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ノバレーゼ × 朝倉かすみ 連載短編小説 monologue:my wedding stories 第6回「空のぼり」

ノバレーゼ × 朝倉かすみ 連載短編小説 monologue:my wedding stories 第6回「空のぼり」

作家、朝倉かすみが綴る全7話のウェディングモノローグと〈NOVARESE〉のドレススタイル。自分らしい、自由なブライダルを叶える、連載ストーリー第6回。


第6回
「空のぼり」

 あなたが花嫁になる日は、よいお天気になるといい。

 青く、高く、澄みあがった空が、夕方、燃えるようなだいだい色に染められて、金色の太陽が水平線に隠れると、ビロードみたいな濃紺の幕が下り、月がかがやき、星がまたたく、そんな一日だとすごくいいな、と思うんだ。

 そしたら、わたしのところからでも、よく見えるでしょ。

 違うかな。どうなんだろう。まぁ、でも、だいたい、そういう感じじゃない?わたしの行くのは、たぶん、お空の上ってやつで、そのときがきたら、きっと、わたしはわたしのからだを離れて、空にのぼる。

 初めての空のぼりだ。どんなふうにのぼっていこうか、考えるともなく考える。わたしがやってみたいのは、ラジオ体操第一のぼり。それか、クラゲのぼりのどちらか。

 あなたが小学一年生のときだった。ラジオ体操を教わって、家でやってみせてくれた。

 最初の背伸びの運動から二番目の腕と足の運動への流れをあなたはとても気に入った。両腕を下ろして交差させ、ひらくと同時に足もカエルみたいにひらいてカカトを浮かす。また両腕を交差させ、同時に足を閉じ、カカトを下ろす。あなたは、グイッ、グイッ、と空中に漕ぎ出していくような感じがして面白い、と、そのようなことを言った。

「ねーママ、りっちゃん、浮いてない?よく見てみて」

 あなたは何度もそう訊いて、「大丈夫、浮いてない」と答えると、たいそう残念がった。

 同じ頃、パパと三人で水族館に行った。

 あなたはクラゲに夢中になった。そのクラゲは蛍光色に光りながら、傘を広げたり縮ませたりして、暗い海中を泳いでいた。

 クラゲの傘を広げたり縮ませたりするリズムは拍動と同じ、と、ものしりパパが言い、拍動って?とあなたは訊いた。脈のこと、とパパはあなたの手を取って、頸動脈に触れさせた。わたしの手首の脈にも触らせ、あなた自身の首と手首に打つ脈を確かめさせた。トク、トク、トク。あなたはクラゲの動きに脈の音をあてた。トク、トク、トクと言いながら背伸びしていき、わたしに訊いた。

「ねーママ、りっちゃん、浮いてない?よく見てみて」

 あなたは髪を長くしていた。今は、男の子みたいなショートカットにしている。坊主になったわたしに合わせてくれたんだよね。ごめんね。ありがとね。

 四年生ともなると、いろいろ分かるみたいで、あなたはさっきからたくさん泣いているけれど、わたしはもうそんなに苦しくないんだよ。空のぼりの方法なんて考えたりしてる。

 トク、トク、トク。やっぱりクラゲのぼりでいこうと思う。ラジオ体操第一のぼりも捨てがたいけど、ここはひとつ、クラゲのぼりで。

 なぜかというと、クラゲのぼりをしてきたひとは、光の暈を手に入れるからなんだ。今、そういうことにしたんだ。

 わたしはいつまでも光を放つよ。どこにいても、その光であなたを照らすよ。だからもう泣かないで。お願いだから、しあわせになりなさい。

朝倉かすみ あさくら・かすみ

作家。1960年北海道生まれ。デビュー作は『コマドリさんのこと』(2003年)。『田村はまだか』『満潮』など数々の人気作を手がける。昨年、『平場の月』で山本周五郎賞を受賞。近況は「秋の模様替え&断捨離祭り開催中」と朝倉さん。


ノバレーゼ|ドレス

光の輪を映す
優しい輝きのドレス

今月のテーマは「光暈(こううん)」。光暈とは、太陽や月に薄い雲がかかった時に、周りに現れる幻想的な光の輪のこと。

「その光の残像にインスパイアされて、淡いイエローのオーガンジーにネイビーのチュールを重ねてみました」と、〈ノバレーゼ〉ディレクターの城昌子さん。

シックな濃紺のチュールに広がるフロッキー加工されたドット。光の中に包まれたようなチュール越しのイエローが、着る人をセンシュアルに輝かせる。

「力強い色合いのネイビーですが、チュールにかえてイエローと重ねることで柔らかく、光を透過するような印象に仕上がっています。2色の配色は肌にのせた時の美しさも計算されていて、日本女性の肌になじむ1着です」

円を描く光暈・光の残像は「まるで繰り返す吉祥文様のよう」。無限に広がる光の輪が、幸せなウェディングの時を約束してくれるはず。

ドレス¥450,000*購入価格、¥300,000*レンタル価格(ノバレーゼ)、イヤリング¥58,000*購入価格、¥10,000*レンタル価格(ボンキット)|以上ノバレーゼ銀座)

城 昌子 しろ・まさこ

〈ノバレーゼ〉ブランドディレクター。ロンドンのセントラル・セント・マーチンズ美術学校卒、プレタポルテのデザイナーなどを経て現職。ドレスやテキスタイルのデザイン、バイイングにスタイリング、ブランドのディレクションを行う。

問い合わせ

ノバレーゼ公式サイト

ノバレーゼ銀座
Tel. 03-5524-1117

Photo:(landscape)Yuka Uesawa Text&Edit: Aiko Ishii

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