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G’s BOOK REVIEW 異才・酉島伝法が、初めて人間を主人公に据えた連作小説集『るん(笑)』 etc.

G’s BOOK REVIEW 異才・酉島伝法が、初めて人間を主人公に据えた連作小説集『るん(笑)』 etc.

2月のエンタメをレビュー!GINZA編集部がレコメンドする新刊をご紹介。


『るん(笑)』
酉島伝法

『るん(笑)』酉島伝法

(集英社/¥1,800)

「未曾有」の3文字が「みぞゆう」と読まれ、平熱が38度に引き上げられ、ドードーのように猫が絶滅したと思われている世界線。科学が退けられて疑似科学が祀られ、スピリチュアルの膜に覆われた日常の中にヤマイダレが増殖する。ここは現代日本か近未来か、それとも全体主義のはびこる架空のディストピア社会か?異才・酉島伝法が、初めて人間を主人公に据えた連作小説集。読み終えても抜け出せないほど現実感のある手触りが怖くて怖くてクセになる。

 

『フジモトマサル傑作集』
フジモトマサル

『フジモトマサル傑作集』フジモトマサル

(青幻舎/¥2,700)

熊にペンギン、オオカミ、カワウソ、猫にアナグマ、ラム酒を飲む羊。動物たちが物思いし、PCを使い車に乗り、研究に精を出す。動物が動物のまま、二本足で歩き、言葉を話し、道具を使う。フジモトマサルの絵と言葉が織りなす世界が、その重量感を保ったまま1冊にまとめられて、いつでも遊びにいける近しいものになった。名久井直子が装幀と監修を、福永信が企画・選・構成を手がけ、単行本初収録の漫画やエッセイも収めたベスト・オブ・ベスト作品集。

 

『きょうの肴なに食べよう?』
クォン・ヨソン

『きょうの肴なに食べよう?』ヨソン・クォン

(丁海玉訳/KADOKAWA/¥1,500)

人と人が共に生きるとき、《愛とか熱情も大切だが、スープの味付けやキムチの味もそれに劣らず大切》だ、と韓国の人気作家。短編集『春の宵』で酒に近しく生きる人々の姿を活写したその筆で、《酒国語》で、自らの舌を幸せにする料理と酒の記憶をたどっていく。腸詰め、海苔巻き、カムジャタン……なじみのある料理にも、はじめて出合う文字の連なりにもお腹が鳴り、賑やかなごはんの会に招かれたような口福の時間が訪れるエッセイ集。

Recommender: 鳥澤 光

ライター、編集者。『るん(笑)』を読むと日常の色彩が、濃度が変わる。(笑)もオチオチ使えない。

GINZA2021年1月号掲載

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