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松田聖子の80年代伝説Vol.17 豪華作家陣と透明感溢れる歌声でJ-POP史上に輝く13thアルバム『SUPREME』

松田聖子の80年代伝説Vol.17  豪華作家陣と透明感溢れる歌声でJ-POP史上に輝く13thアルバム『SUPREME』

昭和から令和へと変わってもトップアイドルとして輝き続ける松田聖子さん。カセットテープ1本から彼女を発見し育てた名プロデューサー・若松宗雄さんが、24曲連続チャート1位という輝かしい伝説を残した聖子さんのシングルと名作アルバムを語る連載。80年代カルチャーで育ったライター・水原空気がインタビューします。第17回目は休業後に発表し、レコード大賞のアルバム賞も受賞した1986年6月発売の『SUPREME』について。さみしいですが、ついに最終回です。

前回の12thアルバム『SOUND OF MY HEART』後編も合わせてチェック。


真っ白なジャケットは聖なる歌声の象徴!

ライター水原(以下M)   最近、若松さんはYouTubeでも平和を訴えていらっしゃいますね。

若松さん(以下W)  世界中で、いろんなことが起きてるからね。

 M 1985年発売の『SUPREME』や翌年の『Strawberry Time』からは、当時も今も強いメッセージを感じます。

W 聖子にはいまこそ「世界平和」を歌ってほしいよね。少なくともそんな気持ちを込めて歌い続けてほしい。ただ『SUPREME』は非常に完成までの道のりが長かったんです。

M というと?

W レコーディングが始まってみたら、楽曲に対して、なかなか聖子と意見が合わなくて、聖子も自分のこだわりが芽生えはじめた頃だったから。

M  当初、作詞家の松本隆さんは参加されていなかったんですよね?

W  結婚・休業直前の前作『The 9th Wave』が全曲女性作詞家によるアルバムで、新しい形を模索していた。けれどそれが『SUPREME』ではなかなか上手くまとまらず、再び松本さんに全曲、一から詞を書いていただくことにしたんです。

M  緊急招集ですね。

W  あそこからまとめられるのは、松本さんしかいなかったから。で、制作現場は私のアシスタントだった佐藤洋文に任せました。ヨウブン(ニックネーム)は人と人をつなぐのがうまい。

M  松本さんが斉藤由貴さんのデビューの際に出会った武部聡志さんもアレンジで参画し、1曲目の『螢の草原』とラストの『瑠璃色の地球』が自然につながってアルバム全体が清廉なイメージに仕上がっています。

W  聖子のプロジェクトは常に新しい才能との出会いに恵まれていました。全て聖子の宝物となり、私も大変感謝しています。

M  『時間旅行』など名曲も多数。『SUPREME』は世界中の町が登場し、部屋にいながらにして旅ができます。

W  今の時代にぴったりだね。『瑠璃色の地球』はその後合唱曲にもなり、環境問題もいち早く盛り込まれていた。松本さんは天才です。そのときどきの聖子に合うテーマをきちんと授けてくださった。

M  シングルカットは、なぜしなかったんですか?

W  聖子が家族との時間をとても大切にしていたから。自分が現場を担当していたらシングルにしたと思うけど。あえてそのときは松本さんとヨウブンに預けていました。

 

いまこそ世界平和を聖子さんに歌ってほしい!

M  松本さんがプロデュース、若松さんはco-プロデュースという形は、翌年のアルバム『Strawberry Time』にも続き、タイトル曲をレベッカの土橋安騎夫さんが作曲しています。大江千里さんや米米クラブも参加してソニーのスターが大集合しワクワクしました。土橋さんには若松さんが直接アドバイスされたと聞きましたが。

W それは半分本当。松本さんを通じて、土橋くんに「自由に曲を作って新しい世界を築いてほしい」と伝えてもらいました。聖子の既存のイメージにとらわれていると、新鮮な作品が生まれなくなる。

M その結果、聖子さんらしい平和を願う曲『Strawberry Time』が完成したんですね。

W 実にいい曲です。大村雅朗さんのアレンジも抜群にいい。イントロからかっこいいし、いま聴いても色あせない。

M  さらに翌1987年にはデヴィッド・フォスターと組んで15thアルバム『Citron』を発売。

W  英語詞もあり再び世界に飛び出したアルバム。新たな方向性を現場スタッフも模索してくれていたので。

M そもそも休業明けの3部作は、1985年末頃に聖子さんから電話があって、表参道での打ち合わせからスタートしているんですよね?

