞きたいことも聞いてもらいたいことも山ほどあったのに。かっこいい人とは?の答えを聞いて上野千鶴子という女性の人生に抱いていた謎も矛盾も消えていった。「フェミの看板なんて上げたって上げなくたって同じだよ。看板上げてて妙な人だっていっぱいいるから」って笑う彼女は絶対その看板を下ろさない。自分と未来を信じていつの時代も戦ってきたのだ。こんな筋の通ったロックなフェミニストがいるなんて。上野さん、最高です!
今月の花
進化し続ける彼女にはマウリンというチューリップを。彼女の背丈の半分ほどもあるマウリンが、淡いカナリア色の蕾から少しずつ白くなって迎える満開の姿は、彼女の生き方に似ている。春の白薔薇オール4ピュア、イブシャンテマリー、ダリアの彩雪とダークイブニング。青いスイートピー、ボタンイチゲはアネモネ。シスターフッドに感謝を込めて。
花と文 河村敏栄 写真 松原博子
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上野千鶴子
社会学者。1948年富山県生まれ。東京大学名誉教授。女性学、ジェンダー研究の第一人者。近年は介護やケアの研究へと活動を広げている。女性と女性の活動をつなぐNPO法人WAN(ウィメンズアクションネットワーク)で理事長を務め、上野ゼミを開講。多方向からフェミニズムやジェンダーの問題に光を当て、発言、執筆している。近著は『情報生産者になる』(ちくま新書)。
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河村敏栄
オーナーを務める東京・代々木上原の「MAG BY LOUISE」では、花のワークショップやレッスンをメインに、読書会などユニークなコンセプトの活動を行う。昨年、インディペンデント雑誌『FLOWER magazine』を創刊。www.louise-flower.com
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松原博子
雑誌、カタログなどで活動。物語性のある強い写真でプロからの信頼も厚い。www.hirokomatsubara.com
Edit: Akane Watanuki