正統を知る。誠実でいる。上質な品を持つ。今、かっこいいと思えるのは、そんな姿勢。オーセンティックな人々の証言や美しいモノの分析から、“本物”とは何かを探ります。この国に受け継がれてきた美のエッセンスって何だろう?たとえば 茶の湯にヒントがあるのかも。日本の美意識を知る名著2冊を紹介。#オーセンティックJOURNAL
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この国に受け継がれてきた美のエッセンスとは? 岡倉天心、白洲正子の名著2冊を紹介
まずは『茶の本』。と言っても作法を学ぶ本ではありません。日本人の謙虚さとか自然を尊ぶ心とか、礼儀正しさとか簡素を愛する気持ちというような美意識を、茶道というカルチャーを通して欧米に紹介した一冊です。著者は明治期の日本美術界をリードしたカリスマ・岡倉天心。曰く「茶道の要義は〝不完全なもの〟を崇拝するにある」「茶には酒のような傲慢なところがない。コーヒーのような自覚もなければ、又コヽアのような気取った無邪気もない」。なるほど、どういう心構えや振る舞いが日本人としてカッコいいのかを学べるのですね。
『かくれ里』は美の目利き、白洲正子の紀行エッセイ。ある章で彼女が綴るのは、人里離れた土地の村人たちが何百年も昔の観音像や能面を守り継ぎながら、ひっそりと暮らしている姿。その敬虔でピュアな祈りの形に、日本人のオーセンティックな精神が垣間見えるはず。
『茶の本』岡倉天心
日本人の“カッコいい振る舞い”を考える
岡倉天心が茶の精神を西洋人に伝えるため、英文で書いて1906年に発表した『茶の本』。その名著をヴィジュアルブック化。四季の景色や茶道具の美しい写真と、読みやすい訳文で構成。(岡倉覚三著/村岡博訳/大川裕弘写真/パイ インターナショナル/¥2,000)
『かくれ里』白洲正子
“美は風土とともにある”ことを学ぶ
吉野・葛城・伊賀・越前・滋賀・美濃。世間を遠ざけ、人々が静かに暮らす“かくれ里”を訪ね歩いた紀行エッセイ。土地の古い伝承や習俗、村人に守られてきた仏像や美術品との出合いを綴る。随所に書かれた万葉集の歌も心に沁みる。(講談社文芸文庫/¥1,250)
Photo: Satoshi Nagare Text&Edit: Masae Wako