美しく危うげな少年たちに、ロック♡オン。ヘルナン・バス日本初の個展がペロタン東京で開催中

美しく危うげな少年たちに、ロック♡オン。ヘルナン・バス日本初の個展がペロタン東京で開催中

大輪の花に埋もれる少年、オフィーリアのように水に沈みかけている少年、扇をもってこちらをじっと見つめる少年。その誰もが、色白で細身、すらりと伸びた長い手足をもち、少年特有の妖しさを放っている。ちょっと艶めかしく、なんとも耽美的な彼らは、女子校育ちの私にとって、ティーンエイジャーの頃に憧れたイギリスのロックスター(パルプのジャーヴィスとか)や、少女漫画に出てくる不良だけど実は美少年、みたいなキャラクターに見える。

20180115_002B_Rヘルナン・バス When ready to mature it takes its rst breath as an adult under the protection of night, 2017 Acrylic on linen 127 x101.6 cm / 50 x 40 in

近年世界でも注目を集めているアメリカのアーティスト、ヘルナン・バスの展覧会がペロタン東京で開催中だ。冒頭に書いた通り、彼の描く絵の多くには、思春期の揺らぎや子どもから大人への移行の不安定を抱える物憂げな少年たちが登場する。物憂げで儚ない佇まいの青年像達は、バスが「ファッグ·リンボー (Fag limbo)」と呼ぶ、少年期から大人へと移行する間にいるらしい。

実際の絵を観て、こんなに女子に刺さるセクシーな男の子たちを描けるなんて!と驚いてしまった。エリザベス・ペイトンの描く男子たちも魅力的だけれど、それよりももっと、不安定さやわだかまりみたいなものが見え隠れするというか。映画で言うと、「少年は残酷な弓を射る」のときのエズラ・ミラーなんかも思い出す。ちょっと怖い、でも美しい、そんな感じ。

Hernan Bas ヘルナン・バス『異郷の昆虫たち』ヘルナン・バス In describing this beautiful insect, the want of adequate means to express color becomes more and more apparent, 2017 Acrylic and enamel on linen 152.4 x 121.9 cm / 5 x 4 ft

バス自身、19世紀のデカダン派の作家オスカー·ワイルドやジョリス=カルル·ユイスマンス、そしてフランスの画家グループのナビ派から影響を受けているそう。構図としては少年の肖像画に見えるけれど、背景にも緻密にさまざまなものが描き込まれていて、風景画のようにも見える。どうりで「耽美」という言葉がしっくりくるはずと頷いた。

Hernan Bas ヘルナン・バス『異郷の昆虫たち』ヘルナン・バス The case for Mullerian Mimicry, 2017 Acrylic on linen 127 x 101.6 cm / 50 x 40 in

なんと19 世紀後半のヨーロッパでは、軟弱な男性たちを「ダンディー」と呼び表していたそう。今の日本で言うところの「ダンディー」とは真逆。バスによると、当時の風刺画は「ダンディー」達を世俗から逸脱した怪物のように扱っていたのだとか。そこで彼は、自分たちとは違う、わからないものとしての少年たちを、19世紀に出版された昆虫学の古書籍『海外の昆虫 – その構造、生態と変態の報告』に登場する外来種の昆虫に見立て、今回展示されている新作を描いた。

Hernan Bas ヘルナン・バス『異郷の昆虫たち』ヘルナン・バス It comes out every 17 years, 2017 Acrylic and enamel on linen 127 x 101.6 cm / 50 x 40 in

たしかに描かれている少年たちはトンボのような羽が生えていたり、蜘蛛の糸を纏いつつ水辺に身を潜めていたりする。彼らは桜(梅?)の木に腰かけていたり、扇を手に持っていたり。そういうエキゾチックなシーンも、彼らのアンドロジナスな魅力をいっそう引き立てていて、女子たちの妄想にぴったり。きっとみなさんのハートも、美しい虫に変わった彼らに捕えられてしまうはず♡

Hernan Bas ヘルナン・バス『異郷の昆虫たち』ヘルナン・バス Hernan Bas Unlike other members of his species, camouflage is not in his favour 2017 Acrylic on linen 127.0×101.6cm (スタジオ風景)

あわせて展示されているドローイング。19世紀にゴーギャンがタヒチで編み出した、絵画・描画・印刷を組み合わせた技術「トランスファー技法」で描かれている。

Hernan Bas ヘルナン・バス『異郷の昆虫たち』ヘルナン・バス It comes out every 17 years, 2017 Transfer drawing in black ink with collage 68 x 52.5 x 2.5 cm / 26 3/4 x 20 11/16 x 1 in

 

ヘルナン・バス『異郷の昆虫たち』

会期:開催中〜3月11日
会場:ペロタン東京
住所:東京都港区六本木6-6-9 ピラミデビル1階
電話番号:03-6721-0687
開館時間:11:00〜19:00
休廊日:日、月、祝

柴原聡子

建築設計事務所や美術館勤務を経て、フリーランスの編集・企画・執筆・広報として活動。建築やアートにかかわる記事の執筆、印刷物やウェブサイトを制作するほか、展覧会やイベントの企画・広報も行う。企画した展覧会に「ファンタスマ――ケイト・ロードの標本室」、「スタジオ・ムンバイ 夏の家」など

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