20 Jun 2020
G’s ART REVIEW こんな時こそアートに触れたい!杉本博司による京都市京セラ美術館の開館記念展etc.

杉本博司[OPTICKS 008]2018 ©Hiroshi Sugimoto / Courtesy of Gallery Koyanagi
白髪一雄は、戦後日本の前衛芸術を牽引した具体美術協会の中心メンバー。1954年頃から開始した、床に広げた支持体に足で直接描く「フット・ペインティング」のエネルギッシュな絵画は、それまで制作の手段にすぎなかった身体運動をまさに画面の主役に据えるラディカルで画期的なアイデアだった。近年、あらためて国際的な注目を集める白髪。本展では、絵画約90点をはじめ、伝説的パフォーマンスの映像や資料なども加えた総数約130点で作家の活動の全容に迫る。
【杉本博司 瑠璃の浄土】
期間:開催中〜10月4日(日)
場所: 京都市京セラ美術館
▶︎https://kyotocity-kyocera.museum/exhibition/20200321-20200614
無題 2020 撮影: 畠山直哉
これまで自然の内にあるものに気づき、受け取ることで作品を作り続けてきた内藤礼。今回の個展では、『「人(わたし)が作る」を超えること』を問い続けてきた彼女が、はじめて「創造」と向き合い、新たな挑戦を試みる。展示空間に繊細に呼応するインスタレーションも内藤作品の魅力のひとつ。金沢21世紀美術館の建築と響き合うスケールの大きな作品も展示される。本展は、日時指定入場制。ゆったりと流れる時間のなかで内藤礼の世界を堪能できるのもうれしい計らい。
【内藤礼 うつしあう創造】
期間:6月27日(土)〜8月23日(日)
場所: 金沢21世紀美術館
廣瀬智央[レモンプロジェクト 03]1997 作家蔵 Photo by Tadahisa Sakurai ©Satoshi Hirose
ミラノと東京を拠点に活動する廣瀬智央の個展。廣瀬は90年代後半に、約3万5千個のレモンを用いた嗅覚を刺激する作品[レモンプロジェクト03]で注目される。本展では同作品や、イランの遊牧民と共作した手織り絨毯を用いた作品[マーレ・ロッソ]を約20年ぶりに展示するほか、母子生活支援施設の子どもやお母さんと空の写真を交換し合うプロジェクトなど、社会との接点を意識した作品も展開する。日常生活の小さな事象の豊かさに触れる作品たちを、五感で味わってほしい。
Recommender: 柴原聡子
建築とアートの編集者、ライター。こんなときこそ、アートやカルチャーの豊かさとありがたみを実感。
GINZA2020年6月号掲載