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松田聖子の80年代伝説Vol.18 明るい歌声でクリスマス・ブームを巻き起こしたコンピレーション・アルバム『金色のリボン』 前編

松田聖子の80年代伝説Vol.18 明るい歌声でクリスマス・ブームを巻き起こしたコンピレーション・アルバム『金色のリボン』 前編

昭和から令和へと変わってもトップアイドルとして輝き続ける松田聖子さん。カセットテープ1本から彼女を発見し育てた名プロデューサー・若松宗雄さんが、24曲連続チャート1位という輝かしい伝説を残した聖子さんのシングルと名作アルバムを語る連載。80年代カルチャーで育ったライター・水原空気がインタビューします。第18回目は番外編。ちょうど40年前の1982年12月発売。アイドルがクリスマスソングを歌った画期的アルバム『金色のリボン』について。その前編です。

前回の13thアルバム『SUPREME』も合わせてチェック。


誰もが知ってるクリスマスソングも、
聖子さんが歌うと別次元に!

松田聖子の80年代伝説|金色のリボン
『金色のリボン』1982年12月5日発売。当時のアナログ・レコードは完全限定生産だったため、コンディションのいい中古盤は、今はほとんど入手不可能。画像は2020年に復刻されたCD。初版限定で写真集も再現されファンを歓喜させた。

ライター水原(以下M) 聖子さんのベスト盤『金色のリボン』 が発売されたのは1982年12月5日。ちょうど40年前です!

若松さん(以下W) アナログ2枚組で、片方がクリスマスソング集、もう片方がレア曲のベスト盤でした。写真集的なブックレットも付けてね。当時も、カートンBOX仕様でレコード20万枚、カセットテープ10万本だけの限定盤だったからレア感もあったよね。

M なので2020年12月に、ブックレットも含めて完全復刻された時は嬉しかったです。写真集がいま見てもおしゃれなんですよね。1982年は11月に6thアルバム『Candy』も発売されています。アルバム2枚連続は、かなり忙しかったのでは?

松田聖子の80年代伝説|金色のリボン

写真はブックレットから。1982年の秋に深夜の表参道、根津美術館の近くで撮影されたもの。右奥に見えるヘッドライトは、なんと当時の若松さんの車。次の現場へ送るため、この日は撮影の立ち合いと送迎も若松さんが担当していた。「自分の車を見て、記憶が一瞬で甦りました。聖子も忙しかったけど、みんな楽しんで仕事をしていたから、今見ても当時の空気感が伝わってきますね」

W 締切ギリギリまでレコーディングしてたからね。聖子だから許されたスペシャル進行でした。確かに大村雅朗さんと、クリスマス・スタンダードのメドレーで各曲のキーが違うから、どう繋げていいか頭を抱えていて。ソニーの六本木スタジオの廊下で煮詰まってた時に、当時の役員さんが「これから食事会なんだよ! 若松ちゃん、がんばって!」と爽やかに横を通りすぎてね。あのときは自分も一緒に行きたくなったよね(笑)。

M そんなお二人の苦労があって、名盤が誕生したんですね。『赤鼻のトナカイ』や『ジングルベル』。あのメドレーを聴くと、今でもすごくハッピーになります。定番の歌なのに、聖子さんが歌うと別次元くらいに明るくPOPな曲になるんですよね。

W 聖子はどんな曲も自分の持ち味で歌う天才だから。

M そもそもクリスマス・アルバムを作られたきっかけは?

