黒の安心感にあぐらをかいて考えなしに身につけていると、単なる“無難な人”に…。そこで「モードなブラック」をものにするポイントを、3人のプロに教えてもらいました。
ちょっと残念!な黒の着こなし3つ。「おしゃれな黒」に見せるためのヒント
あと少し…!
80点の惜しい黒スタイリング集
悪くはないが何かが足りない。「あと20点」を埋めるのに必要なアイデアって?
黒のチェスターコートが
やけにコンサバムード
× NG POINT
シルエットも丈感も古い
太ももあたりまでの微妙な丈でジャストフィットの黒いコートは、生真面目に転びがち。「超ロング丈だったり、ボリュームがあったり…。今シーズンのアウターは迫力のあるシルエットがカギ。ベーシックな黒ならなおさら、鮮度の高いシルエットで遊ぶ余裕が欲しいところです」(吉田さん)
旬のクラシックスタイル
なのに“おばさん感”が…
× NG POINT
足元がおざなり過ぎる
今季は、セリーヌに代表されるようなクラシックスタイルがIN。そこで、黒のジャケットやプリーツスカート、スカーフなどでイメージを寄せてみたものの、足元がプレーンなパンプスだと、急に手抜き感が。「足元をロングブーツにするだけで、たちまち印象が変わるはず!」(吉田さん)
今どきエレガントを
目指すにはメリハリ不足
× NG POINT
ボリューム感が足りない
黒はイージーではないセンスと計算が必要な色
まずは、ベースとなる「黒」の特性についてお勉強!
「光の象徴である白と対をなす黒は、闇の象徴。その昔、昼行性の人間にとって夜の闇は、まさに死と隣り合わせの世界でした。それが恐怖と結びつき、邪悪、威圧感、絶望などネガティブなイメージに。一方で、敵に追われて逃げ込む物陰や洞窟の闇=守ってくれる黒、というイメージもあり〝鎧〟のような役割を担う色でもあります。よって、心が弱っているけれど動かないといけない、という場面でまとうのも効果的。ただし、相手に威圧感を与える色ではあるので、それを避けたければ、透ける生地などを選んで。黒のスタイリッシュさは残しつつ、威圧感を軽減することができます」(山脇さん)
また「無難な黒」にならないための、注意点とは?
「黒が主役の着こなしは、フラットに仕上げてしまうと、途端に地味でつまらない印象に。素材やシルエットで〝強弱をつける〟ことが、何より大事です。特に今シーズンは、ウエストを絞って女性らしさを強調したスタイルや、オーバーシルエットのコート、肩パッド入りのジャケットなど、大胆なシルエットがキーワード。着慣れた黒なら挑戦しやすいですし、攻めのチョイス&マインドで着るとかっこよく仕上がります」(吉田さん)
強弱をつけるにあたって、生地ごとの風合いや発色を見極めるのも重要です。
「動物性タンパク質は染料との結びつきがとてもいいので、ウールやシルクは美しく奥行きのある黒を表現することができます。それに比べて、植物が原料の綿や麻は染料との結びつきが浅めで、軽やかな黒に。またシルクは光沢感があるためリッチで女らしく、綿や麻は毛羽立ちのある風合いでタフ&ラフな雰囲気。この様にひと口に黒と言っても、素材によって色味も印象もさまざま。苦手だと敬遠していた黒アイテムでも、素材を変えたらイメージが変わるので、いろいろ試してみるのがおすすめです」(菅野さん)
話を訊いた方々
山脇惠子さん
(心理カウンセラー、芸術療法士)
心理療法の中で色彩と心の研究を深め、長く医療少年院において芸術療法を実施。色彩と生活を結びつける活動を幅広く行う。
菅野めぐみさん
(文化服装学院専任講師)
文化服装学院にてアパレルデザインを専攻。卒業後、助手を経て専任講師となり、アパレル素材・染色に関する授業を受け持つ。
吉田 恵さん
(スタイリスト)
モード誌をはじめ、ショーやルックブックなどで活躍中。最新モードの知識とリサーチ力は、編集部からも一目置かれている。
Illustration: Kahoko Sodeyama Text&Edit: Sayoko Imamura