美しい国、ウズベキスタンを訪れたテレビリポーターの葉子が“伝説の怪魚”を探す。という冗談みたいな導入から、黒沢清監督らしく不穏なムードの中、どこに連れていかれるかわからないまま、葉子の奥に潜む葉子が解放されていく、というかなり私的な物語だ。確かに、自分と向き合わないまま世界と対峙すると、迷子どころか迷宮入りしてしまう。自分がどう見るかで、世界の映り方は180度変わる。葉子に扮する前田敦子の表情が、瞼に焼きつく。
全国公開中。©2019「旅のおわり世界のはじまり」製作委員会/UZBEKKINO
カナダ・ケベックの退屈な海辺の街で暮らす、17歳の少女レオニーは、やりたいことも見つからないし、母と義父の家にも居場所は見つからない。ここから居なくなりたくて、ずっとイライラしている。そんな彼女が、大人になりきれない大人たちとの交流を経て少しずつ変化していく。カナダの新鋭セバスチャン・ピロットが監督・脚本を手がけ、カナダで大ヒットを記録した作品。希望はずっと続くものではなく、灯ったり消えたりするものだ。
新宿武蔵野館ほか全国順次公開中。©CORPORATION ACPAV INC. 2018
『ワイルドライフ』
俳優のポール・ダノが監督し、パートナーのゾーイ・カザンが共同脚本を手がける『ワイルドライフ』は、60年代のモンタナ州を舞台に壊れゆく家族を描いた同名小説が原作。ダノを彷彿とさせる14歳の息子を持つ幼すぎる父ジェリー(ジェイク・ギレンホール)と、女として生き抜こうとする母ジャネット(キャリー・マリガン)は、まだ30代半ば。家族の役割という型にはまって大人になることの難しさは、大人と呼ばれる年齢になるほど痛感する。
7月5日(金)よりYEBISU GARDEN CINEMA、新宿武蔵野館ほかにて順次公開。 ©2018 WILDLIFE 2016, LLC.