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12 Jan 2022
“可愛い”を追い続ける〈ジルスチュアート ビューティ〉と作家・柚木麻子が紡ぐメッセージ。 エンパワーする女性たちの背中をそっと押してくれる全6話の連載物語。
vol.6(最終回) 『光と花のパレード』
眉を整えようかと思ったが、それはやめて、そのままの形をカラーアイブローで生かし、アイシャドウを重ねていく。こうして自然光の中で直に自分に触れているとわかる。二年近く家で一人ぼっちで過ごした日々は、私を何も損なわなかった。むしろ、内なるパワーが充電され、以前、出社していた時期の私よりも、ずっと目に力があり、唇はいかにも話したいことがありそうにふっくらして見える。
来週からはフラワーショップで働き始める。オンライン上でのやりとりでブーケを決め、発送する仕事だ。
全部彼女のおかげだ。
窓の外はすでに、音楽と高らかな歓声で湧き立っていて、なんだか目をつぶると、ここが海の向こうの温暖な地域で、今から大きなお祭りでも始まるような気がする。ベランダに出ると、通りにはプラカードを掲げ、花輪を身につけた女の子、花の飾り方がはっとするほど華やかな人から高齢女性まで、ネット上の呼びかけで集まった仲間たちでいっぱいで、それはどこまでも続いていた。新春の濃い青空と澄んだ空気が、その色とりどりを鮮やかに浮かび上がらせ、花の絨毯が都会に現れたような印象だった。
目をあげると、向かいの部屋のベランダに彼女が立って、こちらに手を振っていた。今日のパレードのために、彼女が友人のデザイナーに依頼したロゴ入りのトレーナー。大きめのサイズをあえて選んでいるのが彼女らしい。今、パレードで身につけている人もとても多い商品だ。
私の友達、國村真梨。通称マリ先生が振り付けしたアイドルのアングリーダンスはもはや国内のヒットには止まらず、日本女性の地位を高めていくというムーブメントの象徴として、世界中から注目されている。私が、この曲を流してパレードをやらないか、と提案したら、彼女が賛同し、オンライン上で呼びかけた。有名人も多数、反応した。日々を安全に暮らしたい、何か起きた時のセーフティーネットが欲しい、労働に見合うだけのお金を払って欲しい、性別で損したくない。集まった声はそれぞれ切実で、私がこの二年間、一人で悩み続けたことばかりだった。
全部、私一人の責任だと思っていた。
今はちがう。こんなに大勢の仲間がいる。私はこの日のために用意した花冠をかぶると、彼女のために編んだもう一つを手に、ドアを押し、階段を下りていく。音楽と歓声がどんどん大きくなっていく。
「美晴さん!」
と、真梨の声がした。群衆にもみくちゃになりながら、日の光の下、彼女が大股で通りを渡ってくる。
「こっち、こっち!」
私は夢中で手を伸ばし、彼女を歩道にひっぱりあげた。たくましい手首。白い顔いっぱいのそばかす。意志の強そうな眉。ネット上でしかしらなかった彼女が今、こんなに側にいる。
私は彼女に花冠をふわりとかぶせた。彼女がにっこりした。今度は真梨が私の手を引く番だ。私たちはパレードに加わり、その大きな花の絨毯に身を委ね、どこまでもどこまでも歩き続けた。
(全6回はこちらから。)
柚木麻子
ゆずき・あさこ
作家。1981年東京都生まれ。2010年『終点のあの子』でデビュー。『ナイルパーチの女子会』(/山本周五郎賞受賞)、『BUTTER』(17)など、シスターフッドを綴る作品には多くの女性ファンが。母校の創始者・河井道の生涯を描いた最新刊『らんたん』(小学館)発売中。「今年はもっと人に会ったり、色々なところに出かけられますように。私も身近なところから、少しずつ、外に出ていきたいなと思います」
光に包まれた花びらを映し出す
カラーシンフォニー
陽の光に透ける花びらのように、透明感と奥行きある目元を作ってくれる5色のアイカラーパレット。あどけない色香を漂わすオレンジのグラデーションにミントグリーンのハイライトで春を先取り。ジルスチュアート ブルームクチュール アイズ 全8種 左 04 サンリット ラナンキュラス/右 08 チューリップ ブーケ*限定色 各¥6,380(ジルスチュアート ビューティ)
Photo: Reiko Toyama, Wataru Kitao(product) Hair&Make-up: Hiroko Ishikawa Model: Yuko Nagata Edit: Aiko Ishii
GINZA2022年2月号掲載
2023年4月号
2023年3月10日発売