『カストロの尻』
金井美恵子
新潮社 ¥2,000
《小説家の幸福》を追究した本作は、読書から呼び覚まされた記憶を綴った2つのエッセイと、表題作を含む10の短編を収録。岡上淑子のフォト・コラージュ作品にインスパイアされた連作の他、少女から大人の女になる直前の揺らぎに、さまざまな不安や背伸びが入り交じった「昇天」など。《いつでも「執筆中の著者兼読書中の読者」として生きたい》という《甘美な享楽》に触れられることは、読者にとっての幸福でもある。金井美恵子作家デビュー50周年記念作品。
『ホサナ』
町田康
講談社 ¥2,200
愛犬家の集うバーベキューパーティーに出かけた《私》と《私の犬》は、栄光の光の柱を目撃する。それをきっかけに、犬と会話ができる能力を得、犬たちによる芝居を脚本・演出。宴会用の肉になれと恐喝されるなど、不条理な世界へと巻き込まれていき……。《私はこんなことになっているのにもかかわらず、なにもかもを美しく感じた》主人公がたどり着く場所とは。ヘブライ語で“救い給え”を意味する『ホサナ』をタイトルに掲げた本作は、約700ページにも及ぶ傑作大長編小説。
『おんなのこはもりのなか』
藤田貴大
マガジンハウス ¥1,300
《これを読んでいるおんなのこは、どういう表情でぼくの文章を読んでくれているのだろうと、想像してはニヤニヤしています》出演女優のブラジャーは自分で試着して選びたい、女子の口内炎に興奮する、彼女の鼻水を吸いたい……。男子からそんな告白をされたら、どうする!? 友人、彼女、名前も知らない“あの子”、母親にまで向けられる眼差しは、変態じみていつつも、永遠に手の届かない対象への切なさも含む。演劇作家・藤田貴大の初エッセイ集は、女子への飽くなき探究心を綴った1冊。