14 May 2022
バレンシアガが注目するクリエイター「池内啓人」 出発点はプラモデル

モード界をリードするブランドが、いま注目するクリエイターとは?コレクションを発表する場や文化のサポート事業を通じてタッグを組む、覚えておきたい最先端の才能を紹介する。
BALENCIAGA
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池内啓人
造形作家
courtesy of Balenciaga
グッチのシグネチャーを「ハッキング」した製品を発表して話題となったバレンシアガのスプリング 22コレクション。キャンペーンでは最新ルックに身を包んだモデルたちが池内啓人制作の外骨格型スーツ(写真上)やヘッドセット(下2枚)を装着。これらの作品は青山店にもディスプレイされた。
プラモデルが出発点
既製品で「身体拡張装置」を作る
既製品で「身体拡張装置」を作る
池内啓人に一問一答。バレンシアガとの仕事やものづくりについての考え方とは?
Q. バレンシアガにはどんなイメージを持っていましたか?
A. ウィンター 18コレクションで登場した、厚みのあるソールの〈トラック〉スニーカーが印象的でした。積層構造がガンダムのプラモデルの内部フレームと装甲のようでかっこいい。無機質な内装の店舗など、機械を思わせる厳密さをもった仕事へのこだわりがすばらしいと思います。
Q. スプリング 22コレクションのキャンペーンでお気に入りのヴィジュアルはありますか?
A. 人間らしさが薄い感じがするので、黒のヘッドセットと黄色のドレスのスタイリング(写真上左)が好きです。
Q. キャンペーンに採用された、日本のロボット製造業者「スケルトニクス」とコラボレーションした外骨格型スーツ[SKELETONICS MPS-15sk: MULTI](写真1枚目)はインパクト大でした。作品のテーマを教えてください。
A. 一人の人間にできる仕事を増やすための身体拡張装置です。協業による相乗効果の面白さを実感しながら作りました。
Q. ご自身の作品がファッションとしても評価されていることについてはどのようにお考えですか?
A. さまざまな受け止められ方のひとつとして捉えています。
Q. ものづくりのポリシーを教えてください。
A. 主体を排除すること。バランスをよくすること。
Q. 最新作[#2101]について教えてください。
A. フランスの作家、ヴィリエ・ド・リラダンによるSF小説『未来のイヴ』(1886)に登場する人造人間「ハダリー」がモチーフです。ヴィジュアルはスタイリングも含めてすべて自分自身で決定したのでとても気に入っています。
Q. 今後についてはどのように考えていますか?
A. 活動を通じて文化に「水をやる」ことができればよいな、と思っています。自分でも予測がついていないのですが、どんなことができるかとても楽しみにしています。
池内啓人 いけうち・ひろと
1990年東京都生まれ。多摩美術大学情報デザイン学科の卒業制作でコンピュータとプラモデルを組み合わせたジオラマを制作する。工業製品のパーツなども使用し、国内外で高い評価を受けている。
Instagram→ @_ikeuchi
Text&Edit: Itoi Kuriyama
GINZA2022年4月号掲載