W 結婚休業して少し過ぎた頃。具体的な復帰の話をしないままだったけど、自分は必ず聖子がもう一度歌うとわかっていた。聖子にとって、歌うことは生きること。それくらい歌が好きだからね。

M  その後、80年代末に若松さんは営業統括部長となり、現場を離れてソニーミュージックアーティスツの社長(その後会長)になられました。聖子さんは、さみしかったのでは?

W 悩みがあるときはよく電話が来ていました。アメリカからかかってきたこともあったね。その後、私がソニーを退職して事務所を立ち上げたタイミングで聖子から再び連絡があり、今度は彼女のマネジメントを3年手がけました。松本隆さんとさらに再び組んだアルバム『永遠の少女』の頃です。

M いま若松さんから聖子さんにメッセージを送るとしたら?

W これは、あらゆる仕事に通じることですが、常に新鮮な気持ちでいてほしいですね。デビュー当時のようなね。あの頃は全てシンプルでした。歌が大好きな10代の高校生と、音楽プロデューサーとして必死な私がいて。歌詞は三浦徳子さんにお願いしよう、曲は『アメリカンフィーリング』の小田裕一郎さんにしようってね。そうしたら、一瞬でみなさんに「松田聖子」が愛されるようになっていった。

M  自分も常に新入社員のように気持ちで仕事ができたらと毎日思っています。なんか関係ないですけど(笑)。

W   いやいや、そんなことない。何歳になっても新人の気持ちでいられたら、永遠に成長していける。

M  『裸足の季節』の気持ちで?

W  そう。昔からのファンの方ももうみなさん大人です。昭和、平成、令和と駆け抜けて誰もが先行きが不安。聖子にはいまそんな心の痛みをスッと癒せるような曲を歌ってほしいな。でも私も含めて長年やってると、新鮮な気持ちでいるのはなかなか難しい。

M  デビュー当時私は中学生でしたが、聖子さんの曲を聴くと一瞬であの頃の気持ちに戻れます。

W 曲自体に永遠の魅力があるからね。そう考えると歌の力ってすごい。そうだ!今回『松田聖子の誕生』(新潮新書)という本を上梓したので、ぜひご覧ください。聖子の80年代の楽曲やデビュー前後の話もたくさんあります。今の時代に読んでいただきたい1冊になりました。

M 楽しみです!この連載もさみしいですが今回が最終回。ここで失敗談を一つ披露すると、実は当初カメラマンがA面B面を知らなくて、レコードのB面だけ撮影していたことがあったんです。裏表に違う曲が収録されていることが理解できずに…。

W (笑)配信の時代だからね。でもだからこそ、いい曲は時代も国境も超える。聖子は今『裸足の季節』でデビューしても大ヒットすると思います。未来に向かっていく強さは、昔も今も変わらないから。みなさん、今までありがとうございました!

M 本当にありがとうございました。近いうちに番外編をぜひ! 若松さん、聖子さんはずっと私たちの「希望」なんです。青春そのものなので。たくさんの素敵な曲を残していただいたこと、幾多のエピソードを教えていただいたこと、心から感謝いたします。

W こちらこそ。またお会いしましょう!

Profile

若松宗雄/音楽プロデューサー わかまつ・むねお

一本のテープを頼りに松田聖子を発掘。芸能界デビューを頑なに反対する父親を約2年かけて説得。1980年4月1日に松田聖子をシングル『裸足の季節』でデビューさせ80年代の伝説的な活躍を支えた。レコード会社CBSソニーではキャンディーズ、松田聖子、PUFFY等を手がけ、その後ソニーミュージックアーティスツの社長、会長を経て、現在はエスプロレコーズの代表に。Twitter@waka_mune322、YouTube「若松宗雄チャンネル」も人気。

Text: Kuuki Mizuhara Photo: Miyu Yasuda

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