09 Jan 2019
蒼井優さんの銀座の小さな物語 20代最後の夏、すごく楽しかった銀座での思い出

表通りのキラキラ、裏通りのひっそりしたところ。歩けば誰しもが主役になれるこの街では、それぞれに小さな物語がある。7人のレディが綴る、銀座の街の素敵な素敵なおはなし。
大人になってわかってきた、
自分をちょっと演じさせてくれることのドキドキ。
年を重ねるごとに街との距離感が変わっていくのが、銀座の面白いところですよね。小さい頃は親に連れられてデパートとかに行く場所だったし、10代から20代前半にかけては銀座よりも原宿とか高円寺のほうが好きでした。だけど、20代後半あたりから、「ドーバーストリートマーケット」ができたのが大きかったんでしょうけど、興味や買えるものが変わってきて、銀座にもよく行くようになりました。
銀座ですることですか?骨董屋さんで器を見るのは好きですね。以前に共演した市川猿之助さんがものすごい熱く骨董について語っているのを聞いて、そんなに言うなら見てみたいなと興味を持って行くようになりました。そこからまだ価値の定まっていない現代の作家さんも気になって、そういうお店に行くこともあります。あとは、歌舞伎座で歌舞伎を見た帰りに、「喫茶YOU」でオムライスを食べたり。いつも「今度こそオムライス以外のものを頼もう」と思うんですけど、隣の席の人が食べているのを見るとやっぱりオムライスを注文しちゃうんですよね。だから、「喫茶YOU」ではオムライスしか食べたことがないんです(笑)。知り合いのやっているバーにもよく行きますね。床のタイルとガラス作家のイイノナホさんの照明がすごく可愛いんですよ。だから、行くと床ばかり見ています(笑)。それから、「銀座もとじ」さんで着物を見たこともあります。社長さんが言っていたんですけど、銀座で着物を織っている音を立てるのが夢だったんですって。そういうのって素敵ですよね。銀座は……そんな感じですかね。
原宿とか高円寺は等身大で行けるんですけど、銀座ってちょっと演じさせてくれる感じがあるじゃないですか。あえて足が痛くなりそうな革靴とかヒールを履いて気取っちゃったりして(笑)。そういうことにドキドキできるようになったのが、20代後半だったってことかもしれません。これからどんどん銀座を楽しめる年齢になる気はしますし、目の保養をしにいく場所であり続けるんだろうなと思います。そう、だから、銀座は“目にいい街”ですよね。
そうそう、銀座と言えば、すごい楽しかった思い出がひとつあるんですよ。20代最後の夏、銀座の近くに住んでいた同じ年の友達と前の晩から朝の10時まで飲んだ日があって。それで3時間くらい寝てから、「とりあえずカレーを食べに行こう」って言って、ほどよくお酒が残った状態でみんなして銀座の街を歩いたことがあるんですね。かなりカジュアルな格好で、まるで地元の人みたいな感じで(笑)。一応、「20代最後の特別な夏なんだから、何か楽しいことをしよう」っていうのがテーマだったんですけど。それでカレーを食べた後に、コーヒー屋さんを二軒はしごして解散しました。今まで話してきたこととは方向性がだいぶ違ってくるかもしれませんが、あれは楽しかったな。[談]
あおい・ゆう=1985年、福岡県生まれ。近作に『彼女がその名を知らない鳥たち』など。現在、ナビゲーターを務めるテレビ東京系ドラマ『このマンガがすごい!』が放映中。映画『斬、』が2018年11月24日より公開。舞台『スカイライト』が新国立劇場で12月6日より公演。
Artwork: Marefumi Komura Text: Keisuke Kagiwada
GINZA2018年12月号掲載