ドレスアップしたお出かけ先でふとした瞬間の仕草がエレガントに!トータルフードプロデューサー・小倉朋子さんによるマナー講座、スタートです。
基礎からおさらい!レストランでのエレガントな立ち居振る舞い【GINZAお作法教室】
席ではバッグは背に
椅子は左側から座るのが正式だが、自然な状況であれば右側から座ってもOK。背もたれとお尻の間はこぶしひとつ分くらい空け、少し浅めに腰かける。背もたれを使うと横柄に見えることもあるので注意する。
バッグは小ぶりのものであれば、背中と背もたれの間か膝の上に置き、仕事用の大きなバッグはクロークへ。国際儀礼的に大きなバッグは「頭陀袋」という位置づけになるため、預けられない場合は床に置くのが正しいマナー。仕事先から食事に行く日は、ハンドバッグか布の小さめの袋を用意しておく。また大きさに関係なく、バッグを椅子の背もたれに引っかけるのはNG。椅子を傷めたり、お店の人がサーブする際に邪魔になる恐れがある。
ブラウス ¥53,900(スタジオ ニコルソン | インコントロ)/スカート ¥39,600(ハイク | ボウルズ)/ソックス ¥3,080(ババコ | ショールームリンクス)/バッグ ¥35,200(アエタ)/イヤリング ¥19,800(プティローブノアー)
姿勢よく、顔を上げて
食事に夢中になって下を向いてばかりでは、同席者が置いてけぼりになってしまう。なるべく顔を上げて、同席者と「フェイス・トゥ・フェイス」を意識する。
テーブルからこぶしひとつ分空けて、背筋を伸ばして座るのが基本姿勢。ナイフとフォークを使うときも視線だけ下に落として姿勢は崩さず、食べるときは上体を少し前に倒すようにする。くれぐれも顔を前に突き出して口で料理を迎えにいく「犬食い」にならないように。和食の場では、持てそうな場合なら器を手に取って。そうすれば、より長い時間、相手と顔を合わせることができて話も弾む。姿勢よくお互いが正面を向き合うと、テーブルの雰囲気がぐっと明るい印象に。
指先はふんわりと
カトラリーや箸を持つ指先がこわばっていると相手に緊張が伝わってしまう。余分な力を抜いて指先はそっと動かそう。フォークは、両手の小指と薬指を手のひらにつけて握ると人さし指に余分な力が入らず、食材も切りやすい。スプーンは柄の上の方を持ち、鉛筆を持つように人さし指、中指、親指の指先3点でやわらかく支える。箸の場合は人さし指がアーチを描く状態に。中指は箸の間に軽く添えるとよい。
皿 ¥2,800(リマスタード | ロスト アンド ファウンド トウキョウ ストア)/ナイフ ¥1,760、フォーク ¥1,540(共にピカード&ヴィールプッツ | ザッカワークス)
人や天井に刃を向けない
ナイフの刃やフォークの先端は、必ず下か自分側に向けること。人や天井に向けるのは幼稚な印象を与えるだけでなく、同席者を不快な気持ちにさせると肝に銘じる。ナイフとフォークは「ハ」の字に構え、そのポジションを崩さずに食べること。無意識のうちに箸先で人や物を指す「指し箸」、器の上に箸を渡して人に向ける「渡し箸」もとても失礼。会話中や食べないときは箸置きに置くことを習慣づけて。
ワンピース ¥39,600(ジェーン スミス | ザ ファクトリー)/ネックレス ¥12,100、ピアス ¥9,900(共にニナ・エ・ジュール | ショールーム ロイト)
いつでもひと口サイズで
食べものを頰張ると、優雅に見えないばかりか会話が中断されてしまう。口に入れる量は3cm程度を目安にして、自分の「ひと口サイズ」を見極める。大きいものは切ったり折りたたんだりして小さくするが、和食の煮物に入った大ぶりのタケノコやシイタケなど、箸で切れないものはそのままかじってOK。歯形の断面を見せないように、2〜3口で食べきること。
ノイズを出さない
カトラリー同士がぶつかる金属音やスープをすする音など、おいしい場を乱すサウンドは極力立てないようにしたい。肉などの食材は、力任せにナイフで押すのではなく、腕全体で引くように動かすと、切りやすく、余計な音も出にくい。また料理の香りを打ち消してしまうような強い香水や化粧品、その場の雰囲気にそぐわない服装も、同席者にとってはノイズになる可能性があるので注意しよう。
盛り付けはすぐに崩さない
料理は目でも楽しむもの。まず一番に盛り付けの美を堪能したい。そしてその姿をできるだけ保ちながら味わうことが、料理人への心配りであり、大人の食べ方といえる。たとえば、天ぷらのように食材を重ねた山盛りの料理なら手前の上から、お造りなどの平盛りなら手前や端から順番に、ソースの多い料理ならソースも同じ量で減らしていき、付け合わせも交互に食べ進めると、皿の景色を損ねずにいただくことができる。
取り分け時には一言
他人がよそったものに抵抗を持つ人もいるご時世。「分けましょうか」と声をかけ、了承した人の分だけよそうとよい。「自分でやります」という人には無理強いしない。取り分けのポイントは、均等かつ少なめによそい、大皿に料理を残しておくこと。こうすると食欲のない人は少量を楽しめ、もっと食べたい人はおかわりできて無駄がない。大皿に盛られたメニューのミニ版をつくるイメージで盛り付けると、きれいに取り分けられる。
