02 Feb 2023
家入レオ「言葉は目に見えないファッション」vol.73 2023年!

クォーター・ライフ・クライシス。それは、人生の4分の1を過ぎた20代後半〜30代前半のころに訪れがちな、幸福の低迷期を表す言葉だ。28歳の家入レオさんもそれを実感し、揺らいでいる。「自分をごまかさないで、正直に生きたい」家入さん自身が今感じる心の内面を丁寧にすくった連載エッセイ。前回はvol.72幸福な1人
vol.73 2023年!
朝起きて、体の節々が甘く痛く、筋肉痛かな?と腕を回しながらケトルで湯を沸かしている間に身支度を済ませ。レンジで温めたサツマイモを食卓で食べている時には、これはヤバい、とスマホで近くの病院の予約を取った。自分の順番がアナウンスされるまでにやっておいた方がいい事を脳内リストアップし、米印で今日中締め切りと転送されてきていたメールの原稿チェックの為にノートパソコンを開いた。肩甲骨の辺りに寒気を感じる。残り時間が少ない。短期集中モードでなんとか原稿を添付し送信ボタンを押した瞬間に体から力が抜けた。母が出しておいてくれた体温計を脇に挟み、フローリングに崩れ落ちた。軽く目を瞑り、くの字に体を折る。寒い。床暖から伝わる熱がゆっくり私を暖めてくれる。ピピッという音を合図に体温計を取り出すと39度を越えていた。顔を肘で覆い「明後日のテレビ収録までに、治せるかな」と病院に出かけた。検査後コロナと診断され、ショックの最中マネージャーに謝罪と共に連絡を入れ、なんとか帰宅した。
ベッドで伏せっていると母が帰宅したのが聞こえた。年末年始の、このタイミングにたまたま上京してくれていたのだ。手洗いとうがいを済ませた母が、部屋の扉をノックしたので「はーい」となんとか声を絞り出すと。扉の向こう側から「お母さんとあなたとお正月に自宅で2人っきりで、ゆっくり過ごすのは人生で最初で最後かもしれないね。」と言って立ち去った。仕事をキャンセルして落ち込んでいることも、体がキツいことも全部知っての声かけだと分かって、心がじんわり熱くなった。いつもだったら実家の福岡に帰って親戚とお節をつまんだ後は、各々友人宅に行ったり、懐かしい人とご飯に出かけたり、兎に角人の往来が楽しく激しい。コロナは確かにもう罹りたくはないけれど、罹ったから気づけたこともあって、無駄なことなんてないと思った。2022年の最後に全部置いてきた!2023年!今年もどうぞよろしくお願い致します!
家入 レオ Leo Ieiri
1994年生まれ、福岡県出身。17歳のメジャーデビュー以降、ドラマ主題歌やCMソングなどを多数担当。
2022年2月にはデビュー10周年を記念して「10th Anniversary Live at 東京ガーデンシアター」を開催。
2023年2月15日にはニューアルバム『Naked』をリリース。収録されている「嘘つき」はWOWOWオリジナルアニメ「火狩りの王」のオープニングテーマ。
2022年2月にはデビュー10周年を記念して「10th Anniversary Live at 東京ガーデンシアター」を開催。
2023年2月15日にはニューアルバム『Naked』をリリース。収録されている「嘘つき」はWOWOWオリジナルアニメ「火狩りの王」のオープニングテーマ。
ginzamagでのインタビュー:
Photo:Leo Ieiri