27 Aug 2020
G’s MUSIC REVIEW トロピカル・ハウスのパイオニア、カイゴの新作『ゴールデン・アワー』etc.

『KiCk i』
ARCA
「ノンバイナリー」で始まるアルカの4作目は、以前から見事なコラボを続けるビョークを筆頭に個性的なヴォーカルをフィーチャーし、複数の自我を行き来する実験的な旅。ベネズエラで生まれ欧米を拠点にしながらトランスジェンダー女性を自認し、人生の多くの面で「自分は中間点にいる」と感じた経験と、レゲトン、ネオ・フラメンコ、ポップスなどいくつもの要素を大胆にシンセでつないだ先に見えた流動性を重ねたドラマティックな作品。
(XL Recordings / Beat Records)
『ゴールデン・アワー』
カイゴ
ノルウェー出身DJ/プロデューサーのカイゴは、トロピカル・ハウスのパイオニア。ぬくもりあるシンセや生音を使ったBPM抑えめの“癒やし系EDM”は、2016年に18カ国のチャートで1位を獲得した彼のデビュー作とともにトレンドに。ポップス、ロックファンと垣根なく親しまれるセンスに共鳴したリタ・オラ、ザラ・ラーソンら豪華ゲストも参加し華やかな今作の中、ホイットニー・ヒューストンの幻の名曲リメイクには泣き踊った。
(ソニー・ミュージックレーベルズ)
『LIANNE LA HAVAS』
Lianne La Havas
リアン・ラ・ハヴァスは、ロンドンでジャマイカ系の母とギリシャ系の父の間に生まれたシンガー・ソングライター。かのプリンスが彼女の才能に惚れ込みデュエットの相手に指名するなど、実力は折り紙付き。ギターと歌い回しのグルーヴ感が最高に気持ちよく、ソウルとはジャンルでなく歌心のことだと再確認。魂ごと鳴らして作った5年ぶり3作目のインスピレーション源は愛と喪失で、ビタースウィートなヴォーカルに心を締めつけられる。
(ワーナーミュージックUK)
Recommender: 奥浜レイラ
音楽と映画のMC。ノイズと清さってこんなふうに共存できるのかと唸ったARCAの新作。オススメです。
GINZA2020年8月号掲載