かつて銀座8丁目にあった「中銀カプセルタワービル」を知っているでしょうか?まん丸い窓のついた小ぶりのカプセルユニットが積み重なるそのビルが建てられたのは1972年のこと。その後世界的に活躍することになる建築家・黒川紀章さんの初期作品でした。ひとつひとつのカプセルには、住むための機能がぎゅぎゅっと詰め込まれていて、老朽化したらそのユニットごと取り替える……。ちょうど細胞が入れ替わるみたいに、建築が新陳代謝するという“メタボリズム”の思想を体現する名建築として世界中が注目し、歴史に名を残すことになりました。
今年のGINZA SIXのクリスマスのテーマは「Hello Again」。コロナ禍を抜けて再びの出会いがさまざまに演出される予定です。その目玉のひとつが、惜しまれながら2022年に解体されてしまったこの建築の一部の、銀座への“凱旋”展示。11月10日から12月25日まで、アートディレクターグラフィックアーティストとして活躍するクリエイティブ集団YAR(ヤール)の手によって、現代的に生まれ変わり、“中銀カプセルタワービル Hello Again presented by Capsule record”と題された展示として、中央通り正面4丁目側のエントランスでお客様をお迎えします。さらに11月17日から来年1月21日まで、GINZA SIX ガーデン(屋上庭園)のスケートリンクにも、中銀カプセルタワービルをオマージュしたオブジェが登場します。
世界中を驚かせ続けた名作を、誕生の地にほど近い銀座で体感できるこんな機会が持てるのは、解体されたカプセルの一部が保存されているから。この不思議な建築の魅力の虜になって、かつてはカプセルを所有し、現在は「中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクト」に携わる前田達之さんに話を聞きました。