W 私は東北出身なんですが、子供の頃は本当に寒くて。ラジオから洋楽のクリスマスソングが流れてくるたびに「東京に行ってみたいなー」「おしゃれなクリスマスを過ごしたいなー」って、ずっと思っていたんです。それで12月のスペシャル盤として企画しました。

だから全国の人が共感したのかもしれませんね。ユーミンの『恋人がサンタクロース』も、聖子さん初のカバー・ソングが新鮮でした。

W もともとこの曲を私が大好きだったから。聖子にもピッタリでした。

山下達郎さんの『クリスマス・イブ』が発売されたのが翌年6月。考えてみたら80年代のクリスマス・ブームの火付け役は聖子さんだったのかもしれません。それまでの邦楽のクリスマス・アルバムといったら、江利チエミさんの英語カバーくらいしかなかったんじゃないですか? その後のバブル期は、誰もがレストランやシティーホテルを予約したり、テレビもCMもクリスマス一色。もう「聖なる夜は恋人と一緒じゃないと、この世の終わり」くらいの勢いで。

W でしたね。でも自分は12月は春の新曲を準備してたから、いつも次の季節のイメージで頭がいっぱいだったんですよ(笑)。

M ところで銀座のソニービルの地下にあったフレンチ・レストラン「マキシム・ド・パリ」は、若松さんも行かれましたか?(ソニービルの解体に伴い2015年に閉店)

W もちろん。何度も。

M 毎年クリスマスは予約殺到で、階段脇の通路にまでテーブルを置いていたとか。

W ソニーの創業者の盛田昭夫さんが1966年に作った名店。海外の文化をいち早く日本に伝えてくれた大切な場所でした。そう言えば「マキシム」で聖子と一緒にビリー・ジョエルと食事したこともあったね。

M ええええええええー!?

W ビリー・ジョエルの来日コンサートの時に、ソニーの大賀典雄会長が歓迎ディナーを主催して、ご本人やツアーメンバー全員を招待したんです。聖子がちょうど彼のプロデューサーでもあるフィル・ラモーンと『SOUND OF MY HEART』というアルバムで仕事をすることが決まった時期で、1984年5月のことでした。それで私たちも洋楽スタッフと一緒に参加して。そうしたら、ビリーが聖子に「明日の夜、時間はある?」と。翌日の武道館コンサートに聖子を誘ってくれたんですよ。「コーラスとして一曲参加してみないか?」とね。曲は『あの娘にアタック(Tell Her About It)』。

M まさにビリー・ジョエルさんが聖子さんにアタック!!

W 次の日の武道館コンサートでは、3人いるコーラスのセンターが途中で聖子に変わったんですが、だんだんとお客さんたちがザワザワし始めて。当時は大きなモニターもないから、最初はよくわからなかったみたいで。でも最後にビリー・ジョエルが「SEIKO MATSUDA!」って改めて紹介すると、みんなビックリしてたよね(笑)。それを私は、ご招待した松本隆さんと二人で、舞台の袖から笑顔で見守っていました。

M まさに80年代の奇跡、クリスマスではないけど、プレミアムな一夜です。若松さんの著書『松田聖子の誕生』(新潮新書)に描かれている、デビュー当時に、聖子さんのテレビ初出演を不安げに見守っていた若松さんのエピソードから考えると、感慨深いものがあったでしょうね。

W なんといってもビリー・ジョエルとの共演だからね。グラミー賞を受賞したばかりでビルボードでも首位を獲得して、とにかく人気だったし。聖子も私も、やっぱり嬉しかったですよ。

M  とりあえず今日はソニービル跡地の近くに行って、『あの娘にアタック(Tell Her About It)』を聴くことにします(笑)。

(後編へ続く)

Profile

若松宗雄/音楽プロデューサー わかまつ・むねお

一本のテープを頼りに松田聖子を発掘。芸能界デビューを頑なに反対する父親を約2年かけて説得。1980年4月1日に松田聖子をシングル『裸足の季節』でデビューさせ80年代の伝説的な活躍を支えた。キャンディーズ、松田聖子、PUFFY等を手がけ、ソニーミュージックアーティスツの社長、会長を経て、現在はエスプロレコーズの代表に。Twitter、YouTube「若松宗雄チャンネル」も人気。『松田聖子の誕生』(新潮新書)が絶賛発売中。

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Text: Kuuki Mizuhara Photo: Miyu Yasuda

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