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ノバレーゼ × 朝倉かすみ 連載短編小説 monologue:my wedding stories 第5回「食卓」

ノバレーゼ × 朝倉かすみ 連載短編小説 monologue:my wedding stories 第5回「食卓」

作家、朝倉かすみが綴る全7話のウェディングモノローグと〈NOVARESE〉のドレススタイル。自分らしい、自由なブライダルを叶える、連載ストーリー第5回。


第5回
「食卓」

 あの子が花嫁になった朝も、わたしは午前六時に目を覚ました。いつものように少しだけぐずぐずしたあと、寝床を出た。夫とこどもたちは眠っていた。お父さん二十四歳、お兄ちゃん六歳、カズくん四歳。三つ巴のマークみたいな寝姿だ。

 高校卒業と同時に結婚したわたしたち夫婦は四人家族となり、まぁまぁうまくやっている。お父さんはバイトしていたあのファミレスで社員になり、このあいだ店長に昇格した。

 わたしもずっとあのコンビニで働いている。オーナーがいいひとで、出産で辞めたのにまた雇ってくれた。しかも二度も。女子高生からふたりの子持ちになったわたしに、「アヤちゃんよぅ、いっそ孫ができてバーちゃんになるまでウチにいろよ」と口癖のように言い、こどもたちが実家の母に連れられてやってくると、奥から出てきて、グミかなにかを買ってくれる。

 八畳のフローリングに布団を二組敷いていた。この八畳はリビング兼寝室だ。我が家の間取りは1Kだが、すっきり快適に暮らせるようあれこれ工夫している。それがとても面白い。わたしは案外きれい好きで、片付け上手で、その上なかなかの倹約家で実は貯金に精を出していたりなんかして、とLINEならここで(笑)をつけるところだが、わたしはもうあの子の連絡先を知らない。

 着替えて、歯を磨き、顔を洗う。たっぷり使えるオールインワンゲルをすり込み、髪を括る。チェックのエプロンをキリリと締め、五畳のキッチンに出て、土鍋を火にかける。お米は昨日、夜寝る前に洗っておいた。お味噌汁の実は大根と油揚げ。お父さんとわたしだけ、お椀によそったら冷凍しておいたネギを散らす。納豆もそう。大人だけネギを入れる。かき混ぜるのはお兄ちゃんの役目だ。大人用、こども用、ふたつのどんぶりに二パックずつ入れた納豆を、いーち、にーい、と十まで三回かき混ぜる。

 家族四人で食卓につき、「いただきます」と声を合わせる。テレビにあの子の写真が映る。今晩、ごく内輪の結婚披露宴をおこなう予定とMCが伝えた。期待の若手女優と今をときめくバンドマンのカップルである。

「おー」

 お父さんが納豆ごはんをかっ込む手を止め、懐かしそうに言った。

「しあわせになるといいなぁ」

 あの子は地元の後輩で、中学のときからわたしの金魚のフンだった。わたしとお父さんが付き合いだすと、わたしたちを理想のカップルとし、質問攻めにした。どっちから好きになったの?出会ってすぐ運命の相手だって分かった?首の太い、野暮ったい女の子だった。なにかの天分に恵まれているとは思いもしなかった。まさかあんなに煌めく光のなかをまっすぐ歩いていくなんて。

「うちらみたいに?」

 わたしが肩をすくめると、「そうさ、オレらみたいに」とお父さんは胸を張った。わたしはゆっくりと笑い、カズくんの落としたフォークを拾い上げ、お兄ちゃんのほっぺについたお米粒を取り、いつものように「おかわりは?」と訊ねた。

朝倉かすみ あさくら・かすみ

作家。1960年北海道生まれ。デビュー作は『コマドリさんのこと』(2003年)。『田村はまだか』『満潮』など数々の人気作を手がける。昨年、『平場の月』で山本周五郎賞を受賞。近況は「秋の模様替え&断捨離祭り開催中」と朝倉さん。


ノバレーゼ|ベール

ボヘミアンな
光の彩りをまとって

今月のテーマは「光彩」。煌めくクリスタルや繊細な刺繍があしらわれた1着は〈ノバレーゼ〉がエクスクルーシブで展開する〈テンパリー・ロンドン〉とのコラボレーションドレス。

「フレアスリーブがボヘミアンな印象で、動くたびに揺れて可憐な雰囲気を醸し出します。大きく開いた背中やスカート裾まで続く刺繍が、美しいバックスタイルを叶えてくれるでしょう」と〈ノバレーゼ〉ディレクターの城昌子さん。

身頃は上品にフィットしつつ、スカートには三角のパネル(ガデット)をさし込んでフレア感をプラス。胸元からスリーブへと格子状の装飾が施され、ドットチュールを使ったガデットの周りにもパールやビーズが飾られている。

「ボヘミアンなテイストを愛するデザイナーのアリス・テンパリーらしいデザインです。等身大の装飾が輝かしいドレスで、自分らしいウエディングを表現してみてはいかがでしょうか」

ドレス¥750,000*購入価格、¥385,000*レンタル価格(テンパリー・フォー・ノバレーゼ)、イヤリング¥58,000*購入価格、¥12,000*レンタル価格(エリクソン・ビーモン|以上ノバレーゼ銀座)

城 昌子 しろ・まさこ

〈ノバレーゼ〉ブランドディレクター。ロンドンのセントラル・セント・マーチンズ美術学校卒、プレタポルテのデザイナーなどを経て現職。ドレスやテキスタイルのデザイン、バイイングにスタイリング、ブランドのディレクションを行う。

問い合わせ

ノバレーゼ公式サイト

ノバレーゼ銀座
Tel. 03-5524-1117

Photo:(landscape)Yuka Uesawa Text&Edit: Aiko Ishii

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