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家入レオ「言葉は目に見えないファッション」vol.0 プロローグ

家入レオ「言葉は目に見えないファッション」vol.0 プロローグ

クォーター・ライフ・クライシス。それは、人生の4分の1を過ぎた20代後半〜30代前半のころに訪れがちな、幸福の低迷期を表す言葉だ。25歳の家入レオさんもそれを実感し、揺らいでいる。「自分をごまかさないで、正直に生きたい」家入さん自身が今感じる心の内面を丁寧にすくった連載エッセイ。


vol.0 プロローグ

渋谷、原宿、表参道、そして銀座。

すれ違う人たちの装いは実に様々で、それは無言の自己紹介であり、駅から続く大通りは自己表現の場と化している。目に楽しいと思える日もあれば、意思表示に溢れている街に疲れてしまい伏し目がちに足を早めてしまう日もある。

普段自分が東京で生活していることを意識することはないけれど、気軽にストリートスナップに応じる姿や、自分の好きを追求している人にしか醸し出せないムードを肌に感じると、東京で生きているんだなと思う。

まとまりがあるようでないような、この東京で。

私が上京したのは高校2年生の時だった。はじめての一人暮らしは、新鮮な驚きに満ちていた。ワンルームなのにびっくりするくらい高い家賃、玄関を入るとすぐにあるキッチン、同じ空間にあるトイレと洗面所、日用品の価格設定。

そのひとつひとつが私にはいちいち珍しく、編入先の高校でその面白さとバカらしさについて授業中に頭の中で羅列していくゲームが密かなマイブームになっていたほどだった。

昼休みのチャイムを合図にお財布と相談しながら売店に走った日々も懐かしい。大抵は豆乳とコーンマヨネーズパンですませていたけれど、早起きに成功した日は学校の近くにあるコンビニでミニスナックゴールドを買うのが楽しみだった。

うずまき状のデニッシュ生地に甘いアイシングがストライプ状にかかっているやつ。どこがミニなの?って思わず聞きたくなるような大きさで、スナックパン界の金メダル級大ヒットを願って命名されたという由来にふさわしくカロリーも鬼高い。が、ありえん美味しい。4時間目にお腹が鳴りそうなのを必死に教科書のページを捲る音や椅子に座り直す音でカバーしていたっけ。

当時は学校に行くのがめんどくさくてたまらなかったけど、今思い返すとどうしてだか悪くなかったよなぁと思ったりする。クラスメイトたちも学業や芸事、アルバイトに忙しく、そのバランスを図るのに苦心しているようだったけど、楽しそうだった。

そんな私も25歳になった。久しぶりに会った友人から転職を報告されたり、出産してお母さんになった同級生の話を聞いたり、光栄なことに私自身人生初!婚姻届の保証人になったりして、ゆるやかに人生の流れが変わり始めていることを感じる。

当たり前だけど、もう立派な大人なのだ。大人なはずなのに、この数年間私の人生はピントが合うどころか、どんどんボヤけていくありさまだった。

デビューした始めの頃は、壁!壁!壁!の連続で、だけどその壁がいつしか新しい世界への扉に変わっていく感覚が確かにあった。その時々で真剣に悩んで、答えを出して、歌を作ってきた。そして、それを繰り返すうちに、徐々に人生の時間が止まっているように感じる事が増えていった。

あれ、私成長できてるのかな?って悩んだ挙句、考えるだけじゃ駄目だ!と無謀に行動してみたり。行動すればする分だけ物事が裏目に出る、散々な感じ。

そんな時、友人から送られてきたネットニュースのURL。

何の気なしにクリックしてみるとクォーター・ライフ・クライシスについての記事だった。クォーター・ライフ・クライシスとは、人生の4分の1が過ぎた辺りから訪れると言われている幸福の低迷期を指す造語。

大学を卒業し、入社し、社会にも慣れ始めた頃に自分の未来を見つめ直して、漠然とした不安や焦りを感じる現象だという事が分かった。
新入社員の時期を終え、教えて貰う立場にどんどん居づらくなってくるムード。精一杯頑張りました、じゃ失敗が許されなくなってくるピリつき。That’s 20代後半。

人より社会に出るのが早かったからか、少し前倒しして来たらしいクォーター・ライフ・クライシス。だったら抜けるのも早いっしょ!と前を向いてみる。発想の転換。周りと自分じゃなく、自分と二人でおしゃべりする時間をちょっとずつ増やしたら、勘が戻って来た。

GINZA webの読者はクォーター・ライフ・クライシスに当て嵌まる世代が中心だそう。そしてそこを通過し、また違う輝きを放っている世代の方も勿論いると思う。「言葉は目に見えないファッション」と言う連載を通じて、こんなこと考えている人もいるんだとか、懐かしいなとか、あったあったこんな時期、とか。

楽しく読んで、と言うにはまだ情報が少な過ぎる気もするから、まずは気軽に目を通してくれたらとても嬉しく思います。それでは初回はこの辺で。

家入 レオ Leo Ieiri

1994年生まれ、福岡県出身。17歳のメジャーデビュー以降、ドラマ主題歌やCMソングなどを多数担当。2020年5月には自らが厳選したカバー楽曲も含む1st EP『Answer』をリリース。
16thシングル『未完成』(フジテレビ系月9ドラマ『絶対零度〜未然犯罪潜捜査〜』主題歌)のginzamagでのインタビュー:
家入レオ、愛と憎しみの区別がつかなくなった「未完成」
leo-ieiri.com
@leoieiri

Cover Illustration: Yui Horiuchi Edit:Karin Ohira  

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