小さな木のパネルに描かれた幾何学模様。色はブルーと白、黄色と白、黒と白といった組み合わせ。作者はベルギー出身のペインター、アラン・ビルテレースト。西新宿にあるギャラリー、ハギワラプロジェクツで日本では初となる個展が開催される。
この模様、どこから来てるのだろう?と思ったら、実はストリートや日常にあふれるモノから取られているらしい。例えばマンホールのふた。フェンスの網とか、トラックの荷台とか、飛行機の翼とか。あるいはなんてことない日用品。それらの模様とか図柄をデザインした人はいるはずだけれど、私たちは見慣れ過ぎていて、そういうものを「デザイン」として意識しない。そういう©がないデザインの魅力って、なんかありますよね。
彼のウェブサイトを見てみると、「WORKS」のコーナーには、作品や展覧会の画像に、アイデアソース?と思われる日常の風景写真とか、街に打ち捨てられているデッキチェアとか……、作品じゃない画像がちょこちょこ混じっている。それ以外にも、パネルに描かれているのと似た模様が、ギャラリーの壁いっぱいに、はたまたガレージのシャッターに描かれている風景写真もある。そんなふうに、発見と作品が交互に出てくる感じは、インスタっぽく見える(彼はインスタもやってる@ albilt)。私自身この作家を知らなかったので、正直どこまでがソースでどこから彼の作品なのかちょっと判別できないものもあった。
このグラデーションがなかなか興味深い。大きく拡大された模様が書かれた壁やシャッターは、ドイツ風?のグラフィティにも見えて、フツーの街の風景にすごくなじんでいる。一方の小さいパネルは、重ねた筆跡が民芸っぽさもあって、こんな小品が部屋にあったらいいな、なんて気持ちになる。この大きさの変わりようがどうやらポイント? たしかに模様に決まったサイズはないし、拡大縮小も自由自在。ありふれた模様は、グラデーション状にその大きさやフォーマットを変えて、ありふれた風景にちゃっかりハマっている。
日々の生活や風景になじんで、でもちょっといいモノ。それは、アートよりもデザイン、とくにプロダクトなんかに求められることが多い。ここでも、デザインとアートのグラデーションが見えてくる(事実、彼はグラフィックデザインをやっていたことがある)。
今回の展示では木製パネルのペインティング約20点が展示されるそう。抽象画? ポップアート? それとも日常とアート? どうにも読み取れる絶妙な“いい加減” (もちろん、良い意味での)を抱かせる彼の作品、果たして実物はいかに。会場でピュアに楽しみたい。
アラン・ビルテレースト(Alain Biltereyst)
1965 年ベルギー生まれ。ブリュッセル近郊在住。美術大学卒業後に作家活動を開始するが、途中からグラフィックデザイナーへと移行する。2004年より作家活動を再開し、現在数々の展覧会に参加し、高い評価を受けている。主な個展に、“OH MY DAYS” ジャック・ヘンリー ギャラリー(2017, ニューヨーク)、“Elsewhere” Loods12(ウェッテレン, ベルギー)、“TRACK CHANGES”Van der Mieden Gallery(2016, アントワープ)など。主なグループ展に、“100 YEARS AFTER DE STIJL”ラーケンハル市立博物館(2017, ライデン, オランダ)、The B&W Project #5”Transmitter(2016, ブルックリン)、“PLIAGE / FOLD”ガゴシアンギャラリー(2014, パリ)など。
アラン・ビルテレースト「How And About What」
会場:ハギワラプロジェクツ
〒160-0023 東京都新宿区西新宿3-18-2-101
京王新線・都営新宿線「初台」駅東口より徒歩5分/
JR「新宿」駅南口より徒歩 15 分/都営大江戸線「都庁前」駅より徒歩 12 分
入場無料
会期:2017年10月7日(土)~11月19日(日)(月曜・祝日は休廊)
時間:火~土 11:00-19:00 日12:00-17:00
URL: www.hagiwaraprojects.com