友達にパートナー、両親、同僚。大人の人間関係は少々フクザツだけど日々ストレスなく気持ちよく付き合っていくために大切なマナー。いま必要なヒントをさまざまな分野の専門家たちに教わってきました。
韓国文学に学ぶ、他人と比較しない小さな幸せ
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人間関係が楽になる
韓国文学が教えてくれること
「人間関係に疲れたときは距離を置いてみよう。
その距離はきっと心に余裕をもたらすだろう」
『大丈夫じゃないのに大丈夫なふりをした』
クルベウ
1988年生まれの著者は、事業に失敗した自分を慰めるために投稿していたSNSの言葉が共感を集め、2015年に作家デビュー。このエッセイも、人間関係、仕事、恋愛、さまざまな局面で疲弊しがちな、現代人の心を癒やす言葉が詰まっている。どんなに好きな人でも、ずっと一緒にいるとぶつかることも。距離を置くことで心に余裕が生まれるというメッセージは参考にしたい。(藤田麗子訳/ダイヤモンド社/¥1,430)
「会社のことは頭の中でプラグを引き抜いて、いいことだけを考えてかわいいものだけ見るの」
『仕事の喜びと哀しみ』
チャン・リュジン
1986年生まれの人気作家による、働くことをテーマにした短編集。現代の韓国社会や若者の姿をリアルに、そしてユーモラスに描いた表題作は、スタートアップ企業で働くアンナが主人公。登場人物が絶望的な状況のなか、ペットの亀のかわいさで乗り切ろうとする様子などがおかしくも頼もしい。日本にも通ずる“職場あるある”にくすっとする場面も。(牧野美加訳/CUON/¥1,980)
「自分の人生は自分のもの。自分の身体も自分のものだし、その責任は自分で負うしかない」
『死にたいけどトッポッキは食べたい』
ペク・セヒ
他人に対する恐怖や不安感に悩み、カウンセリングの門を叩いた著者と、カウンセラーの対話からなる一冊。いつも自分を責めてしまうという悩みに対し、先生がかける言葉に救われる人も多いだろう。そう、「自分の人生は自分のもの」なのだ。治療を続けていくうちに、自己肯定感の低さや容姿コンプレックスが少しずつ解けていく。心のモヤモヤが言語化され、晴れやかな気持ちに。(山口ミル訳/光文社/¥1,540)
「助けてもらう目的で人をストックするようなことはしたくない。可能性とチャンスで広がっていく大きな世界より、ストレスの小さな井戸の中の方がいい」
『今日も言い訳しながら生きてます』
ハ・ワン
イラストエッセイ『あやうく一生懸命生きるところだった』が日本でもベストセラーになった著者の2作目。言い訳=してはいけないことという凝り固まった思考を、180度変えてくれる痛快な内容。ありがちなこととして、「人脈をたくさん持つこと」というのがあるが、そんな考えも軽やかに一蹴する。「生まれ持った器のまま生きる」ことで救われる人生もある。(岡崎暢子訳/ダイヤモンド社/¥1,595)
「完璧な娘がいないように、完璧な母親もいません。親もまた、まだまだ試行錯誤を通じて成長していく、 自分より歳を重ねただけの大きな子ども」
『傷つくだけなら捨てていい 精神科医が教える、ストレスの手放し方』
ユ・ウンジョン
精神科専門医による、人間関係を捉え直すレッスン帳的な内容。本書では、母親との関係性の築き方、いたわることの大切さについてもアドバイスしている。「母とまたケンカしてしまった…」と、自責の念に駆られがちな人も、親も“大きな子ども”という観点をもって接するようになると、衝突していた原因もさほど重要には思えなくなる、と説く。(カン・バンファ訳/イースト・プレス社/¥1,650)
他人と比較しない小さな幸せを
本の一行に見つける
「自分らしく生きる」というメッセージを発信する韓国の小説やエッセイに注目が集まっている。ベストセラー作品も続々出ているが、それらの中には“人付き合い”に関するテーマも多い。心を軽やかにする言葉がなぜ求められているのか、「チェッコリ」の広報・佐々木静代さんに聞くと「韓国が熾烈な競争社会だからだと思います。苦労して大学に入っても、就職難。何事もスピーディに結果が求められ、常に戦う必要があるのです。また、友人同士でも手をつなぐ人が多く、人間関係も濃密なので、しんどくなることもあるのでは。『無理に頑張らなくていいよ』という思想が渇望されてきたのでしょう。同じような感情を抱えている日本の人たちにも響くはずです」。
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本の街・東京神保町にある韓国書籍専門のブックカフェ。2015年オープン。韓国文学を手がける「CUON」が運営する。「韓国と本でつながる」をキーワードに情報を発信中。