“可愛い”を追い続ける〈ジルスチュアート ビューティ〉と作家・柚木麻子が紡ぐメッセージ。 エンパワーする女性たちの背中をそっと押してくれる全6話の連載物語。
Sisterhood with JILL STUART Beauty × 柚木麻子 vol.2『光のシグナル』
vol.2 『 光のシグナル 』
琥珀色の光がいくつも差し込み、何もない天井を彩っていた。光の通り路を目で追いかけていくと、通りを挟んで、向かいのマンションのベランダにたどり着いた。引きずるようなサマードレスを着た彼女は、足を大きく開いて、年代ものらしきシャンデリアをせっせと磨いている。
私が見ていることに気付くと、大きく手を振ってくれた。彼女の左腕の中のシャンデリアが揺れる。それにつられて、うちの天井のきらめきもぶつかりあって砕け、光の粒になって部屋中に散らばっていった。私もお返しに手を振った。
向かいの何もない部屋に、小さな家具や荷物が運び込まれるようになってから、私たちはどちらからともなく会釈をしあったり、手を振り合うようになっていた。生活できる最小限があればいいらしく、彼女はあくまでもあの空間を踊る場所として活用するつもりのようだった。相変わらず、毎日のように、炎を思わせるダンスを続けている。
不意に私はひらめいた。確か、この部屋のどこかに持ち主が残していった銀食器があったはずだ。あれをベランダに出し一緒に磨いてみようか。彼女の部屋に銀色の光を送ることができたら、シグナルを交換しているみたいでワクワクする。身体を使って何かしてみようと思ったのは久しぶりだった。
去年の今頃、私はまだ働いていた。感染対策に注意を払いながら休みなく売り場に立ち続けていたが、ある朝、どうしても起き上がれなくなった。この部屋の持ち主は現在、海外に住んでいる。ウイルスのせいで帰国のタイミングを見失い、私が職を失ったことを聞きつけ、タダで貸してくれているのだ。転職活動も難航し、外出しようとすると呼吸が苦しくなった。そういった事情をブログで綴るようになったのは、心のままに踊る彼女に触発されたからだ。大反響とまではいかないが、私に共鳴してくれる読者が何人も現れ、現在、大規模なオンラインイベントを計画中だ。
銀食器の磨き方をスマホ検索していたら、話題の動画がいくつか上がっていた。私はその一つに目が釘付けになった。有名アイドルグループが炎のダンスを踊っていたのだ。制服風の衣装がトレードマークの、清楚なイメージの彼女たちが、脚を広げて拳を突き上げている。一瞬合っていないように見えたが、だんだんと彼女たちが隠し持っていたパワーが解放されていくようで、私は前のめりになった。早くも同じ振り付けで「踊ってみた」動画をあげるファン達が後を絶たず、炎は瞬く間に広がりはじめている。
視線を上げると、ここからだとスマホ画面に収まるサイズに見える彼女は、きらめきが増したプリズムガラスを満足そうに眺めている。
(次号に続く。第一話はこちらから。)
柚木麻子
ゆずき・あさこ
作家。1981年東京生まれ。2010年『終点 のあの子』でデビュー。『ナイルパーチの女子会』(年/山本周五 郎賞受賞)、『BUTTER』(年)など、シスターフッドを綴る作品 には多くの女性ファンが。小学館「WEBきらら」にて『らんたん』 連載中。趣味は香川照之の似顔絵描き。過日のTwitterには「(香川プロデュースの昆虫ブランドの)虫のアロハを着ている」と。
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