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家入レオ「言葉は目に見えないファッション」vol.7 大きな木の気持ち

家入レオ「言葉は目に見えないファッション」vol.7 大きな木の気持ち

クォーター・ライフ・クライシス。それは、人生の4分の1を過ぎた20代後半〜30代前半のころに訪れがちな、幸福の低迷期を表す言葉だ。25歳の家入レオさんもそれを実感し、揺らいでいる。「自分をごまかさないで、正直に生きたい」家入さん自身が今感じる心の内面を丁寧にすくった連載エッセイ。前回は vol.6 買い物の恋人


vol.7 大きな木の気持ち

豆腐とワカメのお味噌汁、雑穀米、納豆に卵。

この季節は、夏バテ予防に梅干しを1つ!

朝ごはんを食べ終わった私は台所で洗い物をしながら、その時を待っていた。

「おはようございます。」

「おはようさん。」

「おはよう〜。」

開けた窓から子どもたちの声が聞こえはじめ、スポンジの泡が蛇口に付かないようにして、出していた水の勢いをそっと弱めた。

家の近くにある保育園。

毎朝登園して来る子ども達の声に耳を傾けるのが、私のちょっとした楽しみだったりする。

元気な挨拶が聞こえてきたかと思えば、行かないで、と怒号のような泣き声が飛んでくることもあって。

困り切った保護者と先生。そしてその子の気持ちを思うと、「がんばれ!」と、スポンジを握る手につい力が入っていたりするから面白い。

1年と少し前。

私は福岡の保育園にいた。

立ち止まりがちだった、その頃。

これからどんな風に生きて行きたいだろう?と自分を追い詰めることにばかり一生懸命だった。

なんだか疲れちゃって、無気力な気持ちで、
じゃあ、一体私は何をしている時が楽しいんですかー?、と。

無茶苦茶な投げ方をした筈のボールがカコーンっとバッドに当たった。

ホームラン!

歌うことと、本を読むことが好きだよー!

わたしの心が叫んでいた。

感じてからは、早かった。知り合いの絵本屋さんに、実習生として受け入れてくれる保育園があるか尋ね、紹介していただいた保育園の園長さんに電話で想いを伝えた。

子供の頃してもらった、絵本の読み聞かせ。

虹色の魚がいる海、鬼より強いやまんばの女の子、怖くなった押し入れ、お月さまを取りに行くパパのこと。

これ読んで!と何度でも同じ絵本を持って行き。

先生やお母さんに身体をピタッとくっつけてお話を聞く時間が大好きだった。

そして、夢見ることを覚えた心でなんとも斬新な歌を作り、大人を苦笑いさせ、友達に迷惑がられながら、いつも歌っていた。

きっかけのひとつをくれた保育園に行きたい。

 

その願いは叶い、わたしは福岡の保育園にいた。

 

これが、本当にてんてこ舞いで!

子どもが、嫌だ、って言うのにも、ちゃんと理由があって。

その気持ちを尊重したいけれど、他のみんなもいて、時間的にやっぱりどこかで見切りを付けなくてはいけない、もどかしさだったり。

給食も、子どもたちに食べてもらいながら、自分も食べ進めるスタイル。みんなじっと座っている訳もなく、生まれて初めて、米は喉越し!なスピードでご飯をかき込んだ。

本当にクタクタになったけど、お昼寝の休憩中に頂いたアイスの美味しさは格別だったし、何より子どもたちの何気ない一言に感動した。

寒天に絵の具で色をつけ、固まったものを手で握るワークショップ。

机が汚れないように、ブルーのビニールシートを敷いていると、子どもたちがきゃー!っと騒ぎ出し。

「どうしたん?」と声をかけたら、「先生!海が広がっとるね!」って、きらきらな笑顔で。

私は、胸がきゅーっとして暫く喋れなかった。

実習生としてほんの数日、子どもに関わらせてもらって、お母さん、お父さん、そして保育士さんのすごさが分かった。

可愛い、だけじゃない。だけど、子どもたちは、宝物だと思った。

お迎えが来るまでの時間、ハンカチ落としをしたり、歌を歌ったり、泥団子を作ったり。

ある子に絵本の読み聞かせをしていると、いつの間にか、周りに子どもたちが。
膝に乗っている子もいれば、寄りかかっている子もいて。

わぁ、私が先生やお母さんにくっついていたのに、
今度は私がくっつかれる番になったのかぁ。

膝の上に1人と両脇に1人ずつ。左右の肩にも誰かの顎や、手が置いてある。

ちょーっと重いけれど、小鳥を枝に止めている大きな木はこんな気持ちなのかなぁ、なんて。

大きな木は、原っぱの真ん中で、静かな自由を愛して、
ひとり暮らすこともできる。

だけど、小鳥たちをその枝に止めてあげることで、
どうして自分が大きな木として生まれて来たのか、なんとなく分かって。

命のバトン、宇宙に、何も言えなくなる。

過去手にしていたはずの自由や静けさを、
懐かしく思ったりする日も、きっと、あるけれど。

騒がしくて、手に負えない今に、なんだかほっとして、
涙が出るのかもしれない。

そんな大きな木に、いつか、なりたい。

 

家入 レオ Leo Ieiri

1994年生まれ、福岡県出身。17歳のメジャーデビュー以降、ドラマ主題歌やCMソングなどを多数担当。2020年5月13日には自らが厳選したカバー楽曲も含む1st EP『Answer』をリリース。
16thシングル『未完成』(フジテレビ系月9ドラマ『絶対零度〜未然犯罪潜捜査〜』主題歌)のginzamagでのインタビュー:
家入レオ、愛と憎しみの区別がつかなくなった「未完成」
leo-ieiri.com
@leoieiri

Cover Illustration: Yui Horiuchi Edit:Karin Ohira  

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