演歌の世界に感じるヒップホップ。映像ディレクターが語る紅白出場歌手MV

演歌の世界に感じるヒップホップ。映像ディレクターが語る紅白出場歌手MV

みなさんこんにちは。映像ディレクターの玉田伸太郎です。僕は普段、広告やファッションの動画や音楽のMVをお仕事で撮影することが多いのですが、巡り巡ってきた縁で演歌のMVを制作する機会に恵まれました。なんだか面白そうだ、という好奇心で仕事を引き受けたのですが、企画を出すにあたり「よく考えたら演歌のMVってなんだ??」という根本的な疑問にぶち当り、参考にと様々な演歌、ムード歌謡のMVを参考に観ていたのですが、その独特の世界観にハートを射抜かれ、演歌MVのディグを止める事が出来なくなりました。

どれもいつも観ているMVとは全く違う価値基準で制作さている映像たち。いわゆる 若者向けの「オシャレ」というものではないですが、不思議な魅力にあふれています。この良さをもっと存分に味わいたい。そして、みんなにも教えたいという衝動を形にすべく、今回は年末と言う事で紅白歌合戦に出場する演歌を、独断と映像制作目線で解説します。当然ですが、今もなお演歌界には新人も登場してきますし、新曲も続々リリースされています。SNS時代に合わせMV制作や、動画投稿も増えて来ているのです。この記事が演歌と演歌MVを楽しむきっかけになればいいなと思います。

 

 

大御所による、とにかく親切なPV。『夜明けのブルース/五木ひろし』

紹介しない訳にはいかないご存知、五木ひろし。 レーモンド松屋氏との初タッグで第54回日本レコード大賞「作曲賞」を受賞した『夜明けのブルース』。 手元を写したギターソロてに切り替わり、映像のムードが変わるので「これがレーモンド松屋? ギタリスト?」と思うんですが、カメラがパンした先にはやっぱり五木ひろし。ソロも担当する所に本人のプライドを感じます。

そして、五木ひろしMVの特徴としてあげられるのは、歌とのシンクロ率が100パーセントなところ。舞浜にある遊園地のアトラクションくらい親切です。映像だけ見ても、歌詞が歌えるような。ここまで力強く「松山」と地名をはっきり言われると、どう考えてもそこで撮らないとダメだよねぇ、、思ってしまいます。

歌パートにはドラマパートと同じバーを使用しているので、ファンタジーと現実が入り混じり何が何だかわからなくなるトリッピーな演出なのですが、これは五木ひろしの過去の経験なのではという深読みも入ると全体のコンセプトが引き締まります。

 

現行演歌の最高級PV!『勝負の花道/氷川きよし』

もはや説明不要ですよね。氷川きよし。このMVは現行演歌の最高級ビデオです。ロケパート、歌パート、CG、演出や映像の質感、完璧で安心感があります。

通常現場ではこういうものはカットするのですが、ロケ地を完全封鎖せずに後ろの方でシニア層の日常生活が映り込む演出が、現場のリアルを大事にしている方なんだなぁという印象に。停めっ放しの自転車、シャッターの降りた店、照明の中にいるおばあさん。よく見る風景をそのまま活かすところに懐の深さを感じ、優しさと、演出では再現できない生々しさを共存させています。流石、みんなのきよし。地元の方々とのふれあいシーンも映像に取り入れ、レペゼンしていく。やっぱ演歌ってストリートなんだなぁと感動します。一回見たらその心意気にファンになってしまうような、応援したくなる要素が満載!

 

期待の新人『山内惠介/愛が信じられないなら』

キャリアの浅い歌手の場合、作詞や作曲のネームバリューは重要な要素です。「作詩には、EXILE、平井堅、CHEMISTRY他多数のプロデュースや楽曲を手掛ける音楽プロデューサー松尾潔氏を迎えた作品。作曲は恩師 水森英夫氏。」とコメント欄にしっかりと書かれています。「人が信じられないなら、一人になればいい」…なんとも深い歌詞です。

どうしてこういうMVになったのか全くわからないのですが、謎の仮面舞踏会設定。これが大人の愛ということなのでしょうか。氷川きよしのような小刻みな動きも取り入れてるなと思い、調べると 「氷川きよしと同じ水森英夫門下生であり、氷川と同じ福岡出身である。」なんと。何処と無く感じる氷川きよし感は、同郷で同じ師匠ということだったんですね!! ヒットメーカーを続々と放り込む作曲家・水森英夫は演歌界のDr. Dreのような人ですね。紅白では、同郷、水森門下生である氷川きよしも共演!!! Dr. Dreで例えるとプロデュースされたスヌープドッグとエミネムの共演といったところでしょうか。豪華〜。どんな絡みをしてくれるのかとても楽しみです!

