3月のエンタメをレビュー!GINZA編集部がレコメンドする映画をご紹介。
G’s FILM REVIEW 胸が苦しいのにユーモラスな愛くるしいオーストラリア映画『ベイビーティース』etc.
『すばらしき世界』
『復讐するは我にあり』で直木賞を受賞したノンフィクション作家、佐木隆三が実在の人物をモデルにつづった『身分帳』を原案に、西川美和監督が映画化。人生の大半を裏社会と刑務所で過ごし、再出発を目指す男を役所広司が、彼を取材する上で彼のわからなさに惹かれていくテレビマン役を仲野太賀が熱演。価値観を揺らがせ、自分なら何ができるかを問うことから決して離してくれない西川作品は、複雑な人間を複雑なままに受け入れる。
全国公開中。 ©佐木隆三/2021「すばらしき世界」製作委員会
『ベイビーティース』
『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』でベスを演じたエリザ・スカンレンが主演。重い病を抱え心を閉じてきた16歳のミラが、距離感を飛び越えてくるドラッグディーラーのモーゼスと偶然出会う。ありがちな闘病恋愛ものかと思いきや、ミラとモーゼス、家族までもが思いも寄らない関係を築いていくさまをヴィヴィッドに描く。胸が苦しいのにユーモラスな愛くるしいオーストラリア映画。監督シャノン・マーフィーの次作にも期待。
新宿武蔵野館、渋谷ホワイト シネクイントほか全国ロードショー中。
©2019 Whitefalk Films Pty Ltd, Spectrum Films, Create NSW and Screen Australia
『夏時間』
小津安二郎監督『お早よう』を観て、自分のことをよく知っている友達みたいな映画だと思った、という1990年生まれのユン・ダンビ監督。彼女の長編デビュー作も、まさに友達のような映画だ。父が事業に失敗し、10代の少女オクジュは弟とともに祖父の家に避難するが、離婚寸前の叔母も転がり込んでくる。祖父の介護や相続問題など、家族という居心地の悪さが浮き彫りになる。どこかへ片付けてしまった10代の感情の揺らぎに触れた。
渋谷ユーロスペースほか全国順次公開中。 ©2019 ONU FILM, ALL RIGHTS RESERVED
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Recommender: 小川知子
ライター・編集者。沼にはハマらないつもりでいたはずが、完全にチョ・ジョンソク沼にハマりました。