神話や歴史にインスパイアされた、ロマンティックでユーモラスな作風が支持を集める英国人アーティスト、ルーク・エドワード・ホール(Luke Edward Hall)。自身のインスタグラムから垣間見える、モノに溢れた、けれど不思議とまとまりのある“マキシマリスト”なインテリアにもファンが多い。イタリアのライフスタイルブランド〈GINORI 1735〉とのコラボレーションのポップアップ開催を記念し来日したルークにインタビュー。
ミニマリストの逆を行く、“好き”を詰め込んだ部屋作り。 ルーク・エドワード・ホールにインタビュー
──日本に来たのは今回が初めて?
初めて。子供の頃から来たかったから、すごくうれしいです。ヴィンテージショップの「ジャンティーク」や蔦屋書店に早速行ったよ。あとは、美しい建築と庭が大好物だから、庭園美術館にも行きたいと思ってる。
──インスタグラムに投稿されている自宅の写真がすごく素敵です。物が多くてカラフルなのに、不思議とまとまりがある。
ミニマルが苦手なんですよね、人間らしさを感じなくて。美しいものに囲まれて暮らすのが好きだし、一つ一つのアイテムにストーリーがあるから、身の回りにたくさんのものがある方が僕は落ち着くんです。休日に道で拾ったもの、お金を貯めて手に入れたもの、あるいは誰かにとってはゴミのような小さなものでも、僕にとっては素敵な思い出が詰まっているから。
──インテリアのルールはありますか?
僕が魅力的だと感じるインテリアは、まるで肖像画のように、住んでいる人のパーソナリティを反映している部屋。だから、もしルールがあるとすれば、直感に従って自分が本当に好きなものを選び続けることかな?あと、相性を気にしすぎないこと。さまざまな時代のアイテムや、珍しい色のコンビネーションが好きだから。予定調和ではない、予想外のものを並べた時にこそ、刺激的なインテリアが生まれると思うんです。
──日本は欧米に比べて家が小さい場合が多いのですが、限られたスペースにおけるインテリアのアドバイスはありますか?
僕もロンドンに小さなアパートを持っているから、すごくわかります。重要なのは、どんなに面積の狭い部屋だとしても、複数の“ゾーン”を作ることだと思う。例えば、僕のロンドンのアパートはワンルームなんですが、その中で、キッチン、リビング、ダイニング、書斎と、目的ごとにエリアを明確に分けているんです。家具を配置してゾーンごとに区切って、それぞれに異なる雰囲気を持たせるようにしています。
あ、あともう一つ重要なアドバイスがあります! 小さな部屋こそ、大きい家具を大胆に置くといい。僕自身もロジックがまだ解けていない不思議な法則なんですが(笑)、本当に、大きい家具は小さい部屋と相性が良くて、しっくりくるんですよ。「部屋に対してこのソファは大きすぎるかな?」とか、気にしないで、信じてトライしてみて!
ルークさんのロンドンの家
──ルークさんの作品は、色の組み合わせも独特です。そのセンスはどこから?
自然からインスピレーションを得ることが多いです。自然の中で見つける色のコンビネーションは、時に本当に驚くようなものがあるんです。特にお花は、人間が考えつかないようなクレイジーな配色があったりする。あとは、とにかく自分で実際に組み合わせて実験してみて、トライアンドエラーするのが好きなんですよ。
──〈GINORI 1735〉とコラボレーションしたホームフレグランスコレクション〈PROFUMI LUCHINO/プロフーミ・ルキーノ〉について教えてください。
ベネチア、コッツウォルズ、マラケシュなど、僕の好きな5つの場所からインスピレーションを得たフレグランスコレクションです。慣れ親しんだ土地もあれば、まだ訪れてから日が浅い街もありますが、どれも圧倒されたり、深い繋がりを感じた特別な場所。今回のコレクションでは、それぞれの土地にありそうな“架空の建物”を出発点に、アイデアを膨らませていきました。例えば、〈パラッツォ チェンタウロ〉という香りは、僕がよく行くベネチアにインスパイアされたものですが、このパラッツォ(宮殿)は実在しない。架空の建物のストーリーを作って、そこから香りへと落とし込んでいきました。香りのコレクションはずっと作ってみたかったので、今回やっと夢が叶いました!
──お気に入りはありますか?
〈パラッツォ チェンタウロ〉と、イギリスのコッツウォルズをテーマにした〈フォックスチケットフォリー〉でしょうか。どちらも深みがあって、甘過ぎない。ウッディでスモーキーな香りに仕上がっていて、お気に入りです。
──家ではどのように香りを楽しんでいますか?
キャンドルを使うことが多いですが、スタジオで作業する時などはお香を焚くことも。音楽や明かりを楽しむのと同じ感覚で、“空間の雰囲気”を作るのに香りはピッタリだと思うんです。
──最後に、今ルークさんが虜になっているものはありますか?
常に何かにハマっているタイプなんですよね。今は、近々訪れる予定のエジプトについて調べることかな。日本と同じく、子どもの頃からずっと行ってみたかった場所。友人たちとナイル川をクルーズで下って、寺院や史跡を巡る予定。今はその旅に向けて、エジプトの歴史や人々についての本を読むのに夢中になっています。
「ユナイテッドアローズ 六本木ヒルズ店」のポップアップでは、ライブペインティングを披露。
完成したアートワークと一緒に。上部には「TOKYO」の文字が♡
🗣️
Luke Edward Hall
イギリス出身。アーティスト、デザイナー、コラムニストして活動。歴史や神話からインスパイアされた、カラフルかつロマンティックな作品が人気。〈GINORI 1735〉とのコラボレーションは、ネプチューンの旅という神話の世界をモチーフとしたテーブルウェアコレクション〈IL VIAGGIO DI NETTUNO〉に続いて今回が二回目。コロナ禍を機に、拠点をロンドンから大きな庭のあるコッツウォルズの一軒家へ移した。
Instagram: @lukeedwardhall