青のカルチャー論〜はみだしっ子の学園ドラマ

青のカルチャー論〜はみだしっ子の学園ドラマ

青は春。空や海色の静けさや、孤独や憂鬱、ときには若さを意味する青。学園ドラマの中に見る青とは──


アメリカの学園ドラマといえば、『ビバリーヒルズ高校(青春)白書』(90〜00)から始まり、『The O.C.』(03〜07)、『ゴシップガール』(07〜12)などがメジャーだが、これらは体育会系かスクールカースト上位の美男美女の物語だった。じゃあ、はみだしっ子たちの物語は一体どこに?

 

ヒロインは、ごく普通の女の子。

ビバリーヒルズに住む高校生とは対極にあるペンシルベニアのピッツバーグ郊外に住むヒロイン・アンジェラが主人公のドラマ『アンジェラ 15歳の日々』(94〜95)との出会いは衝撃的だったことを覚えている。彼女は自分と同じようなことを考えている、ごく普通の女の子だったからだ。演じたのは、『ロミオ+ジュリエット』(96)に出演する以前のクレア・デインズ。

『アンジェラ 15歳の日々』 MY SO CALLED LIFE 『アンジェラ 15歳の日々』 MY SO CALLED LIFE『アンジェラ 15歳の日々』:飲酒、ドラッグ、セックス、同性愛、いじめ、親の不倫など10代の若者が抱える日常の悩みを赤裸々に描いたことで話題に。15歳だったクレア・デインズがヒロインを演じ、ゴールデングローブ賞主演女優賞を受賞。当時のリアルなグランジファッションが楽しめる。Photo: ABC via Getty Images

原題は、「私の〝いわゆる〟人生」という意味の『My So-Called Life』。真面目な優等生のアンジェラは、ほかの学生よりも少し大人びた目線を持っていて、親や学校や社会に対しての怒りや不満から髪を赤く染め、過去の自分に別れを告げる。彼女が抱くような感情には覚えがあったし、そこには等身大でリアルなハイスクール・ライフがあった。クレアは本作で大ブレイクし、今や実力派人気俳優となったジャレッド・レトも、頭の悪いバンドマンのジョーダン役として出ていた。ほとんどの視聴者はきっとジョーダンにハマり、彼の最低ダメ男ぶりを目の当たりにして、アンジェラとともに恋すべき相手は誰かを学んだはずだ。放送から20年以上が経つ今でも、ベスト・ティーン・ドラマとして名前が挙がる本作なのに、放映当時は視聴率を稼げず、シーズン1の放送をもって幕を閉じた。

『フリークス学園』 Freaks and Geeks『フリークス学園』 Freaks and Geeks『フリークス学園』:姉リンジーと弟サムを演じたのは、『ER緊急救命室』のリンダ・カーデリーニ、『BONES』のジョン・フランシス・デイリー。アパトー作品におなじみの長髪のコメディアン、デイヴ・アレン扮する進路指導のロッソ先生がリンジーにグレイトフル・デッドのレコードを渡すシーンは、エポック・メイキング。Photo: NBC via Getty Images

 

学園ドラマを変えたオタクと落ちこぼれ。

私が惚れ込んだ学園モノは、なぜか1クールで終わってしまうというジンクスがある。『フリークス学園』(99〜00)もそうだった。今やコメディ界を牽引するプロデューサー兼監督ジャド・アパトーと『ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン』(11)の監督ポール・フェイグが手がけた、カルト的人気が絶えることのない学園コメディだ。原題は『Freaks and Geeks』、落ちこぼれ不良とオタクのこと。スポットライトが当てられるのは、学園ドラマでは描かれなかったスクールカーストのはみ出し者の彼らである。主人公は、80年代のミシガンで、祖母が亡くなったことから不良とつるみ始める姉リンジーと、オタクグループの弟サムとその仲間たち。「他人がどう思おうと我が道を行く!」とありのままに生きようと奮闘する登場人物と、それを見守る大人たちのやさしくておかしい日常を描いた、最高に愛おしいドラマだ。ちなみに、俳優ジェームス・フランコやコメディ俳優のセス・ローゲンは、本作を機にブレイク。ベン・スティラーやジェイソン・シュワルツマン、シャイア・ラブーフ少年など錚々たる顔ぶれがチョイ役で出演しているのも楽しい。去る4月、テレビのルールを覆した貴重なドラマとして、ドキュメンタリー映画『Freaks and Geeks: The Documentary』がトライベッカ映画祭で初上映されたばかり。これ、ぜひ日本でもどうにか観せてほしい!配信でもいいから!

そして、『フリークス学園』の正統派の系譜として今年配信されたのが、Netflixオリジナルドラマ『サイテー!ハイスクール』である。舞台となるのは96年のオレゴン州。原題通り「Everything Sucks!(何もかもクソみたい)」と思ってはいても根は明るいし、まだまだ幼いオタク高校生たちの青春群像劇だ。届いたばかりのオアシスの新譜『モーニング・グローリー』を、「注文を取り消すのを忘れてた」とかっこつけて初恋の相手にあげちゃったり、演劇部と衝突してなぜか一緒に映画づくりをすることになったりと、派手なパーティ感はまったくない。だからこそ、純粋でまっすぐな思いが一瞬でも通じ合えたときのキラキラがものすごく眩しく映る。この作品、黒人少年ルークと、自分がレズビアンかもしれないと悩むケイトの2人がメインの主人公で、それぞれシングル・ペアレントに育てられていたりと多様性にも魅力にも富んだキャスティングとストーリーなのである。にもかかわらず、まさかのシーズン1で製作打ち切りの知らせが……。がーん。あれだけ気になる終わり方しといて!と泣いたみなさん、シーズン続投を求める声がSNS上で駆け巡っているのをご存知だろうか。プロデューサーのマイケル・モーハンやキャストたちも、シリーズを更新する呼びかけをSNSでしているので、本作を観て、彼らの今後を見届けたい!という人は、「#reneweverythingsucks」とタグ付けして、ぜひ感想とともに投稿を!

『サイテー! ハイスクール』EVERYTHING SUCKS!『サイテー! ハイスクール』EVERYTHING SUCKS!『サイテー!ハイスクール』:新入生のルークと一学年上のケイトが所属する放送部と演劇部の学生たちが、青春を駆け抜ける群像ドラマ。VHSに音楽やファッションなど90年代カルチャーが随所にちりばめられているので、90年代経験者が観ても懐かしい日々が蘇ってくるはず。Netflixオリジナルシリーズ『サイテー!ハイスクール』独占配信中。

Photo: Masumi Ishida(top) Text & Edit: Tomoko Ogawa

GINZA2018年7月号掲載

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