スマホは机の上に置かない
神聖とされるテーブルには、食事に関係ないものはのせておかないこと。基本的には、スマホはバッグの中へしまい、用事がある場合のみ使うようにする。レストランは、あくまでも食事と会話を満喫する場所。スマホを使うのはマナー違反とは言えないものの、画面を見ることに夢中になっては、同席者にもお店の人にも配慮のない行為になる。また、料理の写真を撮りたい場合は、「撮ってもよろしいですか」とお店の人に聞けるとベスト。
料理と会話は1:1
誰かと時間を共にするとき、味ばかりに集中してしまっては勿体ない。とはいえ、会話に没頭して食事がおろそかになるのはもってのほか。お皿が運ばれてきたらまずひと口、二口楽しむ、アイスクリームは溶けないうちにいただくなど、おいしいタイミングを逃さないことを前提に、食事と会話のバランスは半々くらいの気持ちで。相手が興に乗っているときは食べることに専念して、ひと段落したところで話し始めるなど、互いに意識できると◎
自分が聞き手のときも、フェイス・トゥ・フェイスで頷いたり微笑んだりしながら、同席者の言葉にしっかり耳を傾けることを心がける。コミュニケーションが深まり、より楽しく心に残る席になるはず。
食べ進めるスピード
和洋中を問わず、コース料理は前菜からデザートまで、約2時間で提供されることがほとんど。そこには「一番おいしい状態と温度で味わってもらいたい」というお店の意図があることを頭に入れておく。当然、食べるスピードが早すぎても遅すぎてもよろしくない。できるだけ同席者とペースを合わせながら、最後のデザートをゆったりと味わえるのが理想。幸せな余韻のなかで食事を終えられるように、全体の時間配分を考える。
終わりもきれいに
器は食後しばらくテーブルに残ることもあり、他人の目に触れやすいもの。食べ終わりが美しい器は、その人の品格を上げ「きれいに食べる人」という印象につながる。料理を残さないのはもちろんのこと、和食の焼き魚の頭や骨、果物の皮や種などは皿の奥にまとめ、何ものっていない面積が広くなるようにするとスッキリ。さらにそれを山折りにした懐紙で隠すとパーフェクト。「最後まで美しく」の意識を忘れずに。
離席は機を見て
離席するときは、コース料理ならデザート前のタイミングを狙い、「ちょっと失礼します」と声をかけてから。それ以外のタイミングでは席を立たないのが望ましいが、やむを得ない場合は、出されたものを食べきって離席するのがベター。料理はおいしい状態で食べきるのが店側への配慮であり、食べている途中で席を立つと、その後のメニューの調理やサーブの流れが滞り、店の人を待たせてしまうことに。
お会計はスマートに
カード払いやスマホ決済ができないお店もあるので、現金は必ず用意しておくこと。会計を割り勘にするときは一人がまとめて払い、店を出てから現金のやりとりを。後輩などにごちそうするなら、化粧室に行く際に会計を済ませておくと退店もスムーズ。目上の人が払ってくれる場合は、自分も支払う意思を見せつつ「よろしいんですか」と引き、店の外で「ありがとうございました。ごちそうさまでした」とお礼する。
持ち帰ってもよろしいでしょうか?
食べきれなかった料理を持ち帰れるかどうかは、お店のポリシーによってまちまち。最初から「テイクアウトでお願いします」と聞くのではなく、持ち帰りが可能か、一言尋ねてみよう。
ボトルで注文したワインを飲みきれなかった場合も、持ち帰ってよいか聞いてOK。ただし、まったく手をつけなかったワインを持ち帰るのはマナー違反。お店が忙しそうなときはリクエストを控えるなど、配慮ある見極めも必要。
食後15分以内に退店
フォーマルなお店の場合、食後のコーヒーやお茶を飲み終わったら、なるべくサッとおいとまする。それ以外の店でも、食事やお酒が終わっているのに、ずっとおしゃべりしたりスマホを見たりして居座るのは、店の採算などを考えてもとても迷惑な行為。話が盛り上がっているなら「場所を変えましょうか」と同席者に提案して、すみやかに退店しよう。
そして、お店の方には「おいしかったです。ごちそうさまでした」の一言を、お開きにするなら同席者に「今日はご一緒できてうれしかったです」と感謝の言葉を。
ジャケット ¥90,200(フォトコピュー | ショールームリンクス)/ワンピース ¥92,400(スタジオ ニコルソン | インコントロ)/バッグ ¥38,500(ビエダ)/シューズ ¥39,600(ピッピシック | ベイジュ)/イヤリング ¥15,400(プティローブノアー)
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監修 小倉朋子さん
トータルフードプロデューサー。テーブルマナーや食を総合的に学ぶ「食輝塾」主宰。『世界一美しい食べ方のマナー』(高橋書店)など著書多数。totalfood.jp