21世紀のライオット・ガール!『プッシー・ライオット』とはなんぞや?

21世紀のライオット・ガール!『プッシー・ライオット』とはなんぞや?

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2018年10月、フェミニスト・パンク集団を代表するプッシー・ライオットの創設メンバーによるエッセイ集『プッシー・ライオットの革命』が刊行された。その翻訳に携わったaggiiiiiiiさんに話を伺った。


今年(2018年)の夏、ロシアで開催されたサッカーのワールドカップに注目していた人であれば、フランスとクロアチアが対戦した決勝戦の最中に、警官のコスチュームを着た男女が場内に乱入して大きな物議を醸した一件をご存じかもしれません。当時わたしは、秋に出版が決定しているある翻訳書の仕事で忙しく、日本が出場する試合だけたまーに横目で眺めていた程度だったのですが、その事件を知った時はどれほど驚いたか。なぜなら、それがけして愉快犯の仕業などではなく、モスクワを拠点に活動するフェミニスト・パンク・グループ「プッシー・ライオット」による行為だったから。その時翻訳していた本というのが、まさにその集団を立ち上げたメンバーの手記だったのです。

『プッシー・ライオットの革命』著者のマリヤ・アリョーヒナ(通称:マーシャ)は、1988年生まれ。当時首相であったプーチンが、無理やりとも言える手段を使ってふたたび大統領となり独裁権力を握り続けようとしていること、そして国民に大きな影響を持つ教会がプーチンと癒着していること。これらに抗議すべく、23歳の秋(2011年)に、ナジェージダ・トロコンニコワ(ナージャ)らとともにプッシー・ライオットを結成しました。多くの良識人が眉をひそめてしまいそうなそのグループ名は、90年代初頭に北米に現れたライオット・ガールの影響を受けているのだとか。

カラフルなワンピースとタイツを身につけ、バラクラバ(目出し帽)をかぶったアイコニックな姿で、反プーチンを唱える過激なゲリラ・パフォーマンスを主な活動としていた彼女たち。世界的な注目を集めるきっかけとなったのは、2012年2月21日に、モスクワの大聖堂で「聖母マリヤ様 プーチンを追い払って!」と叫んだアクション(彼女たちは自分たちの「活動」をこう呼んでいる)でした。敬虔な信者たちからヒステリックな反応が起こったのはもちろん、このことが原因で逮捕され、マーシャとナージャはこういった行為の代償としては異例とも言える2年の実刑判決を求刑されました。本書では逮捕直前の逃亡劇、不条理なコントのような裁判の様子、世界屈指の劣悪な環境と言われるロシアの刑務所での囚人生活について、ジャーナリズムと詩を学んだマーシャが独特の語り口でその実情を明かします。そして、刑務所内での受刑者たちのあまりにひどい生活環境、女性差別、管理側の不正を目にした彼女は、次第に人権擁護活動に目覚めてゆくのです。

どんな環境であろうと、嫌なことは嫌、おかしいことはおかしい、と言い続けるマーシャには、お腹の底からエンパワメントされるよう。ふつうに暮らしていたって、言いたくても言えずに飲み込んでしまっていることって、たくさんあるから。そして今、わたしたちが当たり前に享受しているさまざまな権利も、かつては誰かが死にもの狂いでがんばって手にしてくれたものなのだろうと、あらためて気がつかされます。マーシャがTシャツにステンシルした言葉は「一歩でも引き下がったなら、敗北である」。こんな風に、しゃんと背中を伸ばして、キッと前を見つめながら、生きていけたら。


アギー
著: マリヤ・アリョーヒナ 翻訳: aggiiiiii
2,000円(税抜)
サッカー・ワールドカップ2018決勝戦に乱入し、話題沸騰中のフェミニスト・パンク集団、プッシー・ライオット。  なぜ彼女たちは彗星のごとく現れたのか?グループ創設者のひとりマリヤ・アリョーヒナが自ら語る、真の目的と活動のすべて。

aggiiiiii

インディペンデント・カルチャージン『KAZAK』編集・発行人。海外のガールズカルチャー、映画、ファッションなどに精通し、『GINZA』、  『ELLE JAPON』、 『VOGUE GIRL』 等にコラムやイラストを寄稿。本書が初の訳書となる。 11/29(木)には下北沢B&B、12/11(火)には五反田ゲンロンカフェにて本書に関連するトークイベントが予定されている。

Photo: Kaori Ouchi Text: aggiiiiiii 

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