 

今年初出場!『純烈/プロポーズ』

そして 戦隊ヒーロー出身俳優を中心に、平均身長183cmを誇るイケメン軍団、白川、酒井、友井、後上、小田井の5人のグループ。全国各地のスーパー銭湯を巡り「スーパー銭湯アイ ドル」と言うポジションでジワジワブレイクし今年紅白初出場。「親孝行、紅白歌合戦出場、全国47都道府県で唄うこと」を結成以来の目標として掲げている。2007年、当時俳優だった酒井が映画撮影中の事故で入院、入院中にコーラスグループを結成することを思い立ち、酒井は「紅白歌合戦を目指そう! 親孝行しよう!」とメンバ ーを誘う。最年少の後上は東京理科大学を中退という異色の経歴で、本格的に歌謡曲を歌 った経験はない状態でスタートを切った。と、気になるエピソードだらけなんですが、今はそう、とにかく紅白出場。夢が叶ったんです!

彼らにはそれぞれ、挫折も含む人間らしい人生を経験し、地道な活動により歌の素人から紅白まで上り詰めたという、汗臭く感動的なサクセスストーリーがあるんです。ヒップホップのようにハスリンして、ギャングに命を狙われて〜といったサクセスストーリーとはまた違いますが、人生の懐の深さを感じさせるプロフィールには、こちらも応援したくなる要素が満載。経験を重んじる年配の方からの支持が熱いのにも納得です。 MVからビンビン来る、生々しさもすごいですよね。これが夢を叶える人たちの生命力なんだと思います。

そして、観て欲しいはズバリロケ地!先の山内惠介さんをもう一度観ていただけたら気づくと思うのですが、分かりましたか!? そう。一緒なんです。あの洋館のような場所!!あの場所は一体なんなでしょうか。 ここだけの話、なんとなくヒットの法則がわかったような…?

 

いかがでしょうか? 今回は白組にフォーカスしてご紹介しました。 まだまだ見始めたばかりではあるのですが、どのMVも共通して一定量の魅力がありま す。 サクセスストーリーや、絶対の超縦社会だったり、サンプリングだったり、地元をレペゼンし、リスペクトの心を忘れないなど、ヒップホップの文化に通じるような面白さが演歌にはあります。いわゆる「オシャレ」とは違うのですが、そう考えると新たに楽しめるのではないでしょうか。大晦日の紅白歌合戦が楽しみです!

 

最後に僕らの演歌作品も観ていてだけたらありがたいです。 少ない知識で振り絞った処女作。シンプルに吉田氏の母への感謝の気持ちを表現することをコンセプトにしました。 間奏のあるセリフパートは、演出担当が何テイクも粘ったこだわりのシーンになっているので 是非受けとめてほしいです。 椅子にそっと寄り添う事で母が座っているのかもというニュアンスが含まれているのがポイ ントです。吉田氏の初MVという事でシンプルにしましたが、その分演出が際立っています。紅白出たら夢ありますよね!

吉田ひろき ‐ 無償の愛

玉田伸太郎 SHINTARO TAMADA

Videographer Webを中心に、MV、CM、ドキュメンタリー、VJなどを中心に活動。 2018年、折坂悠太、Soakubeats、徳利、テンテンコ、冬にわかれて、等のMV制作。 森道市場アフタームービー、SUTUDIO VOICE海外ドキュメンタリー制作。 あっこゴリラ、ライブ映像演出(VJ) 山ト波と共に音楽イベント「玉フェス」開催など多岐に渡る。 shintarotamada.main.jp

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