22 Feb 2017
「GINZA世代のアーティスト ロッテのライフ・スタイル」新米アクティヴィスト・あっこのベルリン・オルタナ通信 #02

ベルリンはここのところ雪なので、その白さで街が明るく、夜空もぼーっとピンキーなダークグレイで幻想的。好きな天気です。
そんな中、今回は、Lotte Meret Effinger(ロッテ・31歳)というアーティスト/グラフィックデザイナーの自宅兼スタジオにお邪魔して、ワードローブやライフスタイルを覗き見させてもらうことにしました。
去年の秋にabcというアートフェアに行った時、彼女を見かけて、そのファッションが可愛かったのでついナンパ、インスタを交換して時々メッセージしたりするようになりました。
こちらがその時のLotte。
中に着ているイエローのタートルは、胸と腕が編上げになっていてレトロ&レイヴな雰囲気。カラフルなスニーカーはRaf Simons、野暮ったいハンドステッチペイントのパンツはJohn Galliano、かっちりしたトレンチ、携帯のステッカーも可愛くて思わずストーカーしてしまった次第です♡
自宅兼スタジオはすごく便利で一番みんなが住みたいエリア、Kreuzbergのど真ん中。窓もたくさんあって明るく、6部屋!180m²!というかなりの広さ。羨ましい!住んでいるのはLotteとお父さんとボーイフレンドのFlo。真ん中の部屋はシェアスタジオとなっていて昼間は2人の友達が出入りしているということでした。
ボーイフレンドのFloとキッチンにて。明るくてちょっとごちゃごちゃしててかわいいキッチン。Maruf Satar for BLESSのトップスは友達だということでMaruf本人からのプレゼント。Marufは音楽もやっていて、サウンドクラウドはこちら。スカートはミュニックの友達にもらったZARA。そして最近見つけたというお気に入りのヴィンテージのストレッチブーツ。全部かわいい〜。
A- わーすごい!このロケーションでこの広さ!最高の環境だね〜!
L- お父さんがもともとコミューンのメンバーで、当時みんなでスクワットしていた(89年のベルリンの壁崩壊後、東から西に一気に人が流れ込み、空っぽになった東側の建物に勝手に住み始めた人が沢山いた)この辺のビル20軒くらいをそのコミューンのメンバーで買ったの。全部で300人くらいが今もそのグループに所属してこの辺りのアパートに住んでる。そのおかげで今もここの家賃は90年代のままなんだよ。(今の相場の半額くらいと予想されます)すごくラッキーだよね。だけどお父さんは毎週ミーティングに行って、いろいろ細かいことを話し合ってて、すごく面倒くさそう。
A- わかる。。。完全民主主義。。。全部話し合いで全員の同意で決めるってすごい大変だよね。ほとんどどーでもいいようなこともなかなか決まらないよねー。
L- 本当に面倒くさそう。それぞれ主張とか聞いてもらいたいことがあるから。だからわたしはお父さんに全部任せてるけど(笑)。でもこうゆうオルタナティブなやり方で、今でも街の真ん中で、広くて安いところに住むことが出来るっていうことを実際に証明していてすごいよね。リスペクト。
シェアスタジオではこのルーレットで掃除当番を決める。
トイレにはGEGEN NAZISステッカー。
洗濯物を干したらロープで引っ張って上に吊るせるようになっている。真似したいアイデア。いたるところにDIYしてあるところがベルリンぽい。
A- どうやってサヴァイヴしてるの?
L- 基本はグラント(アート支援として政府や民間の財団から出る補助金・寄付金)とかスカラシップ(奨学金)をもらって制作しつつ、グラフィックの仕事。だからいつもアップ&ダウンだけど。4月からも1年オランダに行って制作する予定なの。Floのレコードのジャケットのデザインもしたよ。
これがLotteがデザインしたDon’t DJことFloのレコードAuthentic Exoticism。SEXESというレーベルはLotteとFloと友達のMarco Buetikoferのレーベル。http://sexes.work レーベルもやっているとは、アクティブ!ちなみに携帯はカメラを重視してLG。
A- え!ちょっとまって!FloってDon’t DJなの?えええーー!こないだサンクラでフォローしたよ!あなたの音楽大好き!!わー会えて嬉しい!
F- はは!僕のこと知ってるの?嬉しい!去年日本をツアーしたんだよー。YPYって大阪のアーティストと一緒に15カ所くらいでプレイしたよ。
(YPYはGOATという大阪のバンドのメンバーで、GOATはベルリンでも密かに話題のバンド。)
と、なんか意外な展開に。。。最近サウンドクラウドで聞いていたアーティスト、Don’t DJがLotteちゃんのボーイフレンドだった。。。彼についてはこちらでチェック
https://soundcloud.com/dont-dj-1
http://dontdj.tumblr.com
嬉しい偶然で話は脱線。Floは2回目の日本だったのですが、東京ではForest Limitや落合Soup、吉祥寺Kichimuなど小さめのライブハウスでプレイして、前回よりもアンダーグラウンドのシーンが見れて東京の印象が変わった、好きになったとのこと。福岡や大阪はもっと人間くさくてラフなところが面白いとも。
A- アートはどんなテーマで制作してるの?
