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女がヒールで歩く日は〜私たちが服を買う理由 vol.4

女がヒールで歩く日は〜私たちが服を買う理由 vol.4

ファッションというコスプレ

朝、着ていく服を選ぶとき。
私は必ずGoogleカレンダーを立ち上げて、その日の予定を確認する。
社外の打ち合わせがある日はどんな相手に会う予定だったかも見るし、さらにはどのエリアに行くかまでチェックする。
そして銀座なら銀座、新宿なら新宿、表参道なら表参道と、できるだけそのエリアにあったコーディネートを選ぶ。
場所に合わせて洋服を選ぶのは休日も同じで、誰に会うかと同じくらいどの街に行くかは洋服選びのテンションを左右する。
私はこれを「ファッションというコスプレ」と呼んでいる。

昔、毎日使う近所のコンビニにテーマを変えたファッションで行くのがマイブームの時期があった。
週末の昼下がりにお昼ごはんを買いにいくときは「地元のスナックに務めるチーママが猫のエサを買いにきた」とか、朝学校に行く前は「私立大のテニスサークルに入ってるキラキラ女子大生がリプトンの紙パックミルクティーを買いにきた」とか、ものすごく細かい設定を勝手に作っていた。

きちんと設定にあわせて洋服も選んでいて、どこまでコンビニの店員さんに伝わっていたかはわからないけれど、もし常連として認識されていたら「あの人いっつも格好違うけど何の人なんだろう」と思われていたんじゃないかと思う。

今振り返ってみれば何が楽しくてそんなことをやっていたのかは謎だけど、知らず知らずのうちに『きせかえユカちゃん』(東村アキコ作)という漫画に影響を受けていたのかもしれない。

『きせかえユカちゃん』の第一話では、主人公のユカと親友のみどりが夏休みの自由研究と称して毎日様々なコーディネートで近所のお弁当屋さんにお弁当を買いに行き、そこのお兄さんの反応を研究する。
二話以降も、コーディネートの力で大人っぽく見せたり変装したりして日常のドタバタを解決していくところに、子供ながらファッションの面白さや意味を教えられたような気がしている。
自分のなりたい姿を具現化してまとうのがファッションの醍醐味だと日頃から思っているけれど、一方で場所やシーンによってまったく違う自分の “フリ”ができるのもファッションの楽しみのひとつなのだと思う。

それはまるで、普段の自分とは違う人になりきるような感覚に近いかもしれない。
ある時期から急にハロウィンが盛り上がるようになったのも、このプチ変身願望を満たしてくれるからなんじゃないかと私は思っている。
私たちは簡単に「◯◯系」とカテゴライズできるものではなく、自分の中に様々な要素をもっている。
普段なら着ないような服を身にまとい、いつもとは違う街にでかけるという非日常は、そんな自分の中の隠れキャラをを引き出してくれるきっかけだ。
ファッションの幅を狭めてしまわず、たまにはいつもと違う装いをしてみること。
それは自分の中の可能性を引き出すことにもつながっていくのかもしれない。

 

最所あさみ
Asami Saisyo

大手百貨店入社後、ITベンチャーを経て独立。Webメディアを起点としたコミュニティ形成やコマース事業のプロデュースを行うかたわら、個人でファッションや小売にまつわる有料マガジンを発行。

個人note:https://note.mu/qzqrnl
Twitter:https://twitter.com/qzqrnl


安藤晶子
Akiko Ando
個展で作品を発表するほか、雑誌の挿絵、CDのアートワーク、ファッションブランドのイメージビジュアル等を手がける。
akikoando.tumblr.com
https://twitter.com/kokia0414

 

Text: Asami Saisyo Cover Illustration: Akiko Ando

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