03 Oct 2019
インパクトある肌色こそ洗練を生む!「白塗り」は恥ずかしくない――齋藤薫の「女とおしゃれのアナリシス」 第十三章

服映え、人映え、機嫌も良くする白肌効果!
白塗りはもう後ろめたくない?!
日本には昔から“白肌願望”というものがあって、「色の白いは七難隠す」の諺が未だに各所で息づいているのはご存知の通り。だから美白も日本で生まれた。
ところがその一方で、自分の肌より明るい色のファンデを選ぶのには、強い後ろめたさがあったりする。言うまでもなく白塗り、ひいては顔だけ白いお面塗りが、世にも野暮ったいこととされたからに他ならない。
従って日本の化粧品売り場では、明るい色を………と言いながらわざわざ一段暗い色を薦めるような慣習が続いてきた。だから顧客はこっそり別の店で白い色を買う、みたいな厄介な駆け引きが今もどこかで続いているのだ。
でも今、全く別のところから白肌トレンドが押し寄せていて、白肌市場がすっかり変わりつつある。
まずは、下地における「トーンアップ」効果が一つの主流に躍り出て、肌色を自然に白く見せることが技術的に可能になったことから、白肌作りのネガティブイメージが一気に減ったこと。もう一つは、韓国から白肌トレンドが勢いよくやってきたこと。
国同士は政治的に反目を続けているが、文化交流に加えて、美の交歓はますます盛ん。いや厳密に言うなら、オルチャンメイクやフンニョメイクなど、今韓国のメイクトレンドが次々日本上陸を果たしていて、日本の10代20代前半までは、おしゃれ意識の高い女子ほど韓国女子の真似をしているという状況。韓国コスメのブームはピークを過ぎたと言う見方もあるけれど、もっと根本的な部分で、極めてストレートに“キレイモテ”を形にする韓国の女性のナショナリティーに傾倒している女性が本当に少なくないのだ。
男は男らしく、女は女らしく、そうした役割分担が明快である国。ただ韓流ドラマブームの時よりも、今のK-Popの韓国男子たちが中性化しているのは、「男子もキレイモテの時代」を敏感に反映してのこと。韓国の男女は常に結果を求め、ある意味無駄な動きはしないのだ。
だから白肌。やっぱり白肌は美人の肝。人をきれいに見せる魔力は疑いようがないのである。
日本の白肌づくりは、やはりどこか白塗りのイメージが抜けきれずに女を老けて見せる気がするけれど、韓国発の白肌はあくまでも均一で透明感があって陶器の肌が大前提、むしろ少女の肌をまねたもの。だから全く逆に若く見える。白肌エイジングケアとして大人も真似していいのである。ここは、あくまでも韓国発の少女の白肌を作ろう。肌は真っ白、唇はやっぱり赤………典型的な韓国美少女メイクである。
さすがにピークを過ぎた今は、韓国女性の真似に見せたくないと言うなら、お手本はエル・ファニングあたり? 文字通り抜けるように白い肌は、それだけで見事に美しい。基本的に全ての服の色がよく映え、全てのメイクアップカラーが肌映えする。そして、“人映え”も! 人間が映えるのだ。だから遠目から存在が際立つのもやっぱり白い肌。
そして白肌に精神的な効果があるのも知っておこう。つまり、日中鏡を見て自分の肌が明るいと感じたとき、心まで明るく晴れわたって、機嫌が良くなるとさえ言われるのだ。幸い、自分の肌より白い肌色を選んでも、白塗りにはならないほど、今はファンデーションが進化している。だから心置きなく。
ここで、褐色の肌の名誉のために言っておこう。肌色は白いか、褐色か、どちらかが美しい。肌色としてカッコいい。中途半端な肌色より、極端に明るいか、極端にダークか。インパクトある肌色こそが洗練を生みだし、おしゃれの一部になるのだと覚えておこう。
いずれにせよ白塗りがもう野暮ったくない時代、思う存分、白肌を作ろう。
文/齋藤薫 さいとう・かおる
美容ジャー ナリスト/エッセイスト。女性誌編集者を経て、多数の連載エッセイを持つほか、 美容記事の企画、化粧品開発・アドバイザーなど幅広く活躍中 。近著の『 “ 一生美人 ” 力 』ほか著書多数。Yahoo!ニュース「 個人 」でコラム執筆中 。
イラスト/千海博美 ちかい・ひろみ
イラストレーター。版木に着彩後、彫りを入れる技法で作品を制作 。
広告、書籍装画、テキスタイルなどのイラストレーションを手がけ る。