SEARCH GINZA ID

おとぎ話の世界へ迷い込んだような気持ちが訪れる「日生劇場」:東京ケンチク物語 vol.26

おとぎ話の世界へ迷い込んだような気持ちが訪れる「日生劇場」:東京ケンチク物語 vol.26

東京ミッドタウン日比谷と帝国ホテルに挟まれた、 日比谷の一等地にある劇場が今回の目的地。 建築の凄みを体感できる、圧巻の空間が出迎えます。


日生劇場
NISSAY THEATRE

日生劇場

日比谷公園の向かい側、帝国ホテルの隣の角地に建つ「日本生命日比谷ビル」。薄桃色の万成石を貼ったクラシカルで重厚な外観は、銀座や丸の内に続いていく周辺の景色によく調和しているから、それほどのインパクトを残さないかもしれない。でも、外からだけ見てこの建築をわかった気になると大間違い……というより、相当もったいない。どしりとした何本もの柱で建物を持ち上げたような1階のピロティ部分を抜けて、この建物内の「日生劇場」に足を踏み入れるとその理由がわかる。端正な外観とは大きく印象の違う、有機的でとてつもなく美しい空間が広がるのだ。

日本生命の創業70周年記念事業として計画されたこちらのビルは、1963年の完成。設計は村野藤吾。1891年生まれの村野は、20世紀の長年にわたって日本各地に公共建築、百貨店、劇場、学校など、ありとあらゆる建造物をつくった日本の建築界の大・大巨匠だ。なかでも「日生劇場」は村野建築の最高峰のひとつとされる。

最初に出合う1階のエントランスは、訪れる人を一気に非日常へと誘い込む。白い大理石の床面、幾何学的な模様を描くアルミの天井。赤いカーペットが敷かれた大理石の大階段と優美な曲線を描く螺旋階段が、客席のある2階へと伸び、階段の先の劇場とそこでの演劇体験に、ますます期待が盛り上がる。劇場はその期待のさらに上をいくのだからすごい。客席の天井や壁を構成するのはうねるような曲面。壁面は色とりどりのガラスタイルのモザイクで彩られ、色つきの石膏による天井には2万枚ともいわれるアコヤ貝が貼られて鈍く光る。咲き誇る紫陽花をアリの視点で見上げているような、あるいは巨大な生き物の胎内に入り込んでしまったような……。日常とは遠く隔たり、おとぎ話の世界へ迷い込んだような気持ちが訪れる。

この建築が完成してから半世紀以上が経つ。近隣の建物の多くが、商業的により効率のいい高層ビルに建て変わったが、「日生劇場」は村野が精魂を込めて作り上げたオリジナルのまま。必要に応じて修復を重ねながら、ゴミ箱ひとつに至るまで守り抜かれ、かつ現役の劇場として使い続けられている。建築にとって、これほどに幸福なことはない。

日生劇場

住所: 東京都千代田区有楽町1-1-1
TEL:03-3503-3111
不定休

nissaytheatre.or.jp/公演によって開場時間は異なる。

東京メトロ日比谷駅より徒歩1分、JR有楽町駅より徒歩10分。

執念ともいえるほどのこだわりで作られたディテールの数々は要注目。華奢でエレガントな階段の手すり、今の職人には作れないというアクリルのドアハンドル、極小の金具……。村野はすべて図面を描いて実現していったそう。劇場では演劇やミュージカル、コンサートなどに加え、ニッセイ名作シリーズ、ファミリーフェスティヴァルなど自らの制作公演も毎年開催している。

Illustration: Hattaro Shinano Text: Sawako Akune Edit: Kazumi Yamamoto

GINZA2021年7月号掲載

#Share it!

#Share it!

FOLLOW US

GINZA公式アカウント

PICK UP

MAGAZINE

2021年11月号
2021年10月12日発売

GINZA2021年11月号

No.293 / 2021年10月12日発売 / 予価860円(税込み)

This Issue:
結局最後はヘアスタイル!
ファッションとの密接な関係

ヘアスタイルが決まれば
すべてうまくいく

...続きを読む

BUY NOW

今すぐネットで購入

MAGAZINE HOUSE amazon

1年間定期購読
(17% OFF)