19 Apr 2017
「ベルリンの街歩き STREET, GRAFFITI, ART」新米アクティヴィスト・あっこのベルリン・オルタナ通信 ♯03

ベルリンの街歩き
STREET, GRAFFITI, ART
5年前にベルリンに初めて来た時、その街の暗さ、汚さ、そっけなさ、道のだだっ広さ、人の少なさ、すべてに驚きました。
それ以前に訪れたパリや北欧、ローマなどほかのヨーロッパの都市のイメージとの落差に、間違った所に来た気すら。。。
ノイケルンという今若い人を中心に人気の地域などは南インドに印象が近かった!というくらいベルリンの街の見た目は荒れた、埃っぽい、粗野なイメージです。
そんなゴミ箱のような街で目につくものといえばグラフィティです。
ベルリンにはまだまだ空き地や廃墟があって描く場所が沢山あるので、その空き地の広さに比例するようにそのシーンは大きいと予想されます。
壁にグラフィティを採用しているお店もよく見かけるし、スプレー缶とスニーカーの専門店もあってすごい人気、子供にグラフィティを教えるワークショップがあったり、といった感じでけっこう普通に浸透しています。
墓地の壁もグラフィティだらけでスリラーの世界。。。
外壁を無傷に保つことは不可能とあきらめているオーナーも多いようで、もはや気にしないといった風情。
映画「ベルリン・天使の詩」にも映っている元スクワットのビルのかなり古いグラフィティ。ビル全面に描かれている。
アレキサンダープラッツ(ベルリンのど真ん中、テレビ塔のあるところ)の駅の目の前にも、どでかい廃墟が。
大きくSTOP WARSと描かれたままずーっと放置されている。
放置されていた廃墟が投資家に買われ、突然家賃の高いマンションになって周囲の地価全体が値上がりするジェントリフィケーションはベルリンでも大きな問題となっていますが、廃墟をリノベーションする際に市の厳しいチェックがあるらしく、オーナーが再建するお金がなくてただ放置されているものも多いとの事。
ぼろぼろの建物だらけのこの街のビジュアルは最初の頃はかなりショッキングでした。
そんなグラフィティ天国ベルリンで、最近のスターが1UP CREWというグラフィティクルー。
去年、2016年には Comme de Garçon JUNYA WATANABEともコラボしているヒップな存在。
彼らは基本的にイリーガルなヴァンダリズム(破壊、汚染行為)とされているグラフィティの業界でビジネスとしても成功しているニュージェネレーション。
ビジネスにすると元々のグラフィティのアイデアからはずれてくるのでは?と賛否両論に分かれる評価を聞きますが、街で見かけるステッカーやタグ、スローアップ(簡単なグラフィティ;2色ほどのアウトラインでペイントされた作品)の数はダントツ。
DVDも発売していて、youtubeでもそのスリリングな現場の様子をチェックできます。例えばこんな感じ。
日本ではHave a good timeのショップがオリジナル商品をBEAMSで展開したり、海外でのポップアップショップイベントや、GINZA読者にも人気のTOGAと2013年、2015年とコラボしているので近い存在と言えるでしょうか?