L- メインはビデオ作品なんだけど、出来る限りハイクオリティーで撮影していて、今は特に身体にフォーカスしてる。ボディパーツを超ハイクオリティーで撮影することで実際の物とは違うイメージが見えてくる、違う意味や価値が出てくるっていうか。もともとの先入観を一回リセットして新しいイメージをつけるっていうのかな?トランスフォームするのがおもしろくて。
私たちは日々の生活で目にする様々なヴィジュアルの形に、魅了されたり、怪しいと思ったり、強い欲求を感じたり、混乱したり、危険を感じたりする。政治や社会やフェミニズムについても勉強したから、そういった観点からも物のヴィジュアルを分析しようとしてる。それに父親がああゆう人だったから、ポリティカルな問題が昔から身近にあって、自由だと感じた事がなかった。だから人はどうやって分析したり、定義して、どうやったら解放されて自由になるのかとか、、そうゆうことも考えてる。
シンボリックオーダー(象徴秩序)の歴史的パラダイムシフト(おそらくその時代時代で常識とされていたことがひっくり返されて変わっていくこと)、政治的ムーヴメントの移り変わり、アイデンティティ・クライシスなどは常に興味の対象でテーマにあると思う。オランダでは昆虫を撮影する予定だよ。
と、作品にはかなり深いテーマが流れているよう。Lotteの最近のビデオ作品やレーベル活動などはこちらで見られます。インスタグラムも。
http://lottemeret.com
https://www.instagram.com/lottemeret/
Floと一緒にデザインした、現在制作中のレコードジャケットを見せてくれる。一枚一枚手作り。
ベルリンはアーティストがすごく多い街だけど、こうやってグラントに応募したり、賞金をもらって暮らしている人が結構いる。日本だったら「早くちゃんと就職しなさい!」って怒られそうだけど、いい歳こいても週2、3日バイトして他の日はなんか作ったりパーティしたり1日中引きこもってるーーーなんていうのが普通だったりします。
特に若い人達はもちろんなんですが、ベルリンで知り合った友達で、もう60歳のいわゆる”有名”ではない女性アーティストがいて、年末には「バイトしないとヤバいかなー」なんて言ってたけど、年明けに会ったらまたアート補助金みたいなのをゲットしたらしく、この春3ヶ月間ブラジルで制作するって言ってました。しかもオスカー・ニーマイヤーの高層マンションに滞在(友達の家)。いきなりゴージャス!就職どころかもうすぐ定年の年齢なのにかなりいきあたりばったり。。。
A- Lotteはベルリン以外の街に住んだことある?ベルリン好き?
L- 2000年代に2年ニューヨークに住んで、そのあとドイツのカールスルーエ(Karlsruhe)っていう田舎の小さい町でグラフィックとアートの学校に行った。ニューヨークはビジネスとかコンペティションが私にはトゥーマッチだったし、カールスルーエは反対に遊びもビジネスも競争もなくて他のところで何が起きてるかも関係ないような場所で、集中して勉強する感じだった。その両極端を経験して、ホームタウンのベルリンに戻ってきた時には、ニューヨークに行く前よりもいろんなことを距離をとって見れるようになってたし、ベルリン自体も変わってきてた。それでバランス的にもベルリンがよく思えるようになったのかも。あとはこのコミュニティにいるのも好きだし。アムスにも1年くらい住んでたことがある。アムステルダムはアートのシーンが面白いから好き。
A- 洋服はいつもどこで買うの?
L- ほとんど古着とブランドのフェイク(笑)。フェイク大好き!フェイクには本物とはまた別の価値があると思う。
こちらはフェイクVetementsのロンTと、コリアンブランドをパクって自分でピアスをくっつけたキャップ。初めて自主的に音楽を聴き始めた頃に買ったFoxy BrownのCDを見せてくれた。彼女のリップカラーを真似したり、他にはPatty SmithとSpice Girlsの間のようなものが好きだった、というか今でも好きだとか。
こちらはヴィンテージのプリーツ生地のブラックドレスに自分でカット&ソーしたアランニット。めっちゃかわいいこのアイデア!
70年代?ヴィンテージのスキーセーター。プロテクターのように立体的になった肘のデザイン、クラッシクなトリコロール、サイズ感も◎。
Floがカットしたヘア。
L- ファッションはまた別のコミュニケーションの形だと思う。そこが面白くて好きなの。
ベルリンは基本的にはあまり流行り廃りのない、ファッション的には隔離されたような街で、例えば、パンクスは一生パンクス、ゴスの人は墓までゴス、という感じなので、スタイルをコロコロ変えると軽蔑されそうな雰囲気があります。流行りよりもフェティッシュといいますか。赤が好きな人は全身赤を着てたりとか、ピアスが好きな人は身体中ピアスだらけ!もう穴開けるとこない!みたいな感じ。
そんな中でLotteさま、Ginza読者にもおすすめできるやっぱりオシャレな方でした。流行りをサクッと押さえつつ俯瞰もしてて、さらに個性的なデザイナー物やベルリンらしいDIYもプラス💕かわいかったです!キメすぎないリラックスした部屋の雰囲気も是非真似したいですね。
Danke– Lotte and Flo!!
あっこ akko
東京からベルリンに移住して6年目の自称、新米アクティヴィスト。
ROKU Berlinとしてオーガニック・ヴェジタリアン〜ヴィーガン料理の研究とケータリング、JA HAI YESとしてリサイクル・ウェア・ブランドを生業に、なんとかやってます(笑)。
www.instagram.com/roku_berlin
roku-berlin.tumblr.com
www.instagram.com/ja_hai_yes