02 Aug 2019
夏のビーチサンダルの着こなしで女の評価が決まる――齋藤薫の「女とおしゃれのアナリシス」 第十二章

ビーサンがおしゃれに見えるかどうか?
女の評価の分かれ道
キメるという言葉が、いよいよ死語になってきた。キメキメは以前にも増して、野暮な響きを宿し、ゆるくゆるく、ルーズなほどおしゃれという時代も、今やクライマックス。極めつけは、やはりビーチサンダルのトレンドなのだろう。
これがまた、いわゆる「#KuToo」運動(職場で女性はハイヒールを履かなければいけないと言う決まりに対して起きている反対運動。セクハラの「#MeToo」運動をもじったネーミング)を待っていたかのように、ノーヒールの流れを象徴している。
最初はさすがに違和感があったものの、エレガントなドレスにスニーカーを履く違和感さえたちまち見慣れてしまった私たちの目、既におしゃれなビーサン、タウン仕様にもすっかり慣れてきている。
慣れてはきているけど、正直それが本当におしゃれかどうか、ひいては美しいかどうかは別問題。正直を言えば、かっこいい人は相当にかっこいい。しかし極めて大きな個人差が出やすいスタイルで、そう見えない人はビーチの気だるい雰囲気が出てしまう。
そもそも人口の5分の4は、ビーチサンダルがおしゃれになって街のファッションに出現しているなど全く知らないわけで、なまじ有名なアイテムだけに、そこは誤解を避けたいわけだ。昔ながらのビーサンでおしゃれなはずがないと思い込んでいる人にも、ハッとさせる何かが欲しいのだ。
おしゃれとは、やはり老若男女すべての人の目を奪い、うっとりさせてこそのもの。ましてや、おしゃれがおしゃれに見えないのは残念なこと。だからビーサンを履いた日こそ、これはおしゃれなのだという証拠を見せつける工夫が必要なのだと思う。
服はおそらくルーズなサマードレスか、くるぶし丈のスカート。だから、おしゃれの証はもっと明快な小物づかいで。例えば、大きなストローハットをかぶる。不必要に大きなかごバックを持つ。大きすぎるイヤリングをつける。この際、いやでも目立ってしまう大きさが良い。私を見なさいと言うインパクトを持ったデザインが良い。
もちろん、顔も普段着ではいけないから、真っ赤な口紅などで特別感を出して。そうそう、ビーチサンダルと完璧にカラーコーディネートされたペティキユアも不可欠。ともかくビーサンを履いた日は手を抜かない。しっかりとキメて欲しいのだ。
めぐりめぐって、ゆるゆるの抜け感おしゃれも、きっちりキメてこそ美しいというパラドックス。それを意識しなければいけない時代が来ているということなのかもしれない。
いずれにしても、いくらビーサンがトレンドだからといって、なんと楽チンなのと、不用意にそこに逃げ込んでしまってはいけない。むしろ楽チンな時ほど身を引き締めておしゃれする。
言い換えれば、ビーサンという、この世で最もぞんざいな履物で、どこまで美しくおしゃれに見えるか、それ以上にリアルで的確な女の評価はない位、今あなたが問われている。はっきり言って、ちゃんと上品で知的で高そうな女でないと、ビーサンは絶対おしゃれには見えない。 女の評価を分ける意外なアイテムである。
文/齋藤薫 さいとう・かおる
美容ジャー ナリスト/エッセイスト。女性誌編集者を経て、多数の連載エッセイを持つほか、 美容記事の企画、化粧品開発・アドバイザーなど幅広く活躍中 。近著の『 “ 一生美人 ” 力 』ほか著書多数。Yahoo!ニュース「 個人 」でコラム執筆中 。
イラスト/千海博美 ちかい・ひろみ
イラストレーター。版木に着彩後、彫りを入れる技法で作品を制作 。
広告、書籍装画、テキスタイルなどのイラストレーションを手がけ る。