ライター水原(以下M) 初めて『SWEET MEMORIES』がテレビから流れてきたときは衝撃でした。1983年の夏、サントリーのCANビールのCMで。アニメのペンギンが酒場で歌うと、聴いていた他のペンギンたちが涙を流す。しかも歌は英語!
若松さん(以下W) 後にアニメ映画化されましたが、本当にいいコマーシャルでした。
M 最初、新しい洋楽アーティストかと思って驚き「もしかして聖子さん?」と学校でも大騒ぎに。『SWEET MEMORIES』を作られたいきさつは?
W まず、英語詞をノンクレジットで聖子が歌うというCMのオファーをいただきました。サントリーのCMクリエイターの方たちはみなさん本当に有能でね。アイデアに溢れる打合せだったのをよく記憶しています。
M 作詞は松本隆さんで作曲とアレンジが大村雅朗さん。
W でもなかなか大村さんの曲ができなくて。今でもはっきり覚えていますが、麻布台のサウンドシティというスタジオで、締め切りギリギリに大村さんと会って。
M 最初のフレーズだけはできていたと聞いたことが。
W そう。でも二人で作業し始めたら1時間くらいですぐに完成したんです。こんな感じがいいんじゃないの? とお互いに言ったりしてね。
M クレジットを伏せた理由は、デビュー曲の『裸足の季節』が歌だけのCM出演で注目を浴びたのを、広告関係の方たちが鮮明に覚えていたのかと思いましたが。
W いや、純粋に謎のクラブシンガーという設定だったんじゃないかな。聖子も当初はこんな大人っぽい曲、私に歌えるかしらと言っていたけど見事に歌いきりました。
M この1年くらい前に『ザ・ベストテン』で『渚のバルコニー』を英語で歌ったのも衝撃的でしたよ。
W それは知らなかった。
M 黒柳徹子さんのご友人の翻訳で1〜2回だけ。なかなか英語詞ってフルで覚えられないですし生放送で、心から尊敬しました。あの頃を境に松田聖子という人はただ者じゃないと日本中の人が気づき始め、その後英会話もマスターされましたよね。
W やっぱり天才なんです。とにかく耳がいい。そしてタレント性がすごい。歌手は歌が上手いだけじゃダメだからね。
作品もCMもリリースも
全てがサプライズに溢れていた!