『CATNAPPERS 猫文学漫画集』
(長崎訓子/ナナロク社/¥1,600)
筒井康隆、中原昌也、別役実、赤川次郎、芥川龍之介に小川未明に菅原孝標女の『更級日記』。海外からはルナールとサキも参戦して、猫文学の名作が漫画になった。古今東西の名作文学から選ばれた猫たちが、白や黒や茶色の毛皮をまとって、超然とページを横切っていく。長崎訓子の鉛筆の線が、猫の仕草や表情を、柔らかな体の形をとらえて離さず、姿のないものまでが絵に描かれ形を与えられて動き出す。原作と往来しながら読みたい至福の1冊。
『日本のヤバい女の子 静かなる抵抗』
(はらだ有彩 /柏書房/¥1,400)
日本の昔話に登場する女の子たち。愛されたり奪われたり恐れられたりしながらも、生きて、死んで、この本の中で再び生きている。彼女たちの言動を手に取ってじっくり眺め、思いの淵をのぞき込み、たくさん話しかけてみる。《私たちの物語はただすれ違っていくだけだとも言えるし、どこか遠くで繋がっているとも言える》から、今の今こそ真面目に優しく執拗に。リック・オウエンスのコレクションを《ノンフィクション部門》に挙げるユーモアも最高です。
『純真なエレンディラと邪悪な祖母の
信じがたくも痛ましい物語 ガルシア=マルケス中短篇傑作選』
(ガブリエル・ガルシア=マルケス/野谷文昭訳/河出書房新社/¥2,500)
“世界文学”と名指しされる作品がいくつあったとしても、そのてっぺんにはガルシア=マルケスの名が輝いている。日常に幻想が入り込み、幻想は豊かに実態化してその姿を現す。糖蜜色の目が光り、光は水のように部屋を満たし、天使は錯乱し、エレンディラは走る。水死人は誠実に死にながらひととき口を開く。20世紀初頭にコロンビアで生まれ、世界で愛されるノーベル賞作家による10の中編&短編を新しい訳で収めた傑作集。