http://have-a-goodtime.com/
いたるところで見かけるグラフィティの中で、1UPとも仲のいいクルーBerlin KIDZ、ÜFが私もチェックしているおもしろいクルー。
彼らの作品はそのカリグラフィーの独特なデザインと、街の中でも人通りの多い歩いていて目につく角度、電車から見える場所、さらに足場の全く見当たらないキケンな所に縦書きにボムってあるので目を奪われます。
これは16階建てのビルのてっぺんで、快晴の中、するするとロープを下りていくのが見えるような作品を見たときは気持ちよかったです💘
しかしこの作品はもう消されてしまった。。。残念。
今回この記事を書くにあたってネットで調べてみたところ、やっぱりロープや継ぎ足した長いはしごを使っていて、さらに電車の上に飛び乗りparkur(パクワー;フランス発祥のストリートスポーツ。ストリートで忍者のようにジャンプしたり飛び降りたり回転したりする)も軽々披露。いつか電車で出くわしてみたい!とワクワクさせられます。
ちなみにÜFは「Überflieger」、飛び越える人の意味で、スラングで飛び級したり突然チャートで1位をとったりする人の事らしいのですが、Über-Freak(超フリーク)、Über-Fresh(超フレッシュ) のように、言葉遊びしているいろいろなバージョンを見かけます。
おもしろいのでこちらのyoutubeで是非チェックを。
彼ら自身がかなりチャレンジングな存在と言えますが、それにしてもまだまだこんなことができる隙間があるところがベルリンの魅力の一つと言えます。
そして中には女性のライターもいるようです。こちらは女性ライターの作品を集めた写真集(2015年/現在ソールドアウト)。
高くて危険なところや、電車にも堂々と作品をアップする男勝りなところもベルリンらしい印象。中には80年代から続けている50代の女性ライターもいるとのこと。
フランスの人気ライターSAEIOとも交流が深く、コントロールレスな書き方、イノセントな書き方を追求した作品が注目されているという、CLINT176は、パリのalfa kのネイルステッカーとも最近コラボしています。
ネイルにグラフィティを取り入れるのもかわいいですね。インスタでチェック。
https://www.instagram.com/alfakparis/
グラフィティ以外のストリートアートもいたるところに見つかります。
こぼれたペンキも何日か後には目玉焼きになっている。。。
日常の中で突然こんなビジュアルに遭遇して、ちょっとラッキーな気分になったり。。。
お金や成功と関係なく、ただやりたいからやったっていう感じでこうゆうのも見つけるとなんとなくほっとします。
この作品の躍動感はインパクト大!駅の出口の前、人通りのめちゃくちゃ多い場所。いったい誰がいつの間に?
書きなぐったようなダイナミックな印象がグラフィティに通じるような、ハッとする違和感と存在感。
Victor Ashの宇宙飛行士は、夜になると隣のビルの旗がライトで影を落とすその旗をつかんでいるように見える。
こんな風に単純なアイデアだけれど、少しましな気分になれるような仕掛けが街にごろごろ転がっている。
と、最初のころは苦手だったこのグレイで無機質でゴミ箱の様な街並みですが、慣れてくるとそれを彩るグラフィティや、わけわかんないストリートアートも楽しく見えて、愉快な気持ちになってきます。
もちろん世界的に有名なBanksyやJR、OBEYの作品も見つかります。
最後に一つまじめなストリートアートを。
1993年にGunter Demnigという彫刻家が始めた「Stolpersteine(つまずきの石)」と呼ばれるプロジェクト。
ベルリンを訪れたことがある人なら知っているかもしれません。
日常の中でも「過去の過ちを忘れないように」とナチスの犠牲になった人が暮らしていた家の前にその人の名前が掘られた真鍮のプレートを埋め込んでいく、というアートプロジェクトです。
ドイツだけでなく近隣諸国も含め、現在までに5万個以上のプレートが設置されたそうですが、ベルリンを歩いているとけっこういろいろな場所で発見できます。
1プレート120ユーロ(15000円くらい)で誰もがスポンサーとして参加、新しいプレートを設置できるということなので興味のある方はこちらでどうぞ。
http://www.stolpersteine.eu/en/home/
ヨーロッパでのユダヤ人犠牲者は400~600万人とも言われているのでこのプロジェクトはまだまだ続くわけですが、プレートが増殖するほどに犠牲者の多さを体感、直で頭や心に響くというこの作品。今でさえ沢山見かけるのに、本当に街中プレートだらけになってしまいそう!想像しただけで戦争や独裁、思い込みの恐ろしさを思い知ります。こちらもまたベルリンらしい作品だと思います。
DANKE — Puschi, Marc, Moritz 😉
あっこ akko
東京からベルリンに移住して6年目の自称、新米アクティヴィスト。
ROKU Berlinとしてオーガニック・ヴェジタリアン~ヴィーガン料理、JA HAI YESとしてリサイクル・ウェア・ブランドを生業になんとかやってます(笑)。
https://www.instagram.com/roku_berlin
https://www.instagram.com/ja_